第2回の連載は男子アルペン競技に出場する中川慎(スポ2=北海道・札幌第一)と今颯人(スポ1=北海道・旭川明成)。共に全国大会での優勝経験を持つ1、2年生コンビはその実力を発揮しチームに貢献したいところだが、その胸の内はいかに。 ※この取材…

 第2回の連載は男子アルペン競技に出場する中川慎(スポ2=北海道・札幌第一)と今颯人(スポ1=北海道・旭川明成)。共に全国大会での優勝経験を持つ1、2年生コンビはその実力を発揮しチームに貢献したいところだが、その胸の内はいかに。

※この取材は2018年11月6日に行われたものです。

「ハードなメニューで追い込めた良い夏合宿だった」(今)


高校からの確実な変化を感じているという今

――まずは、昨シーズンを振り返ってみていかがですか

中川 インカレを含めてあまり良くなかったシーズンでした。12月くらいは調子が上がっていったんですけど、1月に一度怪我をしてしまって、それをどんどん引きずってしまいインカレなどの重要な大会で思うような滑りができなくて、結果が出なかったという感じですね。

――去年のインカレを振り返ってみていかがですか

中川 チームで戦うというのが初めてだったということもあって、プレッシャーもあって、ダメでした。

――オフシーズンはどのような練習をされていましたか

中川 昨年の夏はどちらかというと有酸素系の、体を大きくしないようなトレーニングを多くしていたのですが、今年はウエイトとかを結構やってパワーをつけて体重を増やしたりといったトレーニングをしました。

まず筋力アップを第一に考えて、ウエイトの回数を高校の時より増やしてトレーニングしたのと、春から夏にかけては有酸素を取り入れて、秋からはウエイトを重視してやってきました。

中川 オフシーズンには、ウエイトトレーニングや有酸素系などのほかに、球技とかもやったりします。やっぱり、体を自由に動かす能力などは球技で養われると思うので。球技がうまい人はスキーもうまいですね。

――オフシーズンに行われた、アルペン部門の合宿の感想を教えて下さい

 アルペン部門の合宿では、富士山に登りました。富士山に登るって楽しそうに思えるんですけど、結構つらくて、精神的にも来ました。あと400段くらい階段のあるところをダッシュしたりして、バタバタ言ってる人もいるような、なかなかハードなメニューで追い込めたので、いい合宿になったなと思います。

――高校時代の夏合宿と比べてどうでしたか

 メニューにもよるんですけど、結構かなり高い強度だったと思います。

――ちなみに、富士山の頂上からの景色はどうでしたか

 曇ってたんでしたっけ?(笑)見下ろすというよりかは雲一面というような感じでした。

――お二人がスキーを始めたのはいつ頃ですか

中川 スキーに初めて乗ったのは3歳くらいで、競技を始めたのは小学校2年生ですね。

僕も競技を始めたのは小学校2年生なんですけど、その前から地元のスキー教室には通ってました。冬の間だけ。

――お二人とも出身が北海道ということで、北海道エピソードなどがあれば聞かせてください

中川 彼(今)は牧場出身で、僕は札幌の街出身です。僕が北海道出身って言ったら、「え、じゃあ牛飼ってるの?」って毎回言われるんですけど、たぶん千葉県とか埼玉県よりも都会に住んでました。

――牧場の話をお伺いしてもよろしいですか

僕は田舎のさらに山の中に住んでいて、僕の家から隣の家まで2キロで、もう山で周りが草原しかないようなところで。でも子供のころからそういったところで育ってきたから、スキーもちょっと強くなれたのかなと思ったりもしてます。

――酪農家なんですか

そうです。

――アルペンスキーを選んだ理由は

中川 僕は札幌の中でもスキー場が近いところに住んでて、ウィンタースポーツに特化しているような地域に住んでたというのと、あとは親がスキーをやっていたというのが大きかったですね。

兄貴2人ともスキーをやっていて、僕は寒いのが嫌いだったのでやらないと決めていたのですが、地元の同級生の2人に誘われて入ったんですけど、その2人とも2か月くらいで辞めてしまって、結局僕1人で頑張りました。結果それでよかったとは思うんですけど。(笑)

