専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第198回 最近のプロゴルファーって、いじりづらい――と書くと、ちょっと誤解を招きそうですね。 詳しく説明させていただきますと、記事にしづらい、冗談もなかなか言いづらい、ピック…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第198回

 最近のプロゴルファーって、いじりづらい――と書くと、ちょっと誤解を招きそうですね。

 詳しく説明させていただきますと、記事にしづらい、冗談もなかなか言いづらい、ピックアップすべき個性が乏しい、そもそも話題が少ない……まあ、そんな感じです。

 いろいろな条件が重なって、こうなってしまったのでしょう。たとえば、選手が小粒になって自信を失いつつあるとか、規格外の豪快な大物選手がいないとか、ね。

 そういう萎縮した状況を鑑(かんが)みて、何か打開策を考えたいと思います。まず、いじりづらい状況の原因は何か、探ってみましょう。

(1)プロゴルフ界の自信喪失
 プロゴルフとよく比較されるのが、プロ野球やサッカーのJリーグです。それぞれ地上波の放送が減って、メディア的にはゴルフ同様、苦戦しています。けど、業界的にはなんか自信に満ちあふれているんですよね。

 それは、海外で活躍している選手がたくさんいるからでしょう。

 野球は大谷翔平選手をはじめ、すでに多くの選手がメジャーリーグで結果を残しています。今年も、菊池雄星選手など有望な選手がどんどん進出して、さらなる活躍が期待されます。おかげで、国内のプロ野球であっても、「我々は世界レベルの選手層なんだ」と、自信を持って言える環境にあるのです。

 サッカー界も同様です。日本を代表する選手たちが、欧州を中心に数多く活躍しています。

 ところが、日本のゴルフ界を見てみると、世界トップツアーの米PGAツアーで奮闘しているのは、ほぼ松山英樹選手のみ。しかも、その松山選手でさえ、当初はコンスタントに勝利を積み重ねていくだろうと期待していたのに、最近の調子は今ひとつです。

 一世を風靡した石川遼選手にしても、米ツアーに挑んでがんばったものの、結果を出せずじまい。得意の日本ツアーに戻ってきても、最近はパッとしません。いまだ勘を取り戻せていない様子で、応援したいけど、何をどうしたらいいのか……。外野は黙って見守るしかない状況です。

 というわけで、日本期待の”大物2トップ”を、冗談を交えながら語れない雰囲気にあります。結果、腫れ物に触れるような扱いをしてしまう。

 これがイコール、いじりづらい、ということです。

(2)『がんばれ!! タブチくん!!』は偉大だった
 映画化もされた4コマ漫画『がんばれ!! タブチくん!!』(原作:いしいひさいち)は、歴史に残る傑作です。

 だって、一介のプロ野球選手がアニメ映画の主人公になるって、普通はあり得ないでしょ。広岡達朗監督をはじめ、当時の野球関係者は、おおよそこのマンガのモデルになって登場していますし。あれが、日本のプロスポーツ界の”いじり芸”の全盛期だったんじゃないでしょうか。

 これは、田淵幸一選手をモデルにしたキャラクターが際立って面白かった。それに、「いじってもいいよ」という田淵さんの、温厚な人柄だからこそ、成立したのだと思います。

(3)ゴルフ界の”タブチくん”は誰だ
『がんばれ!! タブチくん!!』を参考にした場合、ゴルフ界で同様のキャラクターとなれるのは誰か?

