25年ぶりのリーグ優勝へ向けて、広島が首位を快走している。22日から24日の阪神3連戦は黒田博樹投手の日米通算200勝などもあり、またも勝ち越し。貯金は21となった。2位巨人とは10ゲーム差をつけており、後半戦がスタートしてからも勢いが衰え…

25年ぶりのリーグ優勝へ向けて、広島が首位を快走している。22日から24日の阪神3連戦は黒田博樹投手の日米通算200勝などもあり、またも勝ち越し。貯金は21となった。2位巨人とは10ゲーム差をつけており、後半戦がスタートしてからも勢いが衰える気配はない。

■リーグ優勝へ2位と10ゲーム差、広島は「このまま最後まで行く」?

 25年ぶりのリーグ優勝へ向けて、広島が首位を快走している。22日から24日の阪神3連戦は黒田博樹投手の日米通算200勝などもあり、またも勝ち越し。貯金は21となった。2位巨人とは10ゲーム差をつけており、後半戦がスタートしてからも勢いが衰える気配はない。劇的な展開や、相手を圧倒する試合も多く、驚異的な強さを見せている。

 専門家の目から見て、広島の本当の強さとはどこにあるのか。そして、このままリーグ制覇まで駆け抜けることは出来るのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手として活躍した野口寿浩氏は、抜け目のない試合運びにこそ、強さの理由があると指摘する。

「カープが強いのは、よく打つ、ピッチャーが抑える、というのもありますけど、試合を見ていて『戦い方がうまい』と思いますね。ランナーが出ると、足を使える選手が多い。1番の田中、2番の菊池、3番の丸なんて、誰が盗塁王になってもおかしくない。ルナ、松山、新井はそういうタイプではないですが、鈴木や安部も走れる。特に鈴木は、塁に出たら『行くぞ、行くぞ』とずっとやってます。行きそうな構えをしてタイミングをとっているし、たまにフェイクを入れる。

 あれをやられたら、まず相手ピッチャーはバッターに集中しきません。しかも、本当に動いてくるチームですからね。バッテリーのサインもストレート系が多くなる。それを打者が打つ。だから強い。ランナーがセカンドに行っても常に全員が狙っている。それをやられて一番脆いチームが、今の阪神です。阪神戦でそうやって戦っているのを他球団のスコアラーも見ているから、これはカープは落ちないぞと思っているでしょうね。スキがないところを見せられていますから」

 打線でキーマンになっているのは、ブレーク中の鈴木誠也だろう。6月のオリックス3連戦では3試合連続決勝弾の離れ業を演じ、緒方監督からも「神ってる」と絶賛された。野口氏もその打力を評価しつつ、広島の育成システムに「さすが」と舌を巻く。そして、鈴木の存在があるから、打線が活発化し、ベテランの新井も好調を維持できていると見る。

■好調のキーマン鈴木の凄さとは?

「オールスター前の阪神戦を見ましたが、藤浪の調子が悪かったとはいえ、2ストライクに追い込まれた後のファウルを見ても、鈴木はあの強い真っ直ぐに負けてない。しっかり振って、ファウルを打っている。あれだけバットを振れれば、これはしばらく続くなと思いました。広島やソフトバンクの伝統ですけど、2軍の時からしっかり振れる選手を作る。鈴木はまさにそれが出来ている選手です。そして結果が生まれ始めた。育成システムはさすがですね。カープは真っ直ぐの速い直線的なピッチャーには本当に強い。

 私が阪神にいて、あの藤川球児が全盛期だった時も、アウトにはなっていましたけど、打球の内容はカープが一番怖かった。やれられるならカープだな、と感じていました。アウトの内容を見ていても、外野に強いライナーが飛ぶとか、そういう形が多かった。元々、直線的なピッチャーには強いですが、さらにそれをミスショットせずに捉えている今の状態はすごくいいですよね。

 しかも、彼の調子がいいおかげでマークが分散している。前半戦の最後は田中広輔の調子が悪くても目立たなかった。新井が休む時も安心して休んでられる。スタメンの時も後ろに鈴木がいることで、相手は新井と勝負します。そうなってくると打ちやすい。しかも、万が一、打てなくても後ろに鈴木がいると思えば、ミスも減ってくると思います。下水流も出てきましたし、全体の流れがいいですよね。誰かの状態が悪いと、誰かの状態がいい、というふうになってますから」

 エルドレッドは負傷から復帰したものの、2軍で調整中。外国人枠の関係もあり、昇格させるのが難しい状況となっているが、その“穴”を全く感じさせない。それだけ打線は充実している。

 そして、野口氏が「戦い方」とともに広島の強さの要因に挙げたのがブルペンだ。エルドレッドを昇格させるには、同じ打者のルナ、そして先発のジョンソン、中継ぎのジャクソン、ヘーゲンズの誰かを2軍に落とさなければといけない。それを「嬉しい悩み」にしているのが、シーズン途中に昇格したヘーゲンズの活躍だろう。

■「大瀬良がポテンシャルを出したら、いよいよ死角がなくなる」

「エルドレッドが帰ってくることがあれば、外国人はどうするのだろうというのがありますね。先日、横浜-ヤクルト戦を解説した時に両チームのコーチが言っていたのは『ヘーゲンズは外したらダメなのではないか』ということでした。今の広島の強さの象徴は打線と見られていますけど、実はあそこです。

 ヘーゲンズ、ジャクソン、中崎。そして、先発が5回で降りた時には、今村が出てくる。一時期の阪神のピッチャー陣に似てきました。JFK(ウィリアムズ、藤川、久保田)がいて、その前に桟原、橋本、江草がいた。ピッチャーのタイプが違うとはいえ、しっかり抑えるという意味では、あの頃に似てきましたね。ヘーゲンズとジャクソンは同じ右投手とはいえ、タイプが違う。変化球ピッチャーと豪腕なので、うまくいっています。

 もちろん、ジョンソンは絶対に外せない。先発ピッチャー陣も、とんでもなく安定しているジョンソン、黒田という2人がいるから、うまく回っています。黒田には思うように勝ち星がついていませんけど、安定感は抜群です。だから、野村も安定して投げていて、それがどんどん勝ち星という結果につながっている。まだ下に福井もいますし、戻ってきた大瀬良がポテンシャルを出したら、いよいよ死角がなくなってしまう」

 シーズンは残り約2か月。大失速しないかぎり、このまま25年ぶりのリーグ制覇を果たす可能性は高いと見られるが、実際にはどうなのか。野口氏は他チームの力を考えると、やはり広島が有利だと見ている。

「これだけの打力で勝ってきたチームだから、落ちる時は来ると思います。その時にどれだけ頑張れるか。ただ、逆に下から見ていくと、上がっていけるチームがない。どこが追いついて、追い越していけるだけの体力を持っているかと考えると……。巨人も悪いところにいないですけど、いっぱいいっぱいの状態ですよね。これ以上は望めない気がします。この調子でいくと、可能性があるのは、横浜にミラクルが起きた時、ヤクルトの戦力が整った時くらいかなと。いろいろ考えて比較していくと、カープも苦しむことはあるかもしれないですけど、結果的には最後までこのまま行くのではないかと。私の開幕前の予想は完璧に外れてしまいましたが(笑)」

 久々の歓喜へ、広島が有利であることは間違いない。新井の通算2000安打、黒田の日米通算200勝、そしてリーグ優勝。ファンにとっては夢のようなシーズンになりそうだ。