――実家が山の中という環境も関係ありますか

あー、でもスキーかテニスの二択で。中学校の部活がスキーとテニスと陸上の3つしかなくて。全校28人だったんですよ。ド田舎だったんですけど、スキー場は地元にあって、その少年団自体も昔から全国優勝者出してるようなチームだったので、環境は良かったなと思います。

「形は関係なくただ速ければいいというのが面白い」(中川)


中川は高3時に全国高校総体優勝を経験している

――アルペンスキーの魅力を教えて下さい

中川 形とかは関係なくてただ速ければいいというところがやはり面白いかなと思います。一発逆転があるというのも魅力ですね。アルペンはコースや雪の状態、天候などで何があるかわからなくて、いきなり無名の人が優勝しちゃったりとかが結構あるので、そういうところはクロカンとかジャンプに比べたら面白いところだと思います。

自分がスピードに乗っていく感じが僕は好きですね。あとは他の競技となったら1人がずっと勝ち続けるっていうのがあると思うんですけど、アルペンって天気とか雪の状態とか、板の滑り方とかによって変わってくるので、確定された順位じゃないっていうのが下からもいける点で楽しいですね。

――逆にアルペンスキーの残念な点などはありますか

中川 寒いです。

間違いない。

――それなりの防寒対策はされていますよね

中川 してるものでもないんですよ。意外と。

競技中ヤバいですよね。

中川 競技中は、ワンピースといったピチッとした中に、長袖のタイツを上下一枚だけっていう。

――クロカンやジャンプなどに比べても寒いのですか

中川 どうなんだろ。でもクロカンは動くからあったかいよね。

で、ジャンプはそんなんですよね。イメージ的に。

一同 (笑)

中川 アルペンは一番寒いところでやると思う。

山なので。

中川 僕は一度中国でやったことがあるんですけど、マイナス30度でした。

――ほかに競技を行うにあたりつらいところは

夏ですよね。

中川 夏もつらいですね。

陸トレもそうですけど、実戦に近いものがあんまりできないというか、雪上じゃないとやっぱり滑れないので、そのイメージとかを忘れないようにするというのが他の競技と比べて難しいと思います。

――ご自身のスキーの強みを聞かせてください

中川 僕はあんまり筋肉とかは強くはないんですけど、下半身の柔軟性があるって言われてて、結構滑りの中で股関節を使えるんですよ。それは負けてない部分だと思います。スキーは足首などを固定するので、固定されてないところをいかに動かせるかというのが結構重要になってくる。

旗がセットされているところのラインどりをみんな考えていくんですけど、僕こう結構まっすぐ目にタイトに入っていって、そういうので結果を出してきたので、その周りの人よりもタイトなラインどりで滑れるというのは僕の武器かなと思います。

――逆に、ご自身のスキーのウィークポイントなどは

中川 えーっと。うーんと。先にどうぞ(笑)

タイトにいけるって話をしたんですけど、そのタイトにいくラインどりにも限度があって、まっすぐいき過ぎてしまうとコースアウトしてしまったりするので、そのタイトにいく中でも自分のラインどりをしっかり考えたうえで、どう板を滑らすかってことを考えながらいつも滑っています。あ、強化したい点ですね(笑)強化...緩斜面ですね。緩斜面をどう滑るかということをきょねんから重点的に意識して強化しています。高校入ってからずっと緩斜面が苦手だったんですけど、ある大会で速い人の滑りを見て自分の中でやってみたらちょっとマッチする部分があったので、いいところを取り入れながら強化しています。

中川 いっぱいあります。最近考えてるのは、左右均等に乗ってなければいけないところで、骨格的に右足だけちょっと内側に入りやすくなってしまっているんですよ。その影響で、ターンの乱れが出てしまうことが最近の課題です。

――これからはプライベートな質問に移らせていただきます。オフシーズンは何をされて過ごしていますか

中川 よくカラオケは行きますね。寮のメンバーで。

そうですね。よく一緒に行きます。

――何を歌われるんですか

中川 いろいろです。

(中川は)和田アキ子です。「あの鐘を鳴らすのはあなた」ですね。

中川 和田アキ子(笑)よく歌うかはわからないんですけど、うまいって言われます。

――今さんは

マルマルモリモリです。

一同 (笑)

