現地時間3月17日、今年度のNCAAトーナメント(全米大学選手権)に出場する全68チームが発表され、八村塁が属するゴンザガ大学は西部地区の第1シードに選定された。ゴンザガの第1、2ラウンドはユタ州ソルトレイクシティで開催が決定。21日…

 現地時間3月17日、今年度のNCAAトーナメント(全米大学選手権)に出場する全68チームが発表され、八村塁が属するゴンザガ大学は西部地区の第1シードに選定された。ゴンザガの第1、2ラウンドはユタ州ソルトレイクシティで開催が決定。21日に迎える初戦(2回戦)の相手は、フェアリー・ディッキンソン大学vsプレイリービューA&M大学の勝者となる。



ゴンザガ大のエースとして活躍する八村

 3月中はこのトーナメントで各地が大変な騒ぎになることから、大会の愛称は”マーチマッドネス(3月の狂気)”。 今年も、全米が大学バスケットボールに熱狂する季節が始まろうとしている。

 シード順が示す通り、ゴンザガ大が今大会の優勝候補と目されていることは間違いない。そのエースとなった3年生の八村は、今季平均20.6得点(FG成功率61.3%)、6.7リバウンドという好成績でチームを牽引。当然のようにウェストコースト・カンファレンス(WCC)の最優秀選手に選ばれただけでなく、ジョン・ウッデン賞(NCAAの年間MVP)の最終候補に入り、米誌『スポーティング・ニューズ』のベスト5にも選出されるなど、個人賞受賞ラッシュを経験してきた。今回のトーナメント中も屈指の注目選手になることだろう。

 ただ、ここに至るまでに、ゴンザガ大と八村は意外な挫折も経験してきた。12日にラスベガスで行なわれたWCCトーナメント決勝では、シーズン中の対戦では2勝0敗だったセントメリーズ大学に47-60でまさかの敗北。カンファレンスで16戦全勝という圧倒的な強さを見せ、臨んだトーナメントで優勝を逃し、シーズン中からの通算連勝記録も21でストップした。

「カンファレンスでは負けなしできてて、最後はやっぱり気合が入りすぎたというのもあります。冷静ではなかった。これが最後の負けになるようにという話をしたので、絶対に(今後に)つなげたいと思います」

 この日は34分間で9得点、5リバウンドと精彩を欠いた八村は、試合後に悔しさを押し殺しながらそう述べた。大事な時期に自慢のオフェンスがまったく機能せず、今季最少得点に終わったことのショックはあっただろう。相手の意図的なスローペースにきれいにハマってしまったことで、「ゴンザガ対策の”青写真”が示された」という見方もある。

 大舞台を前に久々の敗戦を味わったことは、ゴンザガ大と八村にどんな形で響いてくるのか。一部で評されているとおり、本当は第1シードには相応しいチームではなかったのか。カンファレンスゲームよりも大きくレベルが上がるNCAAトーナメントで、それらの問いへの答えを見出していかなければならない。

 NCAAトーナメントでのプレーは、八村の今後にも少なからず影響を及ぼしそうだ。盛んに報道されているが、八村は6月のNBAドラフトにアーリーエントリーすること(大学卒業前の選手及び22歳以下の選手が、NBAドラフトの指名対象となることをリーグに届け出ること)が有力。今回のトーナメントでも、NBAスカウトがその一挙一動に目を光らせていることは間違いない。

 多くの米主要メディアは独自のモックドラフト(シミュレーション)を発表しており、八村の名前はまず例外なくその1巡目に入っている。ただ、順位は10位以内から20位台後半までかなりバラバラ。ゴンザガ大がレベルが高いとは言えないWCCカンファレンスに属していることもあり、評価をはっきりと定めるのは簡単ではないのだろう。

 八村のドラフト指名順を「1巡目全体15位から20位くらいではないか」と予想するある代理人は、八村の展望をこう述べた。

「NCAAトーナメントでの上位チーム相手のプレー次第で、指名順が上下するだろう。得点力よりもディフェンスが評価の分かれ目になる。弱いカンファレンスでやってきた後で、強豪と続けて対戦する中でも力が出せるかどうかだ」

 実際に強豪校から激しいマークを受ける中で、それでもエースの役割を果たせるのか。昨年11月21日にハワイで強豪のデューク大学を下して以降、トップレベルのチーム相手の勝利がないゴンザガ大を上位に導けるか。

「この先は負けられない。(NCAAトーナメントでの)あと6試合も自分たちのやるべきことをやって勝ちたいと思います」

 そう決意を固めた八村にとって、”マーチマッドネス”は実力アピールのステージであり、カレッジ生活での最大の勝負でもある。戦いが終わる頃には、日本バスケ界が生んだ逸材の進むべき道が、よりはっきりと見えてくるだろう。