テニスの試合には欠かせないテニスボールですが、しばらく使うと表面のフェルトが摩耗したり、空気が抜けてきたりして、新品とは感触もバウンドも違ってきてしまいます。ボールは一つの試合で何回ぐらい取り…

テニスの試合には欠かせないテニスボールですが、しばらく使うと表面のフェルトが摩耗したり、空気が抜けてきたりして、新品とは感触もバウンドも違ってきてしまいます。ボールは一つの試合で何回ぐらい取り替えられ、全部でいくつぐらい使われ、使われた後はどうなるのでしょうか。今回はボールについて説明します。

■試合中に使われるボールの数、一大会で5万個超えも

四大大会の場合、1つの試合で一度に出されているボールは6個。それらのボールは最初の7ゲーム後(ウォームアップを含むので)、その後は9ゲーム毎に新しいものと交換されます。もしプレー中にボールがプレー続行不可というほど激しいダメージを受けた場合は、そのポイントはやり直しとなります。単にボールが柔らかくなったという程度なら、やり直しとはなりません。

四大大会では大会前日からその選手が出場する最終日まで、各自1日あたり最低3個の新しいボールが無料で練習用に提供されることになっています。それらのボールは、練習後は大会側に返却しなければなりません。

少し前の話ですが、2012年の「ウィンブルドン」では約700個のボールが行方不明になったそうです。ボールが客席に飛び込むと係員が可能な限り返してもらうよう努めるのですが、それでも持って帰ってしまう人もいるのでしょう。毎年大会のために用意されるボールは約54,000個ということですから、行方不明になった700個というのはわずか1.3%ほどです。もちろんテニスの場合、例えば野球ほどにはボールが客席に飛び込むわけではないせいもあるでしょう。

■使われたボールはお土産、ネズミの家として再利用

「ウィンブルドン」では、決勝と準決勝以外の試合で使用されたボールは、その後おみやげ品として販売され、売り上げはチャリティに使われています。3個入りの缶が3ポンド(約440円)、4缶で10ポンド(約1470円)。ボールは無作為に詰められるので、誰がどの試合で使用したボールかは、残念ながらわかりません。同様に「全豪オープン」では2豪ドル(約160円)の寄付をすれば大会使用済みボールが1個もらえます。寄付金は、地元の基金に回されます。

また、「ウィンブルドン」でチャリティのために販売された後に残ったボールが、ウィンダミア地方にあるレイクス水族館に寄付されたこともあったそうです。この水族館ではなぜかネズミを飼っていて、寄付されたボールはネズミたちのお気に入りの玩具兼ねぐらになったという話です。

■たかがボール、されどボール

2019年から「全豪オープン」の公式ボールがウィルソンから日本のダンロップに変更されたことで、四大大会では「全仏オープン」がバボラ、「ウィンブルドン」がスラセンジャー、「全米オープン」がウィルソンと、全て異なるメーカーのボールを使うことになりました。ボールにもそれを使う選手たちにもそれぞれ違う特徴があり、クセがあります。自分に合うと感じられるボールも、その逆のものもあるだろうことを考えれば、4つの大会でそれぞれ違うボール、というのはある意味公平で良いことかもしれません。どの大会、どのボールでも選手たちがそれぞれの持ち味を生かし、素晴らしいプレーを見せて欲しいものですね。(文/月島ゆみ)

※写真は2019年からダンロップに変更された「全豪オープン」のボールと錦織圭(「全豪オープン」2回戦のときのもの)(Photo by Michael Dodge/Getty Images)