2月18日、「Rakuten TV」が主催する『NBA ALL-STAR 2019 PUBLIC VIEWING PARTY presented by Rakuten TV』が東京タワーメディアセンターで開催された。スター選手たちのプレー…

 2月18日、「Rakuten TV」が主催する『NBA ALL-STAR 2019 PUBLIC VIEWING PARTY presented by Rakuten TV』が東京タワーメディアセンターで開催された。スター選手たちのプレーを巨大スクリーンで楽しめるイベントには約500人のファンが集結。178-164(TEAMレブロンが勝利)とハイスコアゲームになったオールスターを堪能した。

 この日のゲストとして、タレントの安田美沙子さん、マギーさんと共に、富山グラウジーズの比留木謙司(33歳)、横浜ビー・コルセアーズの田渡凌(25歳)が出演。現役Bリーガーによる解説、選手たちの細かな情報が熱戦をさらに盛り上げた。

 比留木と田渡は、高校卒業後にアメリカに渡り、プレーを磨いた経験がある。そんなふたりに、現在のNBA、世界トップレベルの環境で奮闘する渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)と八村塁(ゴンザガ大)の印象などを聞いた。




日本代表としても活躍した八村(左)と渡邊(右)photo by Kyodo News

--今年のNBAオールスターで印象に残った選手は?

田渡 「特別枠」で出場したダーク・ノビツキー選手ですね。9得点(約4分間で3ポイントを3本成功)ではありましたが目に焼きつきました。もらったチャンスをモノにできるのは、それだけの準備ができる選手であることの証明です。今シーズンで現役を引退するとも言われていますけど、彼が見せてくれたプレーはずっと忘れないと思います。

比留木 僕もノビツキー選手だったんですけどね(笑)。もうひとり、(今季限りでの引退を表明している)ドウェイン・ウェイド選手も「特別枠」で出場したんですが、その経緯も感動モノでした。

 ウェイド選手はスターターから落選し、リザーブを決めるヘッドコーチ投票でも惜しくも落選。しかしその後、NBAのコミッショナーのもとに「特別枠」を提案するメールが届くんです。それを「いい案だ」と判断し、しっかり会議にかけて採用するところがすばらしい。ふたりはNBAを引っ張ってきた選手ですから、コートに出てきた時のファンの声援もすごかった。ああいう形で”レジェンド”たちに敬意を表するところが、NBAの尊いところですね。

--現在のNBAについてどう見ていますか?

田渡 3連覇を目指す(ゴールデンステート・)ウォリアーズが3ポイントの重要度を高め、それに他のチームが追いついてきた印象があります。すごく拮抗したリーグになり、NBAのレベルがさらに上がりました。そういった点で、ステフィン・カリー選手やクレイ・トンプソン選手が残した功績は大きいと思います。

比留木 プレー以外のところでは、どんどんグローバルになっていると感じます。以前から、ドイツ出身のノビツキー選手をはじめいろんな国の選手がいましたが、ここ5年間くらいで「よりバスケットボールを世界に広めよう」という課題をNBAが明確に打ち出している。現在は、渡邊雄太選手がグリズリーズとの契約を結んだことで日本も注目されているでしょうから、日本のバスケットボールがより発展するチャンスだと思っています。

--その渡邊選手は、2ウェイ契約(基本はNBAチーム傘下のGリーグチームでプレーし、1シーズンに45日間だけNBAでロースター登録が許される)から本契約を目指して奮闘していますね。
 
比留木 グリズリーズの主力選手がケガで離脱し、トップチームでの出場機会が増えていますね。得点などの目に見えるスタッツでアピールしづらい選手ではありますが、質の高いディフェンスなど、彼のプレーは十分にNBAに値すると思います。本人も「よりアピールが必要」と感じているとは思いますが、日本人選手の道筋を作るためにも本契約を勝ち取ってほしいです。

田渡 僕がアメリカに留学した当時のチームのコーチも、「ワタナベという選手に興味がある。こっちに呼んだらどうだ」と話していました。渡邊選手は僕のひとつ下の学年なんですが、高校時代から親交があったのでそれを(本人に)伝えたのを覚えています。その翌年に彼がアメリカに来て、今でもちょくちょく連絡を取っていますが、現在の位置に至るまでのステップを見てきた者として心から応援しています。

 僕もアメリカのトップクラスの選手に混じって戦った経験があるので、渡邊選手がどれだけすごい環境でプレーしているかが身に染みてわかります。彼のプレーを見ていると、「自分も頑張らなくては」という気持ちになりますね。

--アメリカでプレーしていた際に感じた苦労、日本との違いは?

