試合を重ねるごとに強さを増していく大坂なおみ 全豪オープン準々決勝で、第4シードの大坂なおみ(WTAランキング4位、1月14日づけ/以下同)は、第6シードのエリナ・スビトリナ(5位、ウクライナ)を6-4、6-1で破り、メルボルンで初の準…
試合を重ねるごとに強さを増していく大坂なおみ
全豪オープン準々決勝で、第4シードの大坂なおみ(WTAランキング4位、1月14日づけ/以下同)は、第6シードのエリナ・スビトリナ(5位、ウクライナ)を6-4、6-1で破り、メルボルンで初の準決勝進出を決めた。
「ここ(準決勝)に来られてうれしいです。でも、同時にこの調子を続けていきたいです。まだ勝たなければいけない試合がありますからね。前を見続けていきたいですし、まったく満足していません」
日本女子選手による全豪シングルスベスト4は、1994年の伊達公子さん以来25年ぶりとなり、この快挙を元世界4位の伊達さんは次のように語った。
「もちろん彼女にとってもいいことですし、日本テニス界にとってすごくいいことだと思う。USオープンの優勝の後、プレッシャーのかかっている場面で勝っていくことは、簡単なことではないし、実力をしっかり上げてきている証拠」
スビトリナとの準々決勝での第1セットでは、前半はサービスキープが続いたが、第6ゲームから後半はブレーク合戦が続いた。
「スビトリナは、すべてのボールを打ち返して来て、ミスを本当にしない」と大坂が語るように、スビトリナのフットワークがよく、素早くポジションに入って大坂のボールを打ち返した。
一方大坂は、スビトリナのボールが短くなったら、ベースラインからコートの内側へ入りステップインしながら攻撃的に打った。さらに、スビトリナのセカンドサーブに対しては、ベースラインの内側へ入って、リターンを構えてプレッシャーをかけるとブレークにつなげていき第1セットを先取した。
第2セット第3ゲーム後にスビトリナは、メディカルタイムをとって治療を受けたが、全豪序盤から首と肩につるような違和感があったという。結局治療を受けたものの第2セットでは100%のプレーができず、大坂のワンサイドゲームに。大坂は、フォアウィナー12本、サービスエース8本を含む31本のウィナーを決めた。
「私がチャンスを与えてしまったため、なおみは、的確にボールを捕らえて打ってきました。以前対戦した時よりも、少し自信を深めているようだった」(スビトリナ)
大坂は、グランドスラムで昨年のUSオープン以来通算2回目のベスト4進出で、さらに1968年以降のオープン化(プロ解禁)以降、日本人選手でグランドスラム2大会連続ベスト4は初めての快挙となった。
伊達さんはまた、大坂の全豪での勝ち上がり方や試合内容に目を見張る。
「2週間(という大会期間)を見据えながら、終盤にかけてピーキングすることを踏まえ大会に入れている。序盤こそ腰を気にする仕草がありましたけど、どうやって勝ち抜いていくかという準備もされてきている。プレーも安定していて、我慢するところと攻撃のメリハリもよくなっているんじゃないかと思いますね」
さらに、大坂の練習に帯同することもある日本テニス協会ナショナルコーチの吉川真司氏は、昨年の冬に取り組んだことが成果となって表れていると指摘する。
「(大坂が)フィジカルも技術も、気持ちの部分もすべて進化しようとしてやってきたことが、全豪での結果につながっています。彼女は本当の実力を手にしてきて、ここで勝つべくして勝っていると思います」
オフシーズンでのトレーニングの成果は、昨年よりさらにスマートになった大坂の姿からも察することができる。
「見た目でフィットしていることがわかるし、コート上で動ける量が増えています。動けるスピードも上がっているので、いいポジションに入って打てる。さらに、より動けるので、自分のいいボールを打てる回数も増えるのです。もともとあれだけのパワーとスピードを持つ選手で、その回数が増えれば、当然有利に立てます」
吉川コーチは、大坂の大きな武器であるショットの進化も挙げる。
「技術でいえば、フォアハンドが向上して、前よりもコートを広く使えるようになりました。狙った所へのスウィングの仕方が、彼女のイメージと一致してきている。フォアハンドが進化して、相手にはプレッシャーになっています。そして、安定しているバックハンド、攻撃力の高いフォアハンド、このバランスがよくなりました」
さらに、大坂の代名詞ともいえるビッグサーブの進化も指摘する。
「もともと彼女はすばらしいサーブを持っていますが、より大事な場面で、正確なトスが上がり、正確なファーストサーブが打てるようになりました。コースも厳しく狙いますし、それに伴うスピードも、サーブ自体の精度が上がっています。キープ力も上がっているし、大事なところで信じられるものがあるのかな」
大坂自身が目標としている”成熟度”に関しても、吉川コーチは今回の全豪での戦いで向上してきているという。
「(逆転勝ちした)3回戦や4回戦で示しています。目の前の1ポイントがどうとか、1ゲームがどうとかではなくて、試合をとおして相手から勝つ方法を探せるようになっている。そこに彼女の成熟、成長が見られます」
準決勝で大坂は、同じく初めて全豪ベスト4に進出してきた第7シードのカロリナ・プリスコバ(8位、チェコ)と対戦する。対戦成績は大坂の1勝2敗だが、直近の対戦では、昨年9月にWTA東京大会(パンパシフィックオープン)の決勝で対戦し敗れている。
「彼女(プリスコバ)のサーブを読めるのは稀なことで、自分にとってはとても難しい。(プリスコバが)ミスをたくさんすることはないですね」(大坂)
「(大坂の)フォアハンドは私にとって大きなプレッシャー。彼女はフォアサイドからゲームを展開してくるでしょう。1球でも多く返してできることを何でもしたいし、攻撃的にいきたい」(プリスコバ)
これまでのグランドスラムで大坂は、ハードコートのUSオープンでマッチ11勝2敗、最多勝利数を挙げていたが、全豪でも準決勝進出時点でマッチ11勝3敗となり、最多勝利数で並んだ。ハードコートでの戦いでは、たとえ対戦相手がトッププレーヤーであっても、自分のコンディションがよければ負けないという自信をより深めている。
「もちろんハードコートは、一番心地よくプレーできるコートです。皆さんがご存知のとおりです。ハードコートで誰と対戦するにしても、ある程度の自信があるのは確かです。」
(大坂)
また、大坂は、全豪準決勝進出時点でポイントが5810点になり、自己最高のWTAランキング3位以上になることが確定した。これまでの日本女子最高の伊達さんの4位を抜くことになる。さらに、日本男子最高の錦織圭の4位も抜くことになり、全豪直後の1月28づけの世界ランキングで日本史上最高位の選手となる。
「すばらしい結果だと受け止めています。