オーダーメイドスーツブランド「カシヤマ ザ・スマートテイラー」は、オンワードホールディングスの子会社であるオンワードパーソナルスタイルが展開するブランドだ。3万円からオーダーメイドスーツが作れ、採寸後は最短1週間で顧客へ商品が届く。「カシヤ…
オーダーメイドスーツブランド「カシヤマ ザ・スマートテイラー」は、オンワードホールディングスの子会社であるオンワードパーソナルスタイルが展開するブランドだ。3万円からオーダーメイドスーツが作れ、採寸後は最短1週間で顧客へ商品が届く。「カシヤマ ザ・スマートテイラー」は、スポーツとの関わりが深く、ラグビー、バスケットボールのチームとサプライヤー契約もしている。
大学スポーツを本気で応援するスポーツブルが、学生時代にはヨットに没頭し、ほぼスーツを着たことがなかったというオンワードパーソナルスタイルの関口猛社長にブランドの立ち上げのきっかけからスポーツとの関わり、ご自身のスポーツ体験などを聞いてみた。
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まず、「カシヤマ ザ・スマートテイラー」を立ち上げたきっかけを教えてください。
関口社長(以下:関口):元々、母体のオンワード樫山は、紳士のスーツが祖業です。(祖業から)90年以上経ちますが、スーツに対するDNAが蓄積されていて生産数もかなりありますし、知見がだいぶ溜まっています。色々なブランドや会社で各々別々に展開していた経緯がありますが、それを一つに集結してインターネットを駆使しながら販売できるブランドを作ろうというのがきっかけです。
3万円からオーダーメイドでスーツを作れるということですが、なぜこの金額に設定されたのでしょうか?
関口:マーケティングをしまして、日本でスーツの購入額が2200億円、購入者が約550万人。割ると、平均4万円。私自身がスーツを着る機会があって、海外へ行く際に良いスーツを着ていると外国人に褒められます。そういう意味も込めて、日本人のスーツの偏差値を上げたいので、あまり高い値段から入っていくよりは、買いやすい値段できちんとしたスタイルを提案するのが狙いでした。
ターゲットは若年層となるのでしょうか?
関口:年齢の分布も取ったのですが、年齢によって値段が変わるというよりは、日本のサラリーマンの方が平均で買われている値段が3〜4万円ということでした。必然的に、若いお客様が多く取り込めているのが実態です。
「スーツの民主化を目指したい」というお話をお聞きしたことがありますが、「民主化」について具体的に説明お願いします。
関口:例えば朝の満員電車で、スーツを着た人がたくさん乗ってくるのは日本人くらいだと思います。多分、(国土の)面積に対するスーツを着ている人の人口が高いと思います。日本のスーツの歴史は100年弱ですが、間違った方向に積み上げられています。例えば、フィット感、選ぶ素材、コーディネートなど多々ありますが、世界のスタンダードからすると少しずれています。アジア人はスーツの着方を分かっていません。特にイギリスとかフランスとか行くと、僕らが小さい頃に箸の持ち方を習うように、親からスーツの着方を習います。それが日本にはないと思います。オーダーでも既製でも良いのですが、そもそも知識がないから流行りに流されることが多いです。日本のサラリーマンで典型的なのが、裾です。大体日本人の方は、長めでワンクッションあるのが良いと思っています。世界基準の裾は、“ハーフクッション”です。
採寸から最短1週間で顧客の元へ届きますが、その秘密を教えてください。
関口:なかなか自社工場を持っていて、なおかつ販売チャネルを持っている会社は少ないです。工場が自社化できたのが一番大きいです。クオリティも安定しますし、コストも抑えられます。
顧客の手元に届く際は圧縮パックに入れられていますが、シワとかはないのですか?
