フェデラーの優勝フォトセッションは新会場のハードロックスタジアム前で行なわれた ロジャー・フェデラー(ATPランキング5位/大会時、以下同/スイス)が、マイアミで見せつけたのは、チャンピオンらしいプレーと燦然と輝く存在感だった--。 第4シ…



フェデラーの優勝フォトセッションは新会場のハードロックスタジアム前で行なわれた

 ロジャー・フェデラー(ATPランキング5位/大会時、以下同/スイス)が、マイアミで見せつけたのは、チャンピオンらしいプレーと燦然と輝く存在感だった--。

 第4シードのフェデラーは、マスターズ1000(以下MS)・マイアミ大会決勝で、第7シードのジョン・イズナー(9位、アメリカ)をわずか1時間4分で破って(6-1、6-3)、2年ぶり4回目の優勝を果たした。

 通算28個目(史上3位)のMSタイトルを獲得した37歳のレジェンドは、ツアータイトルの合計を101個(史上2位)に伸ばし、”生ける伝説”としての勲章をさらに増やした。

「正直、今回の優勝は期待していませんでした。新しい会場になって、どうなるかわからなかったので。マスターズ1000で優勝するのは大変なことです。自分にとっては本当に(実力を試す)テストのようなもので、とりわけキャリア後半になってからはその意味合いが強いです。今回の優勝は、多くの意味で本当にうれしいものになりました」

 初戦となった2回戦では、「負けそうだった」とフェデラー自身が振り返ったように、第1セットを取られてからの逆転勝ちだったが、準々決勝からギアを上げていった。

 そして、決勝での自信あふれるプレーは、経験と実績に裏付けられたものだった。フェデラーの「自分に期待しすぎない」言葉とは裏腹に、元王者の本能、あるいは嗅覚なのだろう、勝負どころで最高のプレーをしようと体が反応していた。

 さらに、フェデラーのテニスは強いだけではなく華麗だ。シングルバックハンドの美しいフォームは、パワーが際立つ現代テニスにあって異彩を放ち、芸術的とさえ言える。

 一方、敗れたイズナーは33歳。決勝の第1セット3-4の時点で左足に故障を抱え、「勝てないのはわかっていた」と思いながらも、途中棄権を申し出ることなくプレーを続けた。

「ロジャーは、(ベースラインの)近くに立ちます。僕のサーブに対して反応が良くて速い。彼はほかのプレーヤーとは違います」

 表彰式で握手をして互いの健闘を称え合うふたりのベテランからは笑顔がこぼれていた。

 決勝はマイアミ大会史上最年長の組み合わせだったが、準決勝には、19歳のデニス・シャポバロフ(23位、カナダ)と18歳のフェリックス・オジェ アリアシム(57位、カナダ)という、ティーンエイジャーが共に初めて勝ち上がり、新風をもたらした。

 シャポバロフは、左利きの力強いグランドストロークと粘り強いプレーで接戦を制し、準決勝では憧れのフェデラーへの挑戦権を手にした。

「できるだけいいプレーをしようとした。負けるのはいつでもタフなことだけど、コートで自分のアイドルとプレーできたのは楽しかったよ」

 フェデラーにストレートで敗れたものの、学ぶことも多かったと若武者らしい前向きな姿勢を貫いた。

 予選から準決勝に勝ち上がったオジェ アリアシムは、全身バネのような躍動感あふれるオールラウンドプレーを披露して、マイアミ大会35年の歴史で最も若いセミファイナリストとなった。

「彼(シャポバロフ)と僕の結果は、お互いを刺激しあっている。でも現時点ではライバルではないよ。僕たちは競い合って、いい友達でもあるんだ」(オジェ アリアシム)

「僕たちには、明るい未来が待っていると感じている。彼(オジェ アリアシム)がいいプレーをしているのを見るのは本当にうれしい」(シャポバロフ)

 近い将来、グランドスラムの決勝で戦うふたりの姿を見ることができるかもしれない。

 さらに、いずれもシャポバロフにフルセットの接戦で敗れたが、20歳のステファノス・チチパス(10位、ギリシア)や、21歳のフランセス・ティアフォー(34位、アメリカ)も確実に力をつけており、”NextGen”と呼ばれる世代が力強い足跡をマイアミで残した。

 一方、納得しがたい結果に終わった選手もいた。

 王者ノバク・ジョコビッチ(1位、セルビア)は、4回戦で第1セットを取りながらも、第22シードのロベルト・バウティスタ アグート(25位、スペイン)に、6-1、5-7、3-6で逆転負けを喫した。

「いいプレーはしていたけど、2、3ゲーム振るわない時もある。そういうことは起こり得ること。インディアンウエルズとここ(マイアミ)では、健康状態がベストではなかった」とジョコビッチはサバサバと振り返った。

 1月のオーストラリアンオープンで最多7回目の優勝を果たし、また彼の独走が始まるかと思われたが、精彩を欠く試合内容だった。

 そして、錦織圭(6位)はマイアミでの新旧入り乱れた選手たちの活躍をどう見ただろうか。

 マイアミでは2回戦で敗れた錦織だが、すでに拠点にしているIMGアカデミー内のグリーンクレーコートで練習を始めている。4月14日からのMS・モンテカルロ大会で再始動し、ヨーロッパでのクレーシーズンで巻き返しが期待される。トップ10プレーヤーであり続けるための重要な戦いになるだろう。

 マイアミで優勝したフェデラーは、大会後にランキングを4位に上げた。今季は3年ぶりにクレーシーズンへの参戦を決め、5月のMS・マドリード大会に臨む。そして、ローランギャロス(全仏)にも4年ぶりに出場する意向を示している。

「クレーシーズンに向けては全然自信はありません。パリ(全仏)に向けて準備したい。とても楽しみにしているし、いいテストになると思う」

 フェデラー、ジョコビッチ、”NextGen”、そして、錦織。かつてないほど幅広い年齢層の選手が活躍するATPツアーで、今後大きなタイトルを手にして新たな主役に躍り出るのは誰なのか、目が離せない。