 実は、昨年の”プロアマぶち切れ事件”で有名になった(?)片山晋呉選手は、タブチくん的なキャラで、お茶目になれるチャンスだったかもしれません。以前から、タスキをかけてウイニングパットをしたりして、面白い行動をとっていました。

 ところが最近、”練習の鬼”と化して、真剣モードを強く感じます。そんな矢先に、アマチュアゴルファーが激怒する事件が起きたのです。

 あれからは神妙にしているようですが、片山選手は別にアマチュアを恫喝したわけでもないでしょ。素っ気ないだけですから。

 ならば、ここは”災い転じて福となす作戦”を取りましょう。ホストクラブのホスト風になって、お客さんをモテなすとか、何かプロアマでパフォーマンスを演じれば、好感度が逆にアップするかもしれません。

 体格的にはさほど恵まれていない片山選手が、”練習の虫”となって勝ち獲った永久シード権。これは、もっと賞賛されるべきだと思います。そういうすごさを広めるためにも、ぜひとも片山選手においては”いじり解禁宣言”をしていただきたく存じます。

 ところで、現在キャラが際立っているのは、誰でしょう?

 それは、「世界のエオゥキ!」こと、青木功プロです。

 もはや、日本ゴルフ界の重鎮で”顔”的な存在。とんねるずの石橋貴明をはじめ、たくさんの芸人が「世界のエオゥキ!」を真似しています。

 それにしても、いまだ青木さんに頼っているゴルフ界は、ほんと人材不足です。いっそ、別なところから、誰か引っ張ってきましょうか……。

(4)トップアマやレッスンプロはどうか?
 最近のレッスンプロ界では、桑田泉プロが大いに注目を浴びています。名前からピンとくると思いますが、あの元巨人のエース、桑田真澄さんの弟です。

 昔、お仕事で会ったことがありますが、その頃から「ずけずけとモノを言う人だな」と思っていたのですが、その土足で人の家に上がり込むキャラクターがブレイク。今や、オバサマたちのアイドルです。ゴルフ界の『純烈』になっています……って、ほんまかいな。

 要するに、毒蝮三太夫的なキャラで「ババァ、まだ生きてんのか」風のギャクを言って、オバサマたちをいじりまくるのです。とはいえ、レッスンで言っていることは、かなりまともで、的を射ていることが多いです。

 それなら、オジサマたちからも支持されてもいいと思うのですが、レッスンを受ける男性客は過度のいじりを嫌いがち。自分もそのタイプだなと思う方は、ゴルフ雑誌などで桑田泉プロのレッスンを読んでみてください。本人にいたぶられずに、美味しいエッセンスだけいただけば、得した気になると思いますよ。

 ともあれ、そんな感じでキャラクターをバンバン出していかないと、商売しづらいのが、レッスンプロの世界と言えます。言うなれば、高校の先生と有名予備校の先生との違い、みたいなものでしょうか。

 キャラクターでお客さんのハートをつかみ、それから教える。客商売とは、そういうものですからね。




確かに、今の日本男子ゴルフ界にはキャラの立ったスターがほしい気がしますね...

(5)なんでプロはキャラが立ちづらいのか?
 プロゴルファーは、やはり試合に勝ってなんぼ。シード権を得て、やっと試合に出られます。そういう意味では、常に戦う戦士です。

 シニアツアーが盛んな今は、戦士として60歳以上でも活躍できます。それって、素晴らしいことですよね。

 だって、そんなプロスポーツ、他に聞いたことないでしょ? サッカーで言えば、三浦知良選手が50人ぐらいいるようなものなんですから。

 そのうえ、優勝しなくても常に上位に入れば、スポンサーもついて、賞金ももらえます。往年のオールドファンも、自分のことのように応援してくれます。

 そんな状況であれば、今さらキャラクターをこしらえるより、寡黙にプレーしていれば、自ずと評価されるわけです。ゴルフ界には、それで十分な人が多いのです。

 だいたい、キャラクター作りはほんと難しいですから。狙ってできるものでもないし、かといって、勝手に湧き出てくるものでもないですしね。それこそ、人間性に運が加味されて、周りが関与して盛り上げていくものじゃないですか。

 まあでも、林修先生のように、予備校の講師からスターになれる時代。プロゴルファーから、もっと個性的なスターが輩出されてもいいと思うんですがね……。