アンチエイジングや健康のため、テニスをしたり、筋トレをしたり、ランニングをしたりする方が増えています。平成31年1月に発表された経済産業省の調査によると、フィットネスクラブ会員数は、2,592…

アンチエイジングや健康のため、テニスをしたり、筋トレをしたり、ランニングをしたりする方が増えています。平成31年1月に発表された経済産業省の調査によると、フィットネスクラブ会員数は、2,592,921人で22ヶ月連続の増加にあるといいます。

もし、この中に、身体を動かしているから何でも好きなものを食べて大丈夫と、運動後は必ず、ケーキやアイスクリームでご褒美をいただく人々。あるいは、高カロリーなトンカツが食べられるチャンス!と、ここぞとばかりに揚げ物をほおばる人々がいたら、知っておいていただきたいことがあります。

実はこの「ご褒美」たち。運動で相殺したつもりが、身体にとっては超マイナス行為。疲労した筋肉はますます傷つき、アンチエイジングどころか、老化を加速させる行為なのです。

■運動による疲労の原因はエネルギーの枯渇と炎症

疲労回復に必要な栄養素とは

運動後の身体は、エネルギーが不足し、筋肉や腱が傷つき、炎症を起こしている状態。活性酸素も発生しています。これらが疲労感の原因となります。ちなみに筋肉は、トレーニングによって傷をつけ、回復させ、また傷をつけることで大きくなります。

運動による疲労を素早く回復させ、筋肉を育てるには、失われたエネルギーを補給し、傷ついた筋肉を回復させるための栄養素を、すみやかにとり入れる必要があります。ここで大切な栄養素は、糖質とたんぱく質です。運動後20分以内に、糖質とたんぱく質を3:1の割合で摂ると、回復がぐっと進むといわれています。

■翌日に疲れを引きずりたくないならスイーツと揚げ物はNG

さらに炎症を抑えるために必要な成分、抗酸化物質とオメガ3(n-3系脂肪酸)を積極的にとります。ケーキやアイスクリームにはこれらの成分が含まれていないうえ、白い砂糖は、炎症にあぶらを注ぐようなもの。トンカツに含まれる酸化した油も同様です。

運動直後は、糖質とたんぱく質が同時にとれるプロテインやゼリー飲料などで回復の土台をつくっておき、その後の食事で抗酸化物質やオメガ3をたっぷりとれるようにしましょう。

・抗酸化物質が豊富に含まれる食材

パプリカ、トマト、にんじん、ブロッコリーなど色の濃い野菜、鮭、ごま、ベリー類 など

・オメガ3が豊富に含まれる食材

青魚、くるみ、えごま油、亜麻仁油 など

■運動後の打ち上げにご用心

アルコールは疲労、シメのラーメンは老化を加速させる

たまに体を動かすだけの人は特に、運動の爽快感からなにかと打ち上がりたい気分になります。というわけで、テニスで汗を流した後は居酒屋へ直行。ビールで乾杯からの、から揚げ、フライドポテト、シメのラーメンまでのフルコースでご褒美を堪能します。このご褒美により、ストレスは大いに発散されますが、翌日の目覚めは最悪です。

まず、ビール。ビールをおいしく飲みたいからと、あまり水分をとらず、乾杯まで喉がカラッカラの状態を我慢する人がいますが、これは血液ドロドロの元です。アルコールは水分補給になりません。アルコールには利尿作用があるので、運動で水分を失っている身体はますます脱水します。さらに、アルコールを分解するために肝臓も負担がかかり、翌日の疲労感は増します。特に真夏のテニスの後はビールが飲みたくなる人が多いため、注意が必要です。

■シメのラーメンが恐ろしい本当のワケとは

居酒屋で十分に食べた後のラーメン。これは明らかに糖質過多です。もし深夜に食べたとしたら、寝るまでに糖質をエネルギーとして消費できず、肥満の原因に。「太ったらまた運動すればいいじゃない!」などとあなどることなかれ。シメのラーメンの本当の恐ろしさは、「糖化」にあります。

糖化とは、摂り過ぎて行き場を失った糖が、体内のたんぱく質と結びつく現象のこと。糖化によって、体内ではAGEという物質が生成されます。このAGEは「老化物質」とも呼ばれており、身体のあちこちにダメージを与え、老化や様々な病気の原因となることがわかっています。

一度つくられたAGEを減らすことは難しく、体内にどんどん蓄積されていきます。特に、AGEが肌に与えるダメージは深刻で、シワやたるみとなって現れ、糖化が進んでいる人ほど老けて見えます。つまり、シメのラーメンを食べれば食べるほど、老けていくといってもいいでしょう。

運動後の打ち上げは、居酒屋へ行く前に十分に水分補給をし、お酒はほどほどに。そして、身体の回復材料となるおつまみを選ぶようにしましょう。

・運動後に食べたいおすすめ居酒屋メニュー

野菜スティック、えだまめ、冷ややっこ、だし巻き卵、胸肉の焼き鳥、アジのたたき、お茶漬け など

アンチエイジングや健康のためにとトレーニングをしたつもりが、その後の食べ方で、身体にとってマイナス行為に変わることをお解りいただけたでしょうか。トレーニングは、その後の食事までをセットと考え、身体が本当に欲しがっているものを食べ、本来の目的やがんばりを無駄にしないようにしたいものです。アスリートフードマイスター 菊田恵梨

※写真はアンチエイジングと食材のイメージ(Photo by Fred Lee/Getty Images)/(photo by www.photo-ac.com)