2月6日から8日まで、マレーシアのセパン・サーキットで行なわれた3日間のプレシーズンテストは、上位4つをドゥカティ陣営が独占した。 トップタイムは、今年からファクトリーチーム入りを果たしたダニロ・ペトルッチ(ミッション・ウィナウ・ドゥ…

 2月6日から8日まで、マレーシアのセパン・サーキットで行なわれた3日間のプレシーズンテストは、上位4つをドゥカティ陣営が独占した。

 トップタイムは、今年からファクトリーチーム入りを果たしたダニロ・ペトルッチ(ミッション・ウィナウ・ドゥカティ)。2番手には昨年のMoto2チャンピオンで最高峰ルーキーのフランチェスコ・バニャイア(アルマ・プラマック・レーシング)、3番手にバニャイアのチームメイトのジャック・ミラー、そして4番手にはファクトリーチームのエース、アンドレア・ドヴィツィオーゾが入った。



ドゥカティのエース、ドヴィツオーゾがテストの感想を語る

 ペトルッチからドヴィツィオーゾまでのタイム差は0.299秒で、4名ともセパン・サーキットの非公式最速タイムを上回るラップタイムを記録した。……と、この結果だけを見ると、ドゥカティが他陣営を圧したかのように早合点してしまいがちだが、ことはそう単純ではない。

 セッション時間をまだ残した状態で最終日の走行を切り上げたペトルッチは、「まだコース上に残っている選手は何人もいるし、(マーベリック・)ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)あたりがタイムを更新してくるかもしれないね。この3日間のテストではとても速かったから」と、他陣営の選手たちへの警戒を怠らなかった。

 さらに、今の状態でレースを行なったとしても、自分は優勝候補に届かないだろう、と慎重な見方も示した。

「トップファイブには入れるだろうけど、表彰台を狙えるどうかはわからない。バレンティーノ(・ロッシ/モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は調子を上げているし、去年の決勝レースでも速かったよね。(アレックス・)リンス(チーム・スズキ・エクスター)も、この暑さのなかで速さを発揮している。

(マルク・)マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が来るのは、もちろん言うまでもない。他にも(フランコ・)モルビデッリ(ペトロナス・ヤマハSRT)、ドヴィ……と数えていくと、僕たちは10番目くらい(笑)? だからきっと、5位争いくらいの位置になるんじゃないかな」

 昨年と一昨年にマルケスとチャンピオンを争い、両シーズンともにランキング2位で終えたドヴィツィオーゾの言葉を聞けば、今回のテストで各陣営がどれほど拮抗していたかということが、さらによくわかる。

「ドゥカティ勢が上位を独占できたのはよかった。自分たちのペースが悪くないということだからね。とは言っても、それでレースの速さが保証されたわけじゃないし、この順位が最終的なリザルトになるわけでもない。

 ホンダについては、ライダーの体調が完璧ではないので、まだ彼らのレベルを語るのは時期尚早だし、ヤマハも去年より確実によくなっている。彼らはきっとシーズン序盤から強いと思う。リンスが速さを発揮していることにも気をつけておきたい」

 この言葉にもあるとおり、ディフェンディングチャンピオンのマルケスは、左肩の脱臼グセを治すために昨年12月に手術を行なった。それ以来、連日午前と午後に2時間半ずつのリハビリを続けながら準備を続けてきたが、まだ完調にはほど遠い状態だ。そのため、今回のテストでは無理をせずに、連日早めに走行を切り上げた。

「第2戦のアルゼンチンで100パーセントの体調に戻すことを目指す」と話すマルケスは、トップから0.931秒差の11番手タイム。3日間を終えて、「手術後最初のテストで、乗り方を忘れていなかったのは自信になった。初日は体調がフレッシュだったので速く走れたけど、日に日に厳しくなってきた。それでもいいペースで締めくくれたのだから、とてもハッピー」と述べた。

 マルケスは、1周のみのタイムアタックでは他の選手たちに一歩譲る順位で、レースを想定したロングランも見送ったが、アベレージタイムでは誰よりも高い安定感を発揮していた。

 また、今回のテストで大きく目を引いたのが、アレックス・リンスの躍進だ。ペトルッチとドヴィツィオーゾの言葉にもあるとおり、リンスは非常にハイレベルなテスト内容で、初日と2日目に連続して2番手タイムを記録した。3日目は総合12番手と、見た目は低い位置に落ち着いたが、アベレージタイムで見るかぎり、マルケスに匹敵する安定感を発揮している。

 コンディションやコース特性が大きく異なる次のカタールテストでも同様の好内容を発揮すれば、開幕戦でトップ争いに食い込んでくることは確実だ。さらに、シーズン好スタートを決めて勢いに乗れば、今年のリンスは優勝候補の一角を占める重要な選手になるだろう。

 また、昨シーズン苦戦を強いられたヤマハ陣営は、決勝レースでタイヤが急激に消耗してパフォーマンスを落としてしまうためにライバルたちについていけない、という大きな課題を抱えていた。今回のテストでは、その問題は着実に改善傾向にあると、ビニャーレスとロッシはともにコメントしている。

 ふたりとも「やるべきことはまだたくさんある」と言いながら、確実に調子を取り戻しつつあるのは明らかで、これもまた激戦のシーズンを予感させる要素のひとつになりそうだ。

 次回のカタールテストは、今月23日から25日の3日間、レースウィークのスケジュールに合わせてナイトセッションのテストとして行なわれる。この内容次第で、今年の勢力関係がかなり明らかになってくるだろう。