開幕前に掲げた最低限の目標『CS進出』を果たそうと試行錯誤する中、潮崎哲也ヘッドコーチが“巻き返しのキーマン”として指名するのが、上位打線で先発を続ける金子侑司だ。■潮崎ヘッドが指名した“巻き返しのキーマン” 夏の一大イベント『オールスター…

開幕前に掲げた最低限の目標『CS進出』を果たそうと試行錯誤する中、潮崎哲也ヘッドコーチが“巻き返しのキーマン”として指名するのが、上位打線で先発を続ける金子侑司だ。

■潮崎ヘッドが指名した“巻き返しのキーマン”

 夏の一大イベント『オールスターゲーム』も終了し、2016シーズンは早くも後半戦に突入した。現在、西武は5位(7月24日終了時)。クライマックスシリーズ(以後CS)出場権が得られる3位につける千葉ロッテとは13ゲーム差と、非常に苦しい戦いが続いている。

 それでも、何とか立て直し、開幕前に掲げた最低限の目標『CS進出』を果たそうと試行錯誤する中、潮崎哲也ヘッドコーチが“巻き返しのキーマン”として指名するのが、上位打線で先発を続ける金子侑司だ。

 「侑司が塁に出て走ることで、チームが活気づき、良い雰囲気になる」

 西武といえば、中村剛也、メヒアの両本塁打者に加え、浅村栄斗、森友哉ら“一発”がある強打者揃いの打線が最大の魅力とも言えるが、さすがに毎試合“本塁打”という個人技に頼るのは難しい。「チーム(打線)として得点していくことを考えると、グチャっと詰まった当たりでも、『1安打で1点』の期待が持てる足を持つ侑司がいかに出塁できるかが、非常に大きなカギを握る」と同ヘッド。4月5日に1軍登録され、5月以降はほぼ先発出場が続くチーム屈指の俊足に大きな期待を寄せる。

■『華麗奔放』を封印した今季、泥臭く粘り強いプレーで存在アピール

 期待を集めるからには、当然、その理由がある。今季はキャンプインから「監督や首脳陣に『金子、変わったな』と言ってもらえるシーズン」をテーマに取り組んできた。グラブに刺繍されている座右の銘『華麗奔放』が象徴していた、昨季までの華やかなプレースタイルを一時封印。一変して、泥臭く、粘り強い存在を目指した。実は、その変化に昨年秋季キャンプから気付いていたのが、田邊徳雄監督だった。

 昨シーズン中までは見られなかった、バットを短く持って振り込む姿に「ようやく、自分が何を求められているのかが理解できてきた」と評価。今年の春季キャンプでもその姿勢を貫く大卒4年目選手に「変わりたい」と願う“本気”を感じたという。

 1軍昇格後すぐに先発起用すると、背番号2は期待に応え、徐々に打撃、走塁で持ち味を発揮。そして5月、「今は外せない」と指揮官は太鼓判を押した。両リーグ通じて最多の14失策と守備に大きな課題を抱えているが、遊撃、右翼、三塁と、何とかポジションを空けてでも起用し続ける様子を見ても、今いかに金子がチームにとって必要とされる存在なのかが分かるだろう。

■キャリアハイ更新も「数字よりも、今のいい状態を続けて試合に出続けることを意識」

 7月23日vsソフトバンク戦も、金子の必要性が象徴される一戦になった。1-1で迎えた8回表のことだ。1死から右安打で出塁すると、次打者・森の初球で盗塁成功。直後、森の右安打で逆転の本塁を踏んだ。「使い続けてもらっているからには、1度は塁に出てホームに還ってくることだとか、何とか1日1回はチームに貢献したい」という強い意識が、好成績につながっている。

 50試合以上を残しながらも、安打数、打点、得点、四球数、盗塁数でキャリアハイの数字を更新中だ。中でも、盗塁は糸井嘉男(日ハム)に続くリーグ2位を誇り、タイトルも十分狙える位置にいる。また、シーズン半ばとはいえ、打率、出塁率は、過去3シーズンをはるかに上回る(7月24日終了時点で打率.280、出塁率.345)。

 「自分の課題は、良い時期と悪い時期の差が激しいこと。正直、数字よりも、今のいい状態を続けて、このまましっかりと試合に出続けることの方に意識を強く持っています。とにかく、良いシーズンにしたいので」

 目の前の1試合、目の前の1プレーに集中することが、好成績を残す近道なのかもしれない。

 超重量打線の中で、軽打、走塁に特化した稀有な存在。自らの存在価値を見出しつつある今、誰にも負けない武器でチームを盛り上げ、1つでも多く勝利へと導きたい。

上岡真里江●文 text by Marie Kamioka