関口:スーツはウールでできているので、(全部ではないですが)ウールに含まれている水分を抜きます。乾燥状態にして体積を圧縮してパックしています。そういう原理なので、(圧縮パックを)開けると空気中の水分を取り込んで、それがウールに復元して形としてふっくらとしてきます。シワがなく、100%元の状態に戻ります。
今度はスポーツとの関わりについてお聞きします。「カシヤマ ザ・スマートテイラー」は、スーパーラグビーのサンウルブズと2018年シーズン、サプライヤー契約を結んでいます。サプライヤー契約したきっかけを教えてください。
関口:元々、(ラグビー業界とは)カシヤマ ザ・スマートテイラーの前身の時から付き合いがありました。サンウルブズが世界に打って出るので、「世界で通用する」という我々の志と同じであるところからスタートしました。
今後の御社のスポーツに対するビジョンを教えてください。
関口:オンワードグループは元々、アメリカンフットボールのチームを持っていました。それと、僕らの上の世代までは、社内には各大学のスーパースター選手たちが沢山いました。体育会系が好きな会社ですので、今後もスポーツ選手をサポートして、一緒に世界を目指していくことはどんどん広げていくかと思います。今はラグビーの他にも、バスケットボール、サッカーのチームをサポートしていますしもっと広げていくと思います。できれば日本代表チームもサポートしたいです。
今度は、関口社長ご自身について質問します。関口社長とスポーツの関わりについて教えてください。
関口:今は、週に1〜2回ほどジムへ行く程度です。最近はスポーツに関わっていませんが、学生時代はずっとヨットをやっていました。体育会ヨット部でけっこう真面目にやっていました。大学時代、年間の200日くらいは海にいっていました。(ヨットをやり始めるきっかけは)大学に入学した時バブルの真っ盛りで、先輩がカッコよく見えたからです。
ヨットをやっていた時に九死に一生を得た経験があるそうですね。
関口:はい、ありました。年に一度、春一番が吹きますが、いつ吹くかわかりません。前日に天気図を毎日チェックしていますが、それでも予測できません。ある日海に出ている時に、春一番が吹いて風向きが変わって突風が吹きだし、あれよあれよという間に流されて、どんどん船も沈没していきました。通常の波の高さは3〜4メートルくらいですが、春一番の時は、下手したら落差が10メートルくらいあって、波の下に入ると完全に見えなくなって、流されたら終わりです。それで命からがら帰ってきたことがありました。このような経験をしていますが、やっぱり海の上は気持ちいいですね。
ボーイスカウトの経験もあるそうですね。
関口:山も好きですね。無人島や雪山に行ったりしました。高校生くらいの時に瀬戸内海の島へ行ったのですが、浜辺にテントを立てて寝ていたら、当然ながら潮が満ちて流されそうになりました(笑)海でも山でもサバイバルなものが好きです。
ヨットやボーイスカウトをやっていて良かったと思う瞬間は?
関口:あまりカッコいい話ではありませんが、理不尽というか何でこんなことしているんだろうと思うことに耐えられる精神力が、社会に出てけっこう大きなバリューになっています。その時の経験が生かされています。あとは純粋に、自然の中でやることは心が開放されます。
学生や若い世代にとってスーツは、いつの時代も特別なものです。関口社長にとって学生時代のスーツとは?
関口:全く着ていなかったです。スーツを初めて着たのは就職活動の時です。今でも覚えていますが、オンワード樫山のとあるブランドのスーツをたまたま買いにいったのですが、自分なりにこだわりがあったのは、ブカブカよりもピチピチがいいなと思っていました。値段は4〜5万円くらいで既製服だったのですが、それがすごく印象に残っています。自分の想いにあった洋服を着ているとテンションが上がります。そういうのは就職活動にすごく大事だと思います。それに自分の格好に自信があると、面接でも良く見えたりします。そういう意味で、特に学生の方はスーツについて教わったことがないと思うので、基本を教えてくれて、なおかつテンションが上がるような意見を交えて接客してくれるようなお店で最初にスーツを買うと、入り口としてはいいかなと思います。
スーツを選ぶ時の一番のポイントを教えてください。
関口:一番は、サイズ感です。それが全てです。それだけで、全然違います。1万円のスーツでも、サイズが合っていれば良く見えます。
最後に学生アスリートへメッセージをお願いします。
関口:日本人が世界に通用するようになってほしいです。それはスポーツでもファッションでも同じです。
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取材・文 / スポーツブル編集部 (SUSHIRO)
写真協力 / 合同会社ACE
画像提供 / KASHIYAMA the Smart tailer(カシヤマ・ザ・スマートテイラー)