テニスプレーヤーはラケットをコートに叩きつけてかなりの騒ぎを起こすことがある。それは四大大会のひとつである「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/1月14~27日/ハードコート)という大…

テニスプレーヤーはラケットをコートに叩きつけてかなりの騒ぎを起こすことがある。それは四大大会のひとつである「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/1月14~27日/ハードコート)という大舞台でも見られたが、とても気持ちがいいものとは言い難いものであるだろう。

世界ランキング3位の21歳アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)は、シーズン中にラケットを破壊するシーンを度々目にする選手の一人。

ズベレフは「全豪オープン」4回戦、自らのミスの多さから大きく後れを取った。すると敗北が近づく中、コートサイドの椅子に座ったまま前に身を乗り出し、ラケットをコートにガツンと計8回も乱暴に叩きつけてから、めちゃめちゃになった道具を最後に叩き投げた。

近くにいたボールパーソンが驚くほどかなりの音で、対戦相手だったミロシュ・ラオニッチ(カナダ)も「聞こえたよ」と言った。「僕はそっちを見なかったと思う。なにが起きているのかは、見なくても明らかだったと思う」

当のズベレフ本人は試合後に「すっきりしたよ。すごく腹が立っていたから、怒りを吐きだしたんだ」と語ったが、その行いはスコア上は少しも助けにならず、もちろん主審から警告を受けた。

なお、その試合の主審を務めたのはあのカルロス・ラモス主審。大坂なおみ(日本/日清食品)が優勝した2018年「全米オープン」女子シングルス決勝をジャッジした。ラモス主審はズベレフに警告を行った後、あきれているようにも見える表情を見せた。

一方ズベレフのラケット破壊とは程度が違うが、大坂なおみは「全豪オープン」3回戦、第1セットを落とすと同時にラケットを放り投げることで、調子が上向いた面もあったようだ。

大坂は試合後に「私はいろんなものを溜め込みがちなんです。あの時は、外に出してしまったほうが、内に溜めておくより楽だと感じたんです」「それに、より長い時間くよくよしていたかもしれません」と話した。それでもコート上での勝利者インタビューでは「今日は謝らないといけません、ラケットをたくさん投げてしまいました」とファンへの反省の言葉も忘れなかった。

またノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、タイミングがはまれば試合の行方を変えることができると固く信じているという。

そのため、今回「全豪オープン」を制したジョコビッチは、気が向けばほとんどためらうことなく商売道具を放り投げる。

「僕のキャリアにおいてはこういう状況の時、大声を出したりラケットを投げたりすることで目が覚めたような感じになって、試合中にどんどん高まっているプレッシャーから自分を解放できることがある」「だけど、役に立たない時もある」とジョコビッチは語った。

観客の反応は様々だ。

壊れたラケットを記念に欲しがるファンもいる。だが、2018年「全仏オープン」でジョコビッチが赤土にラケットフレームを叩きつけて壊した時は、観客は口笛を吹いてブーイングした。

ジョコビッチは「正直言って、ああいうことを誇りに思っているわけではない。したいわけではない」と言った。「だけど、時々起きてしまうんだ」

真剣勝負における選手たちのプレッシャーは、計り知れないものであろう。しかし、選手たちが商売道具を破壊する姿を観ることは、極力少なくなることを願いたい。

(C)AP(テニスデイリー編集部)

※写真は「ATP1000 マイアミ」でのズベレフ

(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)