先日、開催されたBNPパリバ・オープンにおいて、カナダ勢の躍進がめざましい。以前から人気の高かった28歳のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)への声援も尽きないが、このところは10代の選手が脚光を浴…

先日、開催されたBNPパリバ・オープンにおいて、カナダ勢の躍進がめざましい。以前から人気の高かった28歳のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)への声援も尽きないが、このところは10代の選手が脚光を浴びていると現地カリフォルニアのDesert Sun紙が報じるなど、実力派の若手が話題を呼んでいる。

♦︎ビアンカ・アンドレスク

2019年3月に世界ランク女子60位から現在24位に急浮上、18歳のビアンカ・アンドレスク(カナダ)。ラオニッチも、彼女の活躍に注目している。Desert Sun紙によるとラオニッチは、BNPパリバの女子シングルス4回戦を制した彼女の闘いぶりについて、「有無を言わせぬ勝利だった」との言葉を贈っている。

そして見事初のツアータイトルの獲得を成し遂げた。

アンドレスクは、クリエイティブなショット作りが一際目を引く。テニスのコメンテーターとして活躍するデイヴィッド・ロー氏も、彼女に刺激を受けた人物の一人だ。観戦していると高揚感を覚えるようなプレーを展開してくれる、と述べ、アングルショットの使い方からスライスサーブの打ち込み方に至るまで、幅広い才能を持ったプレーヤーだと評価している。今年初めのASBクラシックではカロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)やビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)などを続々と破り、その頭角を現しつつある。

カナダのToronto Star紙は、近年活躍めざましい若手カナダ人選手たちは、みな国際的なバックグランドを持っている、と分析。アンドレスクも例外ではなく、トロント郊外のミシサガに越してくる前までは東欧のルーマニアで少女時代を過ごしている。現在はカナダのモントリオールに住み、少数精鋭のグループでトレーニングを受けている最中。尊敬できるコーチとトレーナーとまるで家族のような信頼関係を育みつつ、日々の練習に精を出す。

♦︎デニス・シャポバロフ

19歳のデニス・シャポバロフは、10代にして世界ランク男子23位という実力派プレーヤー。BNPパリバでは、スティーブ・ジョンソン(アメリカ)との初戦を勝ち進んだ。試合にはリラックスして臨むことができた、とシャポバロフは回想。観客席にカナダからのファンが多く見られたため、まるで国内での試合のように感じた、とのコメントをDesert Sun紙が伝えている。

2017年には、ラファエル・ナダル(スペイン)に勝利したことも。やや停滞気味だった昨年を乗り越え、今年は現在のところ快調、とTelegraph紙。全豪ではノバク・ジョコビッチ(セルビア)からセットを奪っている。全豪でこれを成し得たのは、彼のほかにはダニール・メドベージェフ(ロシア)のみだ。自分なりのゲーム運びの型を習得し、安定した力を身に付けつつあると同紙は分析している。

イスラエルのテルアビブに生まれ、カナダのリッチモンドヒルで育ったシャポバロフ。トレーニングにあたっては実家近くに滞在し、母親から指導を受けている。この手法は珍しく感じられるが、Toronto Star紙によると、16歳女子のレイラ・アニー・フェルナンデス(カナダ)もほぼ同様の手法で技を磨いた。カナダテニス連盟からの助成金が限られているため、コストを抑えて修練を積みたいという事情もあるようだ。

♦︎フェリックス・オジェ アリアシム

18歳にして男子57位のフェリックス・オジェ アリアシムも、台頭する若手カナダ人選手の一人。男子シングルス2回戦では世界10位のステファノス・チチパス(ギリシャ)を破っている。前出のシャポバロフとは大の親友で、その快進撃をシャポバロフはまるで我が事のように喜んでいる。

オジェ アリアシムは今年2月のリオ・オープンで初めて決勝進出を果たすなど、非常に勢いのある選手。スポーツ記者のキャサリン・ウィテカー氏は、オジェ アリアシムとチチパスの一戦について、攻撃力と運動能力に優れたオジェ アリアシムを前に、チチパスの方が見掛け倒しのように見えたとコメントしている(Telegraph紙)。

これまでのところ、カナダ人選手による四大大会シングルス優勝は実現していない。期待の新星たちが新たな歴史を作る日は近いのかもしれない。

註)ランキングは2019.3.18時点での情報(テニスデイリー編集部)

※写真は現在世界ランク23位のカナダの若手選手シャポバロフ(lev radin / Shutterstock.com)