専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第191回 サッカーの試合では、ホームが有利で、アウェーが不利と言われていますが、ゴルフの場合はどうでしょう。 プロのトーナメントの世界では、本国と海外とか、地元の県や州とそれ…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第191回

 サッカーの試合では、ホームが有利で、アウェーが不利と言われていますが、ゴルフの場合はどうでしょう。

 プロのトーナメントの世界では、本国と海外とか、地元の県や州とそれ以外とかに分けることができますが、ホームコースすら持っていないアマチュアゴルファーにとっては、どこが”ホーム”なのか、見当すらつきません。平均的なアマチュアゴルファーは、すべてのコースが”アウェー”という気がします。

 ともあれ、プロの世界の話から、そういう身近なレベルの話まで、ゴルフにおける”ホーム”と”アウェー”について考察してみたいと思います。

 まずは、一番高いレベルからです。

 トーナメントプロの世界、それも海外に遠征しているプロとなれば、当然本国のコースがホームとなります。日本人選手の場合、日本国内のコースがホームで、アメリカやイギリスなど海外のコースはアウェーです。

 日本で、ホームの地の利を使って勝ちまくった選手と言えば、ジャンボ尾崎選手です。賞金王12回、通算113勝。そのうち、国内での勝利が112勝です。

 一方、海外では振るわず、メジャー大会(マスターズ、全米オープン、全英オープン、全米プロ)においては、全米オープンの6位というのが最高成績。ベスト10入りは、わずか3回しかありません。

「内弁慶」と言われても仕方のない成績ですが、それでも世界ゴルフ殿堂入りを果たしていますし、通算113勝は誰にも破られていない記録として、称賛されています。

 日本ゴルフツアーにおいても、ジャンボ尾崎選手は通算94勝を挙げて、歴代最多勝記録を保持しています。PGAツアーの最多勝が、サム・スニードの通算82勝、次いでタイガー・ウッズの通算80勝ですから、いかにジャンボ尾崎選手が素晴らしい実績を残しているかがわかります。

 ジャンボ尾崎選手がすごいのは、日本で開催されているツアーで、外国人のトッププロを結構打ち負かしていることです。まさにホームの強み。ゆえに、日本人選手に限らず、多くの外国人選手たちが、ジャンボ尾崎選手を称えているのです。「アウェーだったけど、ジャンボに負けた」とね。

 ところで、具体的にホームとアウェーでは、何が違うのでしょうか。

 日本人選手がホームとなる日本のコースでプレーする場合、ギャラリーはほぼ全員が味方です。試合前の環境、食事や移動、睡眠、言語など、普段の生活と変わりません。

 これが、海外のコースでのプレーとなると、大きな違いがあります。まず、食事が合わない。炊飯器を持っていく選手も結構います。朝、昼、晩と3食米の飯を食べて、初めて馬力が出ると。そして、朝はやっぱり納豆を食わないと、粘りが出ませんから。

 会場に行けば、競技委員との折衝は、もちろん英語です。英語で細かい説明ができないと、不利な判断をされがちです。

 そういうメンタルの弱い部分が露呈してしまうのが、まさにアウェーです。大したことのない出来事さえ指摘され、反論できずに相手の言うがまま、とかね。そうして、些細なことでリズムを崩してしまうのが、ゴルフです。

 そうそう、普段の環境もまったく異なります。たとえば、海外のトイレにはシャワー式トイレ、俗に言うウォシュレットがほとんどありません。そのため、携帯ウォシュレットを持っていく選手もいるそうです。

 無論、パンツにウンコがついても気にしない――そういう図太い神経の選手であれば、何ら問題ありません。要は、どんな環境でも対応できる選手であれば、アウェーの舞台でも十分に戦っていけるでしょう。

 過去、日本のゴルフ界で、海外で活躍した第一人者と言えば、やはり「世界のアオキ」こと、青木功選手です。英語もさほど喋れないのに、ロッカールームで外国人選手に気さくに声をかけるそうです。そういうキャラクターですから、海外でもビビらず、ノビノビとしたプレーができたのではないでしょうか。