田渡 シンプルにうまい選手が多くて、かなり競争が激しかったです。そこで得たチャンスを生かせる選手が上にいける。技術はもちろんですが、殺気すら感じるようなメンタル面の強さは、日本の選手よりも優れているように感じました。

比留木  “セルフマネージメント”ができない人間は淘汰されていくなと思いました。気になるチームを見つけたら自分でコーチに連絡を取り、練習の日程を聞き、会場へのアクセスを調べないといけません。それでチームに加入できても、チャンスはいつやってくるかわからない。主力選手がケガをしたから「お前、出るか」と急に言われることもザラにあります。

 ある意味”大ざっぱ”な部分があるからこそ、常に準備ができている選手が生き残っていく。才能だけでなく、人間として力がある選手がトップレベルでプレーすることを許されるんです。BリーグにもNBAでプレーしていた選手がいますが、あっちで長くプレーしていた選手ほど、セルフコントロールやひとつのプレーに対する丁寧さなどが違いますね。

--そんなアメリカ、世界の最高峰リーグであるNBAのドラフトで、ゴンザガ大の主力として活躍する八村選手が指名されるのでは、という報道もありますが。

田渡 八村選手とも連絡を取り合っているんですが、言葉の端々から「アメリカに慣れてきたんだな」というのがわかります。渡米からの3年でメンタル面がすごく強化されている。どこでプレーするにしても”慣れ”は大事で、彼も自分の力を最大限に生かす方法がわかってきたから、今の結果につながっているんじゃないかと思います。

比留木 技術面も向上しましたよね。自分と同じような身体能力を持つ選手に対峙した時に相手を上回るための、ドリブルハンドワークやシュート力などが確実にアップしたと思います。また、コーチ陣のコメントを見ると、彼の人間性が高く評価されているのがわかります。言語にしても、彼はもともと英語が話せなかったんですが、今はすごく上達している。彼の前に進もうとする姿勢、何かを吸収しようとする貪欲さも、彼の優れた能力のひとつです。

--先ほど比留木選手がおっしゃっていたように、これから日本のバスケットボールがさらに注目されると思いますが、おふたりの今後の目標は?

比留木 僕は、プロのキャリアをスタートした当初にアメリカの大学に2年間いましたが、基本はずっと日本でプレーをしていました。そんななかで、ずっと日本のスポーツ界に対して”違和感”を抱いてきたんです。プロフェッショナリズム、観る文化、地域との結びつきといったところが、やはり欧米に比べると物足りないと感じます。

 僕は5人制の日本代表に入れるような選手ではないんですが、それ以外の、たとえばチームのGMを務めているといった他の選手が持っていない部分も生かして、どうバスケットボールに貢献できるかを考えていきたいです。常に面白いことを発信し、どのようにバイアスを取り除いていくのか。バスケットボールだけでなく、スポーツ界に何か影響を与えられるよう、これからのキャリアを歩んでいきたいです。

田渡 僕は日本代表に入るために、2年前に日本に戻ってきました。現在所属する横浜ビー・コルセアーズはBリーグの強豪とは言えませんが、そういうチームだからこそ、自分の力でどれだけ勝利をたぐり寄せられるのかを試したかった。それが今はうまくいっていないんですけど、試合で自分のやるべきことをやるための準備は万全に行なっています。それを継続しながら成長を続け、思い描く最高の選手に近づけるよう頑張ります。


2月18日のイベントにゲスト出演した比留木(左から1番目)と田渡(右から2番目)

「提供:Rakuten TV」

■比留木 謙司(ひるき・けんじ)

1985年7月19日生まれ。東京都出身。196cm・94kg。八王子高校を卒業後、1年間ストリートバスケットボールチームに所属。その後、米サンディエゴ・シティ・カレッジに進学し、2008年に帰国。現在は富山グラウジーズに所属しながら、Bリーグ参入を目指すトライフープ岡山のGMも務める。東京五輪の正式種目となった「3×3バスケ」の日本代表としても活躍するなど、幅広く競技に携わっている。

■田渡 凌(たわたり・りょう)

1993年6月29日生まれ。東京都出身。180cm・80kg。兄の敏信、修人もBリーグで活躍する、3兄弟の三男。京北高等学校を卒業後、オローニ短大、NCAA2部のドミニカン大学カリフォルニア校でキャプテンを務めた。2017年に帰国後、横浜ビー・コルセアーズと契約し、主力選手としてチームをけん引している。