中川 今さんは、女の子の声を出せるんですよ。miwaの「アイオクリ」をマジな女の子の声で歌います。

裏声使えるんで。

――趣味などはありますか

趣味という趣味はないです。どうでしょうね。音楽鑑賞とかにでもしておきましょうか。

中川 最近は授業がなくて暇なので、料理をしたりしています。今、寮がご飯を出していないんで、自分で作らなければいけないので、ちゃんと夜いつも作っています。

――寮の皆さんに料理をふるまうなどは

中川 それはないですね。自己満なので。(笑)最近凝ってるのは親子丼ですね。自分で作って自分で食べています。

――今さんは料理などはいかがですか

僕ですか。僕は冷凍食品のチャーハンですね。それかパンを焼くか。トーストを焼いて食べるか、それか鍋ですね。適当にガーッと入れて食べています。

――カラオケ以外では普段どのように過ごされていますか

中川 プライムビデオとか。

ネットフリックスとかですかね。暇な時って、飯食いに行くか、寝てるか、ネットフリックス観てるかですね。

――ネットフリックスで何をご覧になるんですか

ドラマを観てるんですけど、「十三の理由」とか。いじめが題材で結構重くて、観ているとムカムカします。アニメだと最近「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズを観ています。

――ご飯はどこに食べに行かれますか

中川 『湘南の家』というラーメン屋か、『きっぽうし』というラーメン屋か・・・。ラーメンかカレーか中華料理ですね。

――ラーメンは味噌一択ですか

僕は醤油です。旭川は醤油なんですよ。

中川 味噌ラーメンは札幌で食べないとおいしくないんで。東京で味噌ラーメンは1回しか食べてないです。札幌で食べないと。

――その1回はなぜ

中川 一回食べて「まずい」ってなって。「もういいや」って満足しました。

――お互いの第一印象を教えて下さい

慎さんの第一印象なんだっけ・・・。高校入ったら慎さん速かったですからね。僕その時めちゃめちゃ遅かったんですけど、全然上の人で、かけ離れてる存在で。憧れというか、目標の存在でした。

中川 嘘つけ!

本当ですよ!

一同 (笑)

だって慎さんめちゃめちゃ速かったじゃないですか。高校2年生の途中からでしたっけ。あれ?高1の途中?だってあれですよ。選抜優勝してるんですよ。僕が(高校)1年の時。全然目標でした。

中川 あざす。

――そんな中川さんからみて、今さんの第一印象は

中川 明成魂。彼の高校の生徒のことを僕の周りがみんな「明成魂」というんですけど。あれなんて言ったらいいんだろう。

スキー部ができて6年目くらいで、一期生と二期生と三期生が、まじめにやらなかったって言ったらあれですけど、結構ふざけてやってるっていうイメージを持たれてて。

中川 そうそう、そういうイメージ。

で、僕も高校一年生まではその流れに乗ってたんですけど、高校二年生の後半あたりから「これじゃまずいな」って思いだして、ちょうど僕がキャプテンになるころだったので、その流れを変えようと思って変えたんですよ。

中川 そんな感じで、スキーはそんなに成績は出てなかったんですけど、結構いい滑りをしているなという印象でした。

――それではお互いの現在の印象を教えて下さい

中川 結構彼はノリがよくて、いじりにも丁寧に反応してくれて、面白いです。

(笑)

慎さんめちゃめちゃ面白いんですよ。本当に。慎さんがいるだけで場が盛り上がるんで。結構ムードメーカーみたいなところがあるんですよね。そういう印象です。一緒にいて楽しいっていう。

――今さんからみて、中川先輩の尊敬する点は

練習をちゃんとやります。当たり前ですけど、練習をちゃんと毎日やるって難しいことだと思うんですよ。追い込むときはしっかり追い込むし、すごいなって思います。

――逆に中川さんから今さんをみて、後輩としてかわいい点は

全部ですよね?

中川 じゃあ全部で。

一同 (笑)

中川 まあ、だいたいかわいいです(笑)

――大学の授業の感想は

高校の時とかって数学だったり、社会だったり、古典だったり、漢字とか。数学がとにかく僕はできなくて、本当に勉強大っ嫌いだったんですけど、大学の授業はスポーツのことだったり、方法実習だったりスポーツ関係のことが学べるので高校の時より全然楽しいです。

中川 もともとスポーツが結構好きだったので、好きなことを学べるというのは高校の時よりも楽しいし、やりやすいかなと思います。

――ワセダに入ったきっかけは

中川 有名なOBの方もいて、スポーツを学べる環境というのも限られていて、在学中の先輩にも強い人がいっぱいいて、あとは名前もあるんですけど、そういうところで選びました。

僕はもちろんスキー部が強いっていうのが1番の理由で、僕が入る年に男子がインカレ優勝してて、それで非常に強いスキー部なんだなと思っていて、あとは先輩方もみんな強いですし、高校の時のスキー部の顧問の人がワセダスキー部のOBの方で、そういう関係もあってワセダに入りました。

――寮生活はいかかですか

楽しいです。高校の時も寮には入っていたんですけど、決まりが結構あったので、エンジョイしなかったわけではないんですけどはっちゃけてなかったので、ここは盛り上がれる範囲で盛り上がれるので、部屋でゲームやったりそういうので楽しく過ごしています。

――逆に寮生活のネックな点などはございますか

いろいろありますよね。遠いとか。都会が遠い。

中川 汚いとか。

ゴキブリが出るとか。

中川 主に汚い。

古い。

――オリンピックが終わると新しいところに変わるという話がありましたが

中川 結局住めなくなったんですよ。

僕が四年の時ですっけ。

中川 いや、俺が四年の時。イタリアチームのために作ってるんだけど、スキー部は高いから無理みたいな。きょねんの段階では住めるって話だったんですけど、もう入れないって。知らなかった?

知らなかったです。

中川 全然いいですけどね、この寮も。

こっちのほうがいいですよね。

中川 他の部活と一緒というのもいいんですけど、スキー部だけっていうのも楽しいかなって思います。

――競技のシーズンが冬ということで、秋学期の授業の単位などは取りにくいなど不便な点はありますか

中川 単位は取りづらいですね。だからそういうのに理解のある先生の授業を選んで取ったりしてます。あと、夏に30取って、冬は10しかとらないというふうにして対応してます。

――スキー部内で流行っていることは

中川 先輩でスイッチを買った人がいて、それをやってます。部屋で。二人で一部屋なんで。

――「これ言いたい」っていうのがあればどうぞ

中川 これ言いたい!?(笑)

マネージャーじゃないですか?

中川 あー、マネージャー!

マネージャーとトレーナー募集してます。

中川 今は4年生のマネージャーがいるんですけど、居なくなると回らなくなるし、選手がそういう仕事をやらないといけないとなるとキツいですね。例えばきょう自己推薦でスキー部を受ける子たちがここに来るんですけど、その子たちの面倒を見るのがマネージャーなので。今ちょうど迎えに行ってるところかな。

監督からの指示を受けてみんなに出すとか中間役みたいなのをやってたり、色々大変そうなので。

中川 事務的なこととかも全部やってくれているのですごいありがたいです。

ぜひ。

――トレーナーがいなくて困ることは

中川 正直いないのが当たり前なので、高校の時もトレーナーがついている訳ではないので。まあいたら全然変わってくるとは思うんですけど。

(入ってくれたら)めちゃくちゃ嬉しいですよね。

――今年度の目標は

中川 昨年は最初にも言った通りあんまりよくなくて、切羽詰まって焦って、もっと速くなりたいってもっと速くなりたいって感じでスキーをやってたので、あんまり成績が出なかったっていう部分もあるので、だからことしは気楽に楽しみながらやりたいなって思います。その中で目指していくのはやはり全日本選手権での優勝と、ファーイーストカップというアジアの上の方の人たちが集まる大会で上位に入っていくっていうのが目標です。

昨年は全日本が結構早い時期で、12月25日あたりにやって、全然そこに標準を合わせられなかったので、全日本を滑り切って優勝を目標にしっかり自分の滑りができたらいいと思います。

――最後に、インカレに向けての意気込みを教えて下さい

中川・今 優勝します。

――ありがとうございました!

(取材・編集 山田流之介、斉藤俊幸)


色紙には、今選手は高校時代の先生からもらったという言葉を、一方の中川選手は悩んだ末「正正堂堂」という言葉を書いてくれました

◆今颯人(こん・はやと)※写真右

1999(平11)年6月3日生まれ。北海道・旭川明成高出身。スポーツ科学部1年。

◆中川慎(なかがわ・しん)※写真左

1998(平10)年9月1日生まれ。北海道・札幌第一高出身。スポーツ科学部2年。