テクニックやフィジカルの強さなど、卓越したプレーに求められる要素は数多い。しかし、これらすべてを支える根幹ともいえるのが、プロ選手が持つ強靭なメンタルだ。シーズンを通じて平静を保ち、ときに一万…

テクニックやフィジカルの強さなど、卓越したプレーに求められる要素は数多い。しかし、これらすべてを支える根幹ともいえるのが、プロ選手が持つ強靭なメンタルだ。シーズンを通じて平静を保ち、ときに一万を超える観衆に囲まれながら強豪と対峙する精神力は、どのように育まれるのだろうか。

♦︎基本は「感情の制御」と「集中力」

メンタルの適性の有無は、意外にもテニスを習い始めてすぐに表出する。初心者の放つボールは、思うようにネットに届かないこともしばしばだ。自らのミスに怒りを覚えてしまうのか、それともコーチにアドバイスを求めに行くのかが分かれ目となる、とOptimum Tennis誌は指摘する。こうした感情のコントロールは、プロにとっても重要だ。試合のレベルが上がるにつれ、ショット選択のミスなど、従来とは異なるタイプの失敗を経験するようになる。激しい後悔はラケットの破壊などを招くこともあるが、感情を抑制できればこのような行為は必要ないはず、と同誌は説く。

高レベルの試合ではこれに加え、集中力も非常に重要な要素となる。メンタルコーチのゾーイ・リトルウッド氏は、自身のサイト『Mental Muscle Training』上で、メンタルスキルのキーポイントを伝授している。氏が第一に挙げるのは、目の前の試合にフォーカスすることだ。過去の失敗と未来への不安を断ち切れば、メンタルに起因する失敗を減らすことができる。第二のポイントは、その集中を最後まで保つこと。もしも途中で勝利を確信したり逆に不安に支配されてしまったりすれば、良いサーブを放つことは途端に難しくなる。ほかにも複数のポイントが紹介されているが、まずは感情のコントロールと集中力の維持が、優れたメンタル作りの基礎だといえそうだ。

♦︎練習中のミスと周囲の雑音を受け入れよう

では、どのように心掛ければ、プロのように感情を抑え高い集中力を発揮できるのだろうか? まずはミスを成長プロセスの一部として受け入れることが大切、とOptimum Tennis誌はアドバイス。プロの試合ではまるでミスに失望したかのようにコメンテーターが反応するが、練習中では何一つ心を悩ます必要はない。成長過程に欠かせない要素だと捉えるのが得策だ。一つ前のポイントやショットを忘れ、今この瞬間だけを考えるよう常に意識すると効果的。余計な思考を取り払うことで、プレーヤーの能力は最大限に引き出される。

この段階に到達すると、次なるステップ「集中」に進むことができる。集中とは、重要な事柄に意識を注ぎ、そうでない物事を無視し、あるいは変えられない事実を受け入れる能力のことだ、とOptimum Tennis誌は定義している。集中力があれば自己管理が散漫になることもなく、テーピングを忘れて本領を発揮できないなどの事態を防ぐことができる。さらには観客の発するノイズや太陽の位置、そして風の向きなど、自力では制御することのできない事実を受け入れ、自然と順応できるようになるという。

とはいえ、必要なときに急に集中力を高めることは難しい。そんなときの助けとなるのが、集中のための習慣「ルーティーン」だ。Mental Muscle Training誌は、集中力を取り戻すためのルーティーンと、極限まで集中力を高めるルーティーンの2種類を用意するよう勧めている。前者はミスや集中力が散漫なときなどに、そして後者はサーブの直前に助けとなる。似たコンセプトとして、「フォーカスポイント」というテクニックも存在する。キーとなる言葉を口にしたり特定の呼吸法を使ったりすることで、大切な場面で神経を研ぎ澄ますという技法だ。

感情面については抑制するだけでなく、思い通りの心情を引き出すことで恐怖や不安を克服する「エモーショナルゲームプラン」という方法論も存在する。プロも修練を積む奥深いメンタル・コントロールの世界を知ることで、試合をいっそう有利に運ぶことができるかもしれない。(テニスデイリー編集部)

※写真はテニスのイメージ(Stasique / Shutterstock.com)