1月28日、アトレティコ・マドリードはチェルシーのスペイン代表FWアルバロ・モラタを18カ月の期限付き移籍(2020年6月まで。買い取りオプション付き)という契約で獲得したことを発表している。 その前段階として、ジェノアのポーランド代…

 1月28日、アトレティコ・マドリードはチェルシーのスペイン代表FWアルバロ・モラタを18カ月の期限付き移籍(2020年6月まで。買い取りオプション付き)という契約で獲得したことを発表している。

 その前段階として、ジェノアのポーランド代表FWクシシュトフ・ピョンテクがミランに移籍し、ミランがアルゼンチン代表FWゴンサロ・イグアインをチェルシーに放出。玉突き移籍の形になった。

 今シーズン、モラタはマウリツィオ・サッリ監督と戦術的に合わず、自ら移籍を志願していた。移籍候補としては、セビージャ、バルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、ドルトムント、ミランなどの名前が次々に挙がっていた。爆発的なスピードと豪快なフィニッシュは、今も高い評価を受けている。

 では、なぜモラタはアトレティコを選択したのだろうか? その理由はふたつある。



チェルシーからアトレティコ・マドリードに移籍したアルバロ・モラタ

 すでに書いたように、モラタはサッリの戦術システムに辟易していた。

 サッリの戦術は、ポゼッションを重視する戦い方と言える。ボールを丹念につなぎ、相手をずらし、タイミングやスペースを作って、崩してゴールを決める。時間も手数もかける。

 一方、モラタはディフェンスの裏に走り、もしくはサイドに流れ、1本のパスを引き出してゴールにつなげるプレーを得意としている。カウンター戦術で自らを生かすことができる。レアル・マドリード、ユベントスで得点を挙げていたときも、そのパターンが多かった。

 スペイン代表のロシアW杯のメンバーから外れたのも、戦術的相性と無関係ではなかった。「ティキタカ」と言われたパサータイプが多いチームで、「機能しない」と判断された。特色が出るタイプのストライカーなのだ。

 その点、闘将ディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコは、ポゼッションを重視せず、効率的なカウンター攻撃を掲げている。シメオネはモラタのポテンシャルを高く評価し、過去に2度、入団を打診したことがある。手術をして戦線離脱中のスペイン代表FWジエゴ・コスタ(2月下旬には復帰予定)に代わる存在として、理想的なストライカーと言えるだろう。

「モラタはアトレティコの選手にふさわしいか?」

 スペインの大手スポーツ紙、マルカはインターネットでアンケートを行なったが、7割近いファンが「イエス」と答えている。

 サッリのチェルシーで不遇を感じていたモラタも、移籍先として名前の挙がったどのクラブよりアトレティコを望んでいたという。交渉では900万ユーロ(約11億円)という高年俸がネックになったが、モラタ自身が給料ダウンでもアトレティコを希望。この決着は、相思相愛の必然だった。

 モラタがアトレティコを選んだもうひとつの根源的理由は、少年時代を過ごした古巣だからだ。

 モラタはアトレティコのカデテ(14、15歳のチーム)に属していた。週末には、トップチームのボールボーイをするのが楽しみだったという。しかしポジションを争っていたボルハ・バストン(アラベス)に敗れる形で、退団を余儀なくされることになった。当時の育成部長の判断だったという。

 その後、モラタは同じマドリードのヘタフェで1年を過ごしたあと、レアル・マドリードのユースに所属している。そこからは、「ラウル2世」(ラウルも15歳でアトレティコからレアル・マドリードに移籍した。ただし彼の場合は、当時アトレティコのユースが財政上の理由で一時的に廃止されてしまったのが理由だった)と呼ばれるなど、目覚ましい成長を遂げた。本人もラウルに憧れ、部屋にはポスターを貼っていたという。

 モラタは自分を選ばなかったアトレティコに対し、強烈な反骨心を示した。選んでもらえなかった憎しみを、得点に叩き付けるような激しさがあった。カスティージャ(レアル・マドリードのBチーム)では、アトレティコと熾烈なダービーマッチを戦い、得点を決めたときには、レアル・マドリードの紋章を鷲づかみにして、スタンドに向かって勝ち誇って見せた。昨シーズンのチャンピオンズリーグ、チェルシーでアトレティコを相手に得点したときも、同じようなパフォーマンスをしている。

「過去は過去」

 モラタは軽く受け流している。怒りと憎しみは、アトレティコを心から愛していたが故だったのか。

「自分はアトレティコでサッカーを始めている。僕がどこから来たのか、人々は知っているだろう。それ(アトレティコで育ったこと)が自分にとって、どんな意味を持つか、もね」

 背番号は22。最短では2月3日のベティス戦が、モラタのアトレティコ・デビューとなるという。