専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第196回 今までこのコーナーでも、ゴルフ人口の減少や、少子化のせいでゴルフ産業が壊滅するといったテーマを散々取り上げてきました。 ただそれは、ゴルフ場の経営側、ツアープロの世…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第196回

 今までこのコーナーでも、ゴルフ人口の減少や、少子化のせいでゴルフ産業が壊滅するといったテーマを散々取り上げてきました。

 ただそれは、ゴルフ場の経営側、ツアープロの世界、レッスン事業、ゴルフメディアなどの”ゴルフ業界”の話です。600万人いるアマチュアゴルファーにとっては、さほど影響を受けることはなく、むしろいいことが多くなるように思えます。

 というわけで、ゴルフ業界とアマチュアゴルファーの意識のズレを捉えながら、アマチュア寄りでゴルフの将来を見つめてみたいと思います。

(1)いい例はスキーバブル崩壊後
 小室哲哉率いる音楽ユニット『globe』が全盛の頃、私も鬼のようにスキー&スノボに行きましたが、そうした小室ファミリーの衰退とともに(?)、スキー場は閑古鳥が鳴き始めました。 

 けど、残されたスキーヤー&ボーダーにとっては、まさに天国。激安のリフト券で、空いているゲレンデを思う存分に滑れたのです。

 だから、もしゴルフマーケットが崩壊しても、アマチュアゴルファーは激安料金で、ガラガラのコースを思う存分にラウンドできます。非常にワンダフルな時代の到来です。




コース内で優雅にランチ...って、そんな時代が本当に来るのでしょうか...

(2)流行から文化へ
 戦後、さまざまなレジャーやスポーツが流行りました。ダッコちゃん人形とフラフープに始まって(って、古いなぁ~もう……)、ボウリング、ビリヤード、テニス、スキー、スキューバダイビング、F1レースなどなど。

 そう考えると、ゴルフも流行ったのでしょうか。思うに、半分流行、半分は定着した文化ではないですか。

 ゴルフは、1957年カナダカップ(現在のワールドカップ)の日本チーム(中村寅吉・小野光一)優勝から、「和製ビッグ3(河野高明、安田春雄、杉本英世)」、「AON(青木功、尾崎将司、中嶋常幸)」、タイガー・ウッズ、石川遼&松山英樹世代と、およそ10年に1回ぐらいブームが沸き起こり、そのたびに危機を脱出してきました。

 オイルショックやバブル崩壊、リーマンショックなどを経て、ゴルフ産業はまだ生き残っているのですから、大したものです。

 そこで続いては、今からどの段階でゴルフ人口が底を打つのか、見極めてみたいと思います。

(3)ドイツに見る人口減少への安堵
 今まで1億2000万人ぐらいだった日本の人口はどんどん減って、やがて1億人を切ることは見えています。そして、このまま少子化対策を講じないと、7000万人ぐらいまで下がると言われています。

 さあ、困ったどうしよう……。

 でも、大丈夫。日本とほぼ同じ面積で、人口7000万人程度の優秀な国家があります。そうです、ドイツです。

 将来的に、日本がドイツになったと思えば、十分にやっていけます。人口が減っても国家の経済活動が盛んであれば、国は栄えます。国が元気ならば、誰かしらゴルフはやる、ということです。ゴルフ人口が底を打つことは当分なさそうです。

 ただ問題なのは、人口1億2000万人から7000万人に減少する過程です。これが、しんどい。だって、少数の若者が多数の老人の面倒を見なければならないのですから。

 その割を食うのが、平成生まれの若者たちかも。ゆとり世代、がんばれ~! ですね。

(4)元気があればゴルフをやる
 ゴルフはスポーツから始まって、今やレジャー化していますが、やはり社会で成功した人の、一丁上がりの遊びです。もともとの始まりも、旧華族や旧公家、財閥関係者が、外国人や留学帰りのお坊ちゃんから手ほどきを受けて、からのものですしね。

 今の日本でも、そういう伝統文化は脈々と継承されています。1%以下のエクスクルーシブな方々は、名門倶楽部のメンバーシップを維持しようとしていますから。ほんと、ご苦労さまです。

 ともあれ、残りの99%のゴルフ場は、元気な人々に場所を貸して、日銭を稼げばいいのです。今後その役割を果たしてくれそうなのは、中国を筆頭としたアジアの人々です。

(5)名門コースがパリになる?
 第一次世界大戦後の1920年代、「失われた世代」と称されたアメリカの若者たちは、目的意識がなくて、享楽的と言われました。

 けど、その享楽的が空前の好景気をもたらし、多くのアメリカ人が大西洋航路をわたり、花の都パリへとなだれ込みました。俗に言う「ローリング・トウェンティーズ(狂騒の20年代)というやつです。

 日本にも享楽のバブル時代があり、1980年代後半から1990年代前半にかけて、多くの日本人がパリのルイ・ヴィトン本店やエルメス本店に行って爆買いしたものです。バブル期、日本人が買ったヴィトンのバッグは、海外での買い物を含めてヴィトンの売り上げ全体の5割と言われていたのです。すごいですね。

 現在、同様のことが中国で起きています。景気減退だと言われながら、いまだに国内総生産(GDP)の伸び率は年間6%台で推移しています。

 ただ、中国の爆買いはやや下火になっていて、最近は体験型のレジャーをしに日本へやって来ます。要は、炊飯ジャーからブランド品までひと通りそろえ終わって、日本に行くなら今度は、京都で舞妓はんとお茶遊びしたいとか、女体盛りしたいとか……って、そっちじゃないでしょ!?

 そうそう、「有名コースでゴルフをしたい」そうなんですよ。つまり、日本のゴルフ人口減少の切り札は、中国のお客さまの”ゴルフツアー”です。

 ただ、中国のバブルはそう長くは続かないと思われます。だから、今のうちにそうしたお客さまをどんどん取り込んで、いっそ10年ぐらい、中国資本の会社にコースごと貸してしまってはどうでしょう。そして、その間に日本の新世代の新人ゴルファーを養成しようじゃありませんか。

 こうしてみると、なんだかんだゴルフ人口が減っても、案外ゴルフ業界は儲かるし、アマチュアゴルファーは気楽にプレーができるしと、結構な時代が来る――そう予想します。

(6)最後はお金の問題
 最近、年金の支給を75歳以上にしたら、倍の年金を払うなんて案が出て、びっくりしています。

 男性の平均寿命が80歳程度なら、75歳から年金を支給されても5年しかもらえません。その5年の受給のために30年ぐらい年金を払うなら、自分でコツコツ積み立てしたほうがいいんじゃないですか。

 そもそも年金は、自分の総支払い額よりも余計にもらえるから、加入するメリットがあるんです。そこ、よくわかっていない人が多いです。

 それはそれとして、年金が崩壊した、あるいは年金がもらえないとしても、日本には生活保護というシステムがあります。そう考えると、日本は「ベーシック・インカム」という、低所得者や失業者に国から生活の基礎となるお金を支給する政策――それが確立されている社会に結構近い構造になってきているようです。

 そんな状況で、ゴルフです。

 それを思えば、古き名門倶楽部と大衆コースをきちんと分けて、お金持ちの遊びの部分を残すことは大事です。それによって、少数のお金持ちが多額の税金を払ってくれるのです。

 我々はその税金で最低限の生活が保証される。万歳じゃないですか。

 ゴルフ文化維持と高額納税者の貢献、そしてベーシック・インカムに、幸あらんことを祈ります。