 なにしろ、帝王ジャック・ニクラウスに対しても「ヘイ、ジャック!」なんて、呼んでいますからね。そういう関係になれたのは、この試合があったからです。

 そう、1980年の全米オープンです。この試合で、ニクラウスと青木選手は4日間同組でラウンドし、「バルタスロールの死闘」と言われる名勝負を演じています。

 寄せワンパーとロングパットを決めまくり、「東洋の魔術師」と称された青木選手。最終日最終組でも、ニクラウスと同スコアのラウンドを展開していきます。フロントナインまでは、まさに互角の戦いでした。

 最終的には、ニクラウスに2打差をつけられてメジャー優勝を逃しました。それでも、青木選手の4日間の成績は「274」。このスコアも、当時の最少ストロークだったのですから、いかにすごい戦いだったか、ということですね。

 以前、海外ツアーに丸1年以上、参戦していた選手から話を聞いたことがあるのですが、「コースから何からすべてが違う」と、最初はかなり驚いたそうです。

 PGAツアーの選手は、小技はともかく、ものすごく飛ぶ選手ばっかりで、アベレージの日本人選手がツアーに参戦すると、まずその飛距離に圧倒されてしまい、必然的にテクニカルなコースの大会を選ぶようになってしまうんだとか。

 アメリカは大陸なので、移動時間も半端ありません。しかも、帯同キャディーとマネジャーなど3~4人のチームを組んで、移動の連続です。予選を突破しないとお金にもならないので、相当な負担となります。

 そしてコースに出れば、グリーンは癖のあるバミューダ系、ティフトン系などの芝が多く、それに慣れるまでがひと苦労なんだそうですよ。

 こういう話を聞けば聞くほど、日本人選手のアウェーでの苦労は計り知れないものがあります。

 だから、いっそ松山英樹選手みたいに、アメリカを”ホーム”に選んだほうがいいのです。腰を据えて、何年かアメリカを本拠地として試合に出続ける。海外で活躍するには、それしかありません。



一般的なアマチュアゴルファーの場合、ホームとかアウェーとか関係ないんですけどね...

 プロの話ばかり綴ってきましたが、アマチュアにとっての”ホーム”は、やはりメンバーコースということになるのでしょう。ただそこで、”ホームの強み”というのはあるのでしょうか?

 以前メンバーになって、友だちを呼んでプレーしたことが頻繁にありましたが、正直、スコア的にはホームの強みはさほどないです。何年もラウンドしてコースを熟知しているのですが、そのコースで初ラウンドの人にも軽く負けてしまうとかね……なんだんねん。

 アマチュアの場合、実力的にはホームコースのほうが2~3打有利になります。けど、2~3打なんて、ちょっとうまいシングルさんとやったら、簡単に抜かれてしまいます。

 結局、アマチュアのホームとしてのメリットは、スコアよりも、まさしくホームコースである”地主”としての有利さじゃないでしょうか。

 グリーンの切れ方に対しては詳しいです。それに、OBの位置、危険ゾーンなどですね。つまり、キャディーさん代わりにはなるんじゃないですか。

 あと、スタッフや売店のおばちゃん、キャディーさんらとは顔見知りですから、それこそ”我が家”。”我が家”ついでに、お茶とかおごらなければいけないのも、仕方のないことです……。

 たいがい、ホームコースにゲストを連れて来るのは、”ホームコース自慢”以外の何ものでもありません。

 とはいえ、余りにも名門コースだと、ビジターフィが高いですから、逆にゲストは寄り付きません。高額な料金を払って、散々コースの自慢話を聞かされたら、ゲストはたまったものじゃないですから。

 ですから、月例などのクラブの競技に出る人は、ひとりで行くか、同じメンバーさんと行くか。そういう人が多いです。

 アマチュアの場合、ゲストにホームコース自慢をしているうちは、まだまだひよっこ。やはりメンバーとして、ひとりでクラブ活動に参加してなんぼです。

 昔から言われているでしょ。

「キャバクラとゴルフはひとりで行くもの」とね。そういう気がしてなりません。