今年に入って快進撃を続けるカナダの若き選手、ビアンカ・アンドレスク。注目が高まっていた18歳の彼女は先日、BNPパリバ・オープンに主催者推薦枠で出場し、決勝で第8シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)に勝利。ツアー大会では自身初となるト…

今年に入って快進撃を続けるカナダの若き選手、ビアンカ・アンドレスク。注目が高まっていた18歳の彼女は先日、BNPパリバ・オープンに主催者推薦枠で出場し、決勝で第8シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)に勝利。ツアー大会では自身初となるトロフィーを手にし、世界ランク女子24位に急浮上した。

♦︎テニスは13歳から

13歳のときには権威あるU14大会で優勝するなど、ジュニア時代の成績も良好だったアンドレスク。2017年には全豪と全仏のジュニア部門ダブルスで優勝している。また、同年のシティ・オープンでは、当時トップ20入りしていたクリスティーナ・ムラデノビッチ(フランス)に勝利。2000年代生まれの選手がWTAトップ20選手に勝利するのは、これが初めてのことだった。

今年に入ってからは本格的な快進撃がスタート。1月にはニュージーランドで開催されたASBクラシックで、元世界1位のカロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)とビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)を撃破。そして今回のBNPパリバ優勝は、10代の選手としては2001年のセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)以来の快挙となる。1年前に世界ランク196位だった彼女は、24位への急上昇を果たした。

♦︎躍進に本人も興奮

ツアー前のインタビューでは、「昨年は二回戦敗退となったが、今年はこのツアーに全力で挑めると思うので、それが嬉しい」とコメント。「夢が現実になった。やり方が違うのでまだ慣れないと思うし、ほかの大勢の選手のように経験もないけれど、少しずつ馴染んできている」と大会への意欲を見せていた。これほど控えめだった彼女が大会を制するとは、誰が想像できただろうか。

優勝によってアンドレスクの人生は永遠に変わった、とBaseline誌。つい昨年は、選手生活も体調も不調の真っただ中にあった。1年でこれほど変わるとは本当に信じられない、と本人も驚きを隠さない。昨年は日本で開催された賞金金額2万5000ドル規模のITF大会に出場していたが、あっという間にBNPパリバで優勝することに。インタビュー中に彼女は「クレイジー(信じられない)」という言葉を連発し、興奮を露わにしている。

彼女の実力は古参のプレーヤーも認めるところだ。WTAツアー最多優勝記録を持つマルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)は、「新時代の到来を告げる大会となった」とBNPパリバを振り返る。忽然と現れたアンドレスクは勝利にふさわしかったと認め、将来の成長に期待。ダイナミックなフォアハンドや軽やかなドロップショットなど、多様な持ち玉で攻めるアンドレスク。Toronto Sun紙も、年齢相応以上の充実した武器を備えるプレーヤーだと分析している。

♦︎実はルーマニア語も堪能

トロントに隣接する都市・ミシサガで、ルーマニア人の両親の下に生まれたアンドレスク。両親がルーマニアに一時帰国していた7歳のときにテニスを初め、その後すぐにカナダに居を戻した。パリバでの優勝スピーチでは、終盤近くにルーマニア語を披露している。

カナダに加えてルーマニアでも人気の選手になっている、とWTA公式サイトは紹介。現地メディアからも注目される存在となっている。同じルーマニア出身のシモナ・ハレプが全仏で優勝した際は、SNSにいち早く祝辞を投稿。彼女のように人々にインスピレーションを与えるような選手になることが目標、と語っている。

アンドレスクといえば、右の上腕に付けたヘアバンドも話題。シーズンオフに何気なく付けたところ、思いのほか気に入ってしまったという。フォアハンドを打つと遠心力でずり下がるため、それを戻すのが気に入っている、という一風変わった習慣の持ち主。Baseline誌によると、ファンの中には真似して付ける人も出てきており、本人は一つの流行を作り出せたと喜んでいるという。

彗星のように現れた無邪気な実力派プレーヤー、ビアンカ・アンドレスク。今シーズンさらにファンを魅了してゆくことだろう。(テニスデイリー編集部)

※写真はカナダの新星アンドレスク(salajean / Shutterstock.com)