専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第190回 毎年囁かれている”ゴルフ人口減少”問題ですが、今のところ、大崩れする気配はなさそうです。ともあれ、その一連のマーケット減少の動きを、ここでも…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第190回

 毎年囁かれている”ゴルフ人口減少”問題ですが、今のところ、大崩れする気配はなさそうです。ともあれ、その一連のマーケット減少の動きを、ここでもう一度、おさらいしておきたいと思います。

 最近、ゴルフ人口関連で注目を浴びたのは、”2015年問題”です。ゴルフをやっている人がもっとも多い団塊の世代が、その頃に一斉に引退するから、急激にゴルフ人口が減ってパニックになる――そう言われました。

 しかし、その問題が大きく取り沙汰されて4年ほど経過しましたが、ゴルフ人口は微減こそしているものの、大騒ぎをするような状況にはなっていません。

 それは、どうしてでしょうか?

(1)平均寿命が延びている
 お年寄りキャラで有名な方と言えば、TVアニメの『サザエさん』に出てくる磯野波平さん。頭頂の髪の毛が1本という、明らかに引退した姿の波平さんですが、設定年齢が54歳って知っていました?

 30~40年ぐらい前の54歳は、今の70歳ぐらいの扱いです。逆に言えば、今の70歳ぐらいの方々はそれだけ若いということ。だいたいここ30年で、10歳未満だった犬や猫の平均寿命も、12、13歳ぐらいまで延びていますからね。人間だって延びて当然です。現在は、男子の平均寿命も80歳を超えています。

“2015年問題”が浮かび上がった背景には、人間80歳ぐらいで亡くなるから、70歳ぐらいでゴルフを引退するだろう、という安易な考えから算出された予測値です。

 それで、現実はこうでした。

(2)ゴルフで健康寿命が延びる
 ゴルフをやっている方は、比較的健康体の方が多いと思います。ゴルフは、腰や肩が多少痛くても、それをかばいながらプレーできますしね。これが、サッカーやラグビーだと、激しさが違ってきますから、さすがにプレーするのはしんどいでしょう。

 それにゴルフの場合、70歳になって飛距離が落ちても、アプローチでカバーして「まだ、若い者には負けないよ」という方が多いです。しかも、乗用カートもあるし、電車利用でコースに行けば、車の運転もしなくていいから、体に負担をかけることなく、プレーできます。

 さらに、今の70歳は年金の”勝ち組”です。それなりの金額をもらっていますから、平日5000円程度のプレー代で済む地方でやるなら、月に1、2度のレジャーとして、そして健康法として、十分にプレー可能でしょう。

 高齢の先輩方を見ていると、70歳前後はまだまだ元気いっぱい。私より飛ばす方が結構います。いまだシングルを維持している人も、数知れず、です。

 とあるデータによると、介護を受けたり、寝たきりになったりしないで生活できる健康寿命は、2016年で男性は平均72.14歳です。2001年には平均69.4歳でしたから、5年で1歳ぐらい延びているのです。

 というわけで、ゴルフ可能年齢は、健康寿命に4、5歳加えたぐらいかなと。それが、ゴルフがプレーできる平均限界年齢と言えます。

 要するに、77歳の喜寿を迎える頃には、さすがに飛ばなくなって、ミスも多くなり、ラウンドしてもつまらないと感じる方が増えてくるのではないでしょうか。そうなると、引退が近い雰囲気が漂ってきます。

 現在、団塊の世代のボリュームゾーンが72歳ですから、あと5年ぐらいしたら、”団塊ゴルフ”の終焉を迎え、ゴルフ人口が急激に減ると思います。

 というわけで、山場となるのはこのときです。

(3)2025年の大阪万博が節目
 昨年末の”アップルショック”以来、株価は乱高下しましたが、この動きは今年いっぱい続くでしょう。中国の景気後退、日露領土問題、参議院選挙、消費税10%増など、重要案件が目白押しですから、そのたびに乱高下が起こりそうです。

 けど、日本は2020年の東京オリンピックがあります。経済がどうあれ、その国家的なプロジェクトがあるので、無理やり景気を押し上げて、来年までは帳尻を合わせるでしょう。

 そうやって、のらりくらり2025年まで、だらだら景気が持てば、大阪万博まではパニックは起こらないのではないでしょうか。

 そうなると、ゴルフ人口問題はそこらへんが正念場になりますね。団塊の世代が引退して、ゴルフ人口が600万人から300万人ぐらいに減るかもです。

 業界は、阿鼻叫喚の地獄絵になりますが、一般のプレーヤーにとっては、天国です。料金が安く、コースががらがらという”ゴルフ天国”が、2025年に到来するのです。

(4)2025年以降はどうなる?
 2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博って、なんか聞き覚えのある流れですよね。そうなんです、1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博の再来です。

 ということは、高度経済成長の再来とは言えませんが、低成長ながら、そういう国家イベントをエサにして、経済が引っ張られるんじゃないですか。

 で、その後はどうなるか?

 実は1970年の大阪万博の3年後、1973年に第一次オイルショックが始まり、日本はパニックに陥ります。

 デジャブとして見ても危険です。加えて、大阪万博以降、少子化が加速し、超高齢者社会が到来。もはや、国家予算だけでは高齢者を支え切れなくなる。そんな気がします。

(5)生き残りをかけたインバウンド
 日本はゴルフ場の数で言えば、2000以上あって、アメリカの次の座を英国と競っています。その余ったゴルフ場を、外国人の観光客にプレーしてもらう手はあります。

 韓国や台湾は土地が狭いので、コースの数に限りがあります。中国もゴルフブームですし、同国の観光客は爆買いも終わりかけて、今や体験旅行がメインとなっているので、ゴルフは魅力的なコンテンツになり得ます。

 我々が、アメリカのペブルビーチやスコットランドのセントアンドリュースで「プレーした」と自慢するのと同様に、そうしたアジアの外国人観光客にとっては「日本で富士山をバックにゴルフができた」ということが、大いなる感動体験になるのです。

 実際、今でも富士山の見える山梨や静岡のコースでは、外国人観光客がたくさんプレーしていますけどね。

 そうした状況のなか、すでにゴルフメーカーやゴルフ場がアジア資本に買収されて、着々と下地は形成されています。



近い将来、アジアの外国人観光客と一緒にプレーする機会が増えるかも...

 コースを買収されるとどうなるのか?

 プレーやマナーがまだまだ未熟な外国人たちがたくさんいるので、外国人専用コースとして生まれ変わり、日本人は入れない、そんなコースもチラホラ出てきています。

 今後、たくさんの外国人観光客を受け入れる日本。ゴルフ場も開放して、アジアの人々と仲良くプレーする――そんな時代が、すぐ目の前にやって来ています。