アトレティコ・マドリードを率いて8年目となる今シーズン、ディエゴ・シメオネ監督が岐路に立たされている。 就任1年目…
アトレティコ・マドリードを率いて8年目となる今シーズン、ディエゴ・シメオネ監督が岐路に立たされている。
就任1年目にしてヨーロッパリーグ(EL)で優勝し、2年目でUEFAスーパー杯とスペイン国王杯に優勝。3年目はひとつの集大成として、リーガ・エスパニョーラ優勝、チャンピオンズリーグ(CL)でも準優勝に輝いた。
4年目もスペインスーパー杯で優勝、5年目はCL準優勝。6年目は無冠だったが、CLはベスト4まで進み、7年目はCLで敗退するも、ELで再び優勝を果たした。
ところが8年目の今シーズンは、すでに国王杯、CLでともに敗退。CLラウンド16でのユベントス戦の逆転負け(第1戦の2-0の勝利を、第2戦で合計2-3にひっくり返された)は衝撃が走った。”狂信的な”ファンに支えられるシメオネ体制も、「5年が限界だった」と、一部で疑念が生じたほどだ。

激しいアクションで選手に檄を飛ばすアトレティコ・マドリードのディエゴ・シメオネ監督
「我々の本質は闘争にある」
そう語るシメオネは、華麗さを求めずに結果を重んじて戦ってきた。相手を圧倒するプレッシング、敵を寄せ付けないリトリート、そして敵を奈落の底に突き落とすカウンター。効率的な戦闘集団として、栄光に浴してきた。
4月6日、バルセロナとの首位攻防戦は乾坤一擲(けんこんいってき)の一戦となる。勝ち点は8ポイント差。厳しい状況ではあるが、勝てば望みはつながる。
はたして、シメオネ・アトレティコは限界なのか――。
ユベントスに敗れた後のリーガ第28節、アトレティコはアスレティック・ビルバオ戦も敵地で2-0と完敗している。試合後、記者が厳しい質問を投げた。
「就任以来、最悪のときでは?」
「ノー。それはミラノでCL決勝に敗れたとき(2016年、レアル・マドリードにPK戦の末に敗れた)だ」
シメオネらしい強気な返答だった。そしてその後、第29節のアラベス戦は敵地で0-4の勝利を収め、第30節もジローナを2-0で手堅く下している。地力の強さを示したことになるが……。
今シーズン、シメオネ監督はチーム再建に取り組み、大量補強を敢行している。MFロドリ、トマ・ルマール、ジェルソン・マルチンス(現在はモナコにレンタル中)、FWニコラ・カリニッチ、DFサンティアゴ・アリアスなど、スペイン、フランス、ポルトガル、クロアチア、コロンビアのW杯代表選手を次々に獲得。なんと1億1500万ユーロ(約145億円)もの大金を投じた。
しかし残念ながら、現状はMFロドリしか確かな戦力になっていない。
「シメオネは守備力を高め、強いモチベーションで挑むチームを作ったが、もはやサイクルは終わったのではないか」
そんな批判的な意見が目立ちつつある。
シメオネが一時代を築いたのは間違いない。堅牢な守備と凄みのあるカウンターは、ひとつのプレーモデルになった。DFディエゴ・ゴディン、ホセ・ヒメネス、フィリペ・ルイス、ファンフラン、MFコケ、サウール・ニゲス、FWジエゴ・コスタは、その中核をなしてきた。
しかし、メンバーが更新されていない。
実は2012-13シーズンのリーガ優勝メンバーが、今も同じく主力のままだ。優勝の翌シーズンに移籍してきたフランス代表FWアントワーヌ・グリーズマンは結果を残している。しかし、2000万ユーロ(約26億円)というチーム内で破格の年俸を考えれば、「物足りない」という声も消えないのだ。
もっとも、大勢のファンはシメオネ支持の姿勢を崩していない。不振に陥る中でも、練習場にはシメオネの似顔絵を描いた横断幕をいくつも掲げている。それは宗教的な信仰に近い。
これには事情がある。
シメオネが監督に就任する前のアトレティコは、苛烈なファンと脆弱なクラブマネジメントのせいで、信じられないほど波が激しかった。優勝争いをする一方、残留争いもした。かつてフェルナンド・トーレスがデビューした舞台も、実は2部だった。シメオネ・アトレティコは、クラブ史においてもっとも安定的な戦いをしているのだ。
大一番となる敵地でのバルサ戦は、ターニングポイントになるだろう。シメオネは最初の15分、相手をつぶすように強度の高いプレーで押し込み、ゴールを狙うのではないか。そこで先制点を奪えれば、理想的なゲームプランとなる。
その点で、ガーナ代表MFトーマス・パーティはキーマンになる。トーマスがバルサの攻撃を断ち切れるか。先制点を失ったら、厳しい展開になるだけに、堅牢さが欠かせない。
0-0で試合を推移させながら、アントワーヌ・グリーズマン、アルバロ・モラタ、ジエゴ・コスタの強力な三本の矢でバルサを脅かせるか。
「2位狙いですか、それともまだタイトルを狙っているのでしょうか?」
記者にそう訊かれたシメオネの答えは、面目躍如だった。
「そこに可能性がある限り、当然タイトルに挑戦するさ。俺は超が付くほどの楽観主義者だから。たった1週間で、物事がガラリと変わるのがフットボールだ」