専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第192回 おおよそどのスポーツでも、試合を観戦するとなれば、現場で見るよりも、テレビのほうが詳しく見られますよね。いろんな角度からズームでオンエアされますから、選手の表情も手に取…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第192回

 おおよそどのスポーツでも、試合を観戦するとなれば、現場で見るよりも、テレビのほうが詳しく見られますよね。いろんな角度からズームでオンエアされますから、選手の表情も手に取るようにわかります。

 それは十分にわかっているのですが、やはり試合会場に行って”生”の臨場感を味わいたいし、応援席などから現場にいるファンやサポーター、ギャラリーと一体になって声援を送りたい--そう思って、多くのファンが会場に足を運ぶのです。

 昔、鈴鹿サーキットで開催されたF1日本グランプリを見に行きましたが、直線コースなんか”ヒュン!”とコンマ何秒かの世界でマシンが突っ走っていきます。だから、現場のスタンドで見ていると、今のは「セナ? マンセル? 誰?」といった具合で、個体認識なんかまったくできません。

 けど、すごく興奮します。なにせ、会場近くにたどり着くと、あの甲高いエキゾーストノート(排気管から出る音)が爆音として聞こえてくるんです。それだけでもう、居ても立ってもいられなくなり、ドドドッ~と会場へ小走りになってしまいます。

 というわけで今回は、大いに臨場感を味わえるゴルフ観戦とはどういったものか、というのを綴っていきたいと思います。

 まずはてっぺん、最高レベルの話から。

 ゴルフ観戦のVIP席はどうなっているのでしょうか。

 たいがい18番ホールのグリーン傍らとか、胸に金色のタグをぶら下げた人しか入れないエリアがあります。スタジアム形式の観客席なら、テントがあるような一番前の席ですか。そこにVIPの招待客を座らせる、これがお約束となっています。

 あと、高級時計メーカーや大手自動車メーカーなどがスポンサーブースを出展し、その2階部分などにVIP席を設けて、シャンパンを飲みながら観戦できるとか、そういうこともやっています。

 けど、せっかく緑あふれるゴルフ場に来たのなら、コースを堪能しないと意味がありません。われわれ庶民は、その醍醐味を味わうべきでしょう。

 では、どういった観戦スタイルがいいのか。具体的にはこんな感じでしょうか。

(1)目当ての選手を追いかける
 現在、日本の男子ツアーのトーナメントでは、さほど入場者が多くないので、余裕で選手を間近で見られます。お気に入りの選手がいれば、その選手に付いて回っていくのがいいでしょう。

 私も過去に、スーパースターを追いかけて回ったことがあります。ただそのときは、多くのギャラリーに押されて大変でした。なんたって、目当てのプレーヤーがタイガー・ウッズでしたから。

 2001年WGC EMCワールドカップ。舞台は、太平洋クラブ御殿場コースでした。私は、アメリカのタイガー&デビッド・デュバル、日本の丸山茂樹&伊沢利光が同組でプレーする組を追いかけることにしました。

 さすがにその組は、パター練習から大盛況の超満員。そのギャラリーの隙間から覗いてみると、タイガーが自らマジックでナイキのボールにマークを記しているじゃないですか。「案外、われわれがコンペでやるのと同じことをするのね」なんて思ったりしました。まあ、タイガーの場合は、同組で同じナイキのボールを使用するデュバルとの誤球を避けるためですが。

 いよいよプレースタート。ティーグラウンド近くに陣取ったと思ったら、あれよという間に打って、すぐに移動。結局、その繰り返しだったので、かなり疲れました。

 でも、世界のタイガーを全盛期に見られたのは、一生の思い出だし、当時の丸山&伊沢組が、タイガーとさほど負けていない飛距離だったことには驚きました。


スポーツ観戦は

「現場」ならではの楽しみがありますよね

 また、昨年はPGMゴルフリゾート沖縄で開催された日本男子ツアーのHEIWA・PGM CHAMPIONSHIPを現地で観戦。知り合いの選手に付いて、9ホールほど追いかけました。これが、選手と一緒にラウンドしているみたいで、実に楽しかったです。

 間近で試合を見ていると、いろいろと考えるじゃないですか。「バーディーチャンスだ」とか、「バンカーにつかまった」「スタイミーだ」「じゃあ、どうする?」って。

 そうやって、自分の攻め方とプロの攻略法を照らし合わせて見ているのが、すごく面白かったです。レベルはだいぶ違いますけど、勉強になることが非常に多い。そう感じました。

(2)”定点観測”をする
 お目当ての選手がいない場合、あるいは、じっくりと腰を落ち着かせて観戦したい場合は、どこか一箇所に場所を絞って観戦する。そういうのも楽しいです。

 以前、私が”定点観測”したのは、2012年の日本女子オープンでした。会場は、横浜カントリークラブ。ここの長いミドルホールのセカンド地点で、じっくりと女子選手たちの攻略方法を見ていました。

 宮里美香選手が260ヤードオーバーのショットを放って、ベストポジションをキープした際には「すげぇ~」と驚いたりしていましたね。あとは、ティーショットは飛んでいたけど、ラフにつかまる選手とか、ラフにつかまってうまく脱出できない選手とか、厳しい戦いをずっと見ていました。

 そのときは、ちょっと高い場所があって、そこから俯瞰できたので、ボールの位置が丸わかり。とても面白かったです。

 もう少し腰を落ち着けてみたい場合は、もっと平らな場所に陣取って、折りたたみ椅子に座り、ビールでも飲みながら観戦する方法もあります。春や秋などのゴルフシーズンに、ピクニック気分で試合を見るのも、いと楽しいです。

(3)ギャラリーコーナーで観戦
 どの試合会場も、ギャラリープラザみたいなスペースがあって、ほぼフードコート状態になっています。そこには自由に使えるテーブルと椅子がありますから、好きな食べ物やドリンクを買ってくれば、そこに座ってゆっくり食事ができます。

 さらに周囲を見れば、液晶ビジョンの大型モニターがあって、トーナメントの中継をしています。それで試合の流れがわかるから、それを見ていればいいか。そんな観戦術もアリです。

 そもそもゴルフの試合は長いです。おおむね男子は4日間、女子は3日間のトーナメントです。ゆっくり観戦したいなら、おおよそ平日に行なわれている予選ラウンドがベストでしょう。

 こういうときなら、選手を追いかけるのを半分にして、残りはフードコートでのんびり。ついでにギャラリーブースをぐるっと回れば、いろんな試供品やプレゼントがもらえます。しかも、ニアピンコンテストやパターチャレンジなどのイベントも盛りだくさん。そこで、いろんなグッズをゲットして帰る、というのも悪くありません。

 決して安くない入場料を払って観戦しに行くのですから、元を取らないとね。

 あと、気にかけることは帰りです。

 とりわけ最終日、最終組が17番ホールあたりをラウンドしている際に、すでに勝敗が決まっていたら、とっとと帰ります。シャトルバスが混みますからね。

 けど、最後まで粘っていると、たまにいいことがあります。

 横浜で女子オープンが行なわれたときは、中国勢か韓国勢の優勝がほぼ決まった感じだったので、早めに会場を後にしようとするギャラリーが多かったのですが、ラウンドを終えた日本人選手たちが、にわかにサイン会を始めて最後まで盛り上がっていましたね。

 他に情報をチェックしておくと、有名選手は契約メーカーのブースに立ち寄ることが多いので、そこで待っているのもアリです。

 タイガーが出場したワールドカップが行なわれたのは、11月でした。ですから、会場の太平洋クラブ御殿場コースは、試合が終わるとほぼ真っ暗でした。富士の裾野で迷子にはなりたくないので、私は家路に急いでいたのですが、一緒に来た知り合いが「タイガーはナイキと契約しているから、絶対にナイキのブースに寄るはずだ」と、そこで待っていようと言うのです。

 でも私は、「まさか。こんなに暗いんだよ。タイガーが来なかったら、オレらだけ置いてきぼりじゃん」と、知り合いの提案など真に受けず、さっさと帰りました。

 すると後日、その知り合いから突然メールが……。そのメールには写真が添付されていて、なんとそこにはタイガーとデュバルを両手に抱えた知り合いが、にっこりと笑って写っているではありませんか。やられたぁ~。木村家、一生の不覚ですばい。

 さらに、その人から送られてきた年賀状が、タイガー&デュバルと握手する記念写真だったことは言うまでもありません。

 とまあ、このようにトーナメント観戦では、待てばいいこともある、という話でした。今はギャラリーも減っている時代なので、他にもオイシイことに遭遇することが結構多いですよ。