全豪OP決勝翌日、ビーチで行なわれた大坂なおみのフォトセッション 2019年1月26日は、大坂なおみが、全豪オープンで初優勝を成し遂げ、世界ナンバーワンになれることを初めて決めた日として、日本の人々の記憶に永遠に残り続けるだろう――。 …



全豪OP決勝翌日、ビーチで行なわれた大坂なおみのフォトセッション

 2019年1月26日は、大坂なおみが、全豪オープンで初優勝を成し遂げ、世界ナンバーワンになれることを初めて決めた日として、日本の人々の記憶に永遠に残り続けるだろう――。

 決勝で、第4シードの大坂なおみ(WTAランキング4位、1月14日づけ/以下同)は、第8シードのペトラ・クビトバ(6位、チェコ)を7-6(2)、5-7、6-4で破り女子シングルスで初優勝を飾った。

 1968年のオープン化(プロ解禁)以降、男女を通じて日本選手では初めての全豪シングルス優勝となる歴史的快挙で、アジア選手の中では、2014年のリ・ナ(中国)以来となる。

 昨年に引き続き、今年も大坂のツアーに帯同しているアレクサンドラ・バインコーチは彼女が成し遂げたことを大いに労った。

「なおみは驚くべきテニスをしました。本当によくやり遂げました。彼女を誇りに思います」

 決勝で大坂と対峙することになったクビトバは、2011年と2014年のウィンブルドンチャンピオン。大坂は、昨年のUSオープンチャンピオンで、グランドスラムチャンピオン同士の対決となった。

 試合前にバインコーチは、初対決となるクビトバ戦のキーポイントを次のように語った。
 
「両者ともに、1球目(サーブ)、2球目(リターン)、3球目(リターンの返球)がとても危険です。いったんラリーになれば、なおみの現在の心理やフィジカルの充実を考えると、なおみが優位に立てると信じています」

 決勝は、「全豪オープン優勝」と「世界ナンバーワン」の2つを手にする頂上決戦。その舞台にふさわしくプライドがぶつかり合う名勝負になった。

 大坂は、準決勝に続いて好調なテニスを維持してストロークを積極的に打っていった。さらに、クビトバのセカンドサーブに対しては、ベースラインの内側へ入ってコートの中からライジング気味に早いタイミングでリターンしてプレッシャーをかけた。

「彼女(大坂)がベースラインの近くに立って、プレッシャーをかけてきました。彼女が近くに立つと、よりアグレッシブになっていましたし、そういうプレーが好きなのでしょう」

 クビトバは、第1セットに5回ブレークポイントを握るもののいずれも取れず、お互いすべてのサービスキープをしてタイブレークの結果、大坂が3回目のセットポイントを取って第1セットを先取した。

 決勝まで1セットも落とさずに、しかも28ゲーム取られただけで勝ち上がってクビトバは、第2セットでは、リターンを積極的に打って巻き返しを図る。

 それでも、大坂が第3、5ゲームをブレークして5-3としたが、第9ゲームではクビトバのサービスゲームで3回のマッチポイントを握る。しかしここで試合を決めることができず、続く第10ゲームは自分のサービスもキープできなかった。第9ゲームから4ゲーム連取で第2セットはクビトバが奪い返した。

 ファイナルセットでは、第3ゲームで大坂のベースラインの内側に入って打つバックハンドのリターンが冴え渡り40-30からブレークに成功。第10ゲームで大坂の5回目のマッチポイントでは、大坂の時速183kmのサーブに対して、クビトバのフォアリターンがサイドアウト。2時間27分の激戦を制して初優勝した大坂は、力を出し切ったかのようにしゃがみこんだ。

 大坂は、フォアウィナー17本、バックウィナー6本、サービスエース9本を含む33本のウィナーを決めたが、クビトバのウィナーも33本だった。また、ファーストサーブでのポイント獲得率も、大坂が76%、クビトバが71%で最後まで拮抗していた。

 今回の全豪は、まさに大坂の心技体がそろった見事な初優勝だった。

 そのなかでも、今大会全体で印象に残ったのが大坂の攻撃的なリターンだ。相手のセカンドサーブに対して、フォアもバックもベースラインからコートの中へ入って早いタイミングでスピードのあるストロークを打ち返した。

 この『リターンの進化』が、昨季と比べてもっとも伸びた点のひとつで、「ハードコートでは誰にも負けない」という大坂の自信をさらに深めたと言っても過言ではないだろう。特に、対トップ10プレーヤーとの対戦となった準決勝や決勝でのフルセット試合では、大坂の終始攻撃的なリターンが勝利を引き寄せた。



気迫の籠ったショットで勝利を引き寄せた

 大坂は、グランドスラムで昨年のUSオープン以来通算2回目の優勝となり、さらにオープン化以降、日本人選手でグランドスラム2大会連続優勝は初めての偉業となる。

 そして、全豪決勝の結果、WTAランキングのポイントは、優勝の大坂が7030点、準優勝のクビトバが6290点となり、1月28日づけのランキングで日本人初の世界ナンバーワン選手が誕生した。21歳での初のナンバーワンは、2010年に20歳で1位になったキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)の記録に次ぐ若さとなる。

 世界歴代26人目の世界ナンバーワンとなったが、歴史的な瞬間にもかかわらず、大坂は初の1位に関して喜びを見せなかった。

「次の大会でプレーする時に、ナンバーワンになった自分の名前を見る時、何かを感じるでしょう。でも、今は優勝トロフィーを手にできた方がうれしい」

 プロを目指す時、大坂はグランドスラムで優勝することと世界ナンバーワンになることを目標に掲げた。全豪での初優勝では、グランドスラム2回目のタイトルと初の世界ナンバーワンを実現させたのだが、彼女の目標には変化が起こっていた。

「子供の時は、厳しい練習の目的として夢を追い求めたいものです。誰にとってもグランドスラムで優勝することとナンバーワンになることは、とても大きなモチベーションになる要素です。(昨年の)USオープンで優勝した後、予選なしで大会に入ることができるのなら、ランキングのことは気にかけないようにしようと考えるようになりました。自分がシード選手になれば、大会では1回戦が不戦勝になる、それが次のゴールになりました。

 私がこの大会(全豪)で優勝すれば、ナンバーワンになれると話していましたが、私はそれを成し遂げることができました。でも、ランキングは決して自分の本当のゴールではなく、この大会で優勝することでした」

 3月上旬には、昨年ツアー初優勝を果たしたWTAインディアンウェルズ大会が控えており、3月下旬には、大坂が住むフォート・ローダーデールに近いWTAマイアミ大会がある。どちらもグランドスラムに次ぐグレードのプレミアマンダトリー大会で、再びトッププレーヤーが集まる大規模な大会のため、大坂への注目が集まるだろう。

「優勝することが常に私の目標です。だから私の次の目標は、次の大会で優勝することです。インディアンウェルズでまた優勝したいですし、マイアミでも優勝したいです」

 ここ2年、グランドスラムでは、全大会それぞれ異なるチャンピオンが誕生してきたが、大坂がグランドスラム2連勝を飾り、新ナンバーワンになったことで”大坂なおみ時代”が到来したことを強烈にアピールすることになった。

 全豪決勝の試合中には、メルボルンの夏の残照によって赤く染め上げられたあかね雲が、センタコートであるロッド・レーバーアリーナの上空いっぱいに広がっていた。それはまるで大坂なおみの時代の幕開けを祝っているかのようだった――。