3月某日に兵庫県の神戸市にあるアシックススポーツ工学研究所を訪れ、シューズの研究開発に協力するために足形を計測したり、実際にシューズを履いて動きを計測したりした綿貫陽介(日本/日清食品)。その…

3月某日に兵庫県の神戸市にあるアシックススポーツ工学研究所を訪れ、シューズの研究開発に協力するために足形を計測したり、実際にシューズを履いて動きを計測したりした綿貫陽介(日本/日清食品)。その綿貫がインタビューで、自身のシューズへのこだわり、これからの目標などについて語った。

◆シューズでこだわるのは柔らかさ・耐久性・安定感

Q.今年からアシックスとのシューズ契約に変わりましたが、履いてみてどうですか?

綿貫「耐久性もありながら、柔らかさや走りやすさがあって、プレーをすごく助けてくれることが多いので良かったなという思いが強いです」

Q.アシックスの最も特徴のある部分はどこだと思いますか?

綿貫「僕が履いているモデルは耐久性が強いものですが、軽さや柔らかさがあります。他のメーカーとかだと、重いけど耐久性があるから履こう、という方も多いと思うのですが、そういうのがないですね。走りやすくて、履きやすくて、耐久性もあるというのが一番ありがたいことかなと思います」

Q.デザインについては?

綿貫「かっこいいですね。色も良いですし。シンプルなんですけど、色的にも履きやすいし、コートでも強そうに見えるんじゃないかと思います」

Q.シューズ選びで最も大切にしている部分は?

綿貫「僕自身はずっと足の負担に悩まされていました。足への負担が無く、柔らかさがあるのが大前提ですね。また、海外を回るときに大きな荷物の中でシューズがいっぱいになってしまうと大変なので、耐久性も大事ですね」

「それと、安定感というのも一番大事ですね。というのも、僕は他の選手に比べて試合中にスライドすることが多くて、以前は足首にサポーターをつけていたんですね。それが新しいシューズになってからサポーターがなくても安定感があったので、それが自分の中で決め手になったかなとも思います」

Q.足や動きの計測をした今日の感想は?

綿貫「なかなか無い経験でしたね。市販のシューズでプレーができるというのもありがたいんですが、そのなかでちょっとでもインソールだったりとかを変えて、より良いものにしていけるのは僕にとってありがたいことです。今後もアシックスさんと色んなテニスシューズを作っていけたらと思います」

Q.周りが大人の人ばかりだったのに、しっかりと自分の意見を伝えていましたね。

綿貫「僕は全く専門のことが分からなくて。毎日研究している人たちにここをこうしてって言うのは失礼だとも思うんですが、それよりも僕たち選手たちがプレーの中でより良い動きができるようにしたいなっていう想いがありました」

◆選手としての現在地と今後の目標。東京オリンピックを見据えて

Q.世界ランキング171位(取材当時)という現在の状況についてどう思いますか?

綿貫「満足ではないという気持ちは強いですね。最低ラインかなとは思っていて。でもそこで何を思っていてもしょうがないので、今自分ができることをコツコツと自分のペースでやっていって。焦りすぎず、ちょっとずつ上がっていければなと思います」

Q.自分の長所はどこだと思いますか?

綿貫「体格でいうと、日本人の中では大きい方ですが、外国人選手と比べるとそこまで体格が有利ではないですし、パワーもある方ではないので、ロングラリーを多くすることがベースになっていくと思います。そこをもっと伸ばして、そこで勝負できるようにしていきたいなとすごく感じているところです」

Q.改善していかないといけないと思うところは?

綿貫「ツアーに出ると、勝った、負けたと波があって気持ち的にすごく大変です。海外だと時差もありますし。辛くてしんどい時もありますが、波を作らず、常にフレッシュな状態で楽しんでテニスをやりたいですね。会場でちょっと異質な、なんであいつあんなに楽しそうなんだろうな、っていう雰囲気を作っていきたいなというのは最近感じていることです」

Q.グランドスラムなどの大舞台で戦う同年代の選手たちについてどう思いますか?

綿貫「最近、ちょっとその気持ちが変わってきました。前までは一緒に試合を回っていた選手が勝っているのは嬉しかったので単純に応援をしていたのですが、最近は焦りというか悔しさというか、大丈夫なのかな自分、という思いがちょっとあって。ついこの前だとフェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)がツアーであそこまで行って」

「そういう選手たちがどんどん上がっていく中で、自分の今の立ち位置を見ると、正直不安ですね。ツアーを回っていく中でしんどかったなと。心配になりすぎちゃったのもありますし。それをどうにか自分の中で気持ちの整理をして。デニス・シャポバロフ(カナダ)やアレックス・デミノー(オーストラリア)たちはすごくファンに思えるようなプレーをしてくれますし、そういう人たちを心から応援していけるようになりたいなと思います」

Q.グランドスラムで活躍したいという気持ちは強いですか?

綿貫「そうですね。早くトップ100に入って、グランドスラムやツアーの本戦にダイレクトに入れるようにしていきたいなっていう思いはすごく強いです。純粋に予選はしんどいですし。グランドスラムの本戦というのは自分の中ではすごく思いは強いですね」

Q.今年の目標は?

綿貫「今年の目標は、来年オリンピックがあって大きなチャンスだとは思っているので、必ず今年中にトップ100に入って。もちろんそれ以上にいけたらベストだと思います。そのためにグランドスラムとかツアーとかでもうちょっと活躍して、上のレベルの選手たちとどんどん試合や練習をする回数を増やせたらなというのが目標です」

Q.テニス選手としての最終目的地は?

綿貫「テニス選手として生活するのって人生の半分もないくらいだと思っていて。僕なんかは選手生命が短い方だとも自分で思っていますし。人間的にもうちょっと大きくなっていたいというのが一番の目標です。テニスで結果を出すというのももちろんですが、その先のテニス選手を終えた後の人生を思い切り楽しめるくらいテニスでやり尽くしたいですね。明確に言ったら、日本人で誰もやっていないことを成し遂げて、パッと『もうやめた!』とやりたいですね」

Q.日本人で誰もやっていないこととは?

綿貫「グランドスラムで優勝したいです。早くしないと上の人たちがどんどんしちゃいそうなんで(笑)。どれでも、どんなことでもいいので、自分の中で、誰よりも早く、日本人でやれた、ということは欲しいかなって思います」

Q.オリンピックに興味はありますか?

綿貫「ありますね。あるというか、ちょっと夢の世界というか。ずっとテレビで見ていて、現地に行ったこともなければ、間近で見たこともないですし。ナショナルトレーニングセンターとかでオリンピアンを見たときに、人間としての大きさがあって。ああいう人たちになりたいなっていう意味でもオリンピックに日本代表として出たいですね」

約15分にわたってのインタビューを終えた綿貫。インタビュアーに「上手でしたね」と言われると「僕しゃべるのは結構上手いんですよ」と笑いながら返した。

綿貫が「夢の世界」と語ったオリンピックへの出場と、今年目標とした「トップ100」を成し遂げることができるか。これからの綿貫の活躍に注目したい。

(テニスデイリー編集部)

※写真はインタビューに答えた綿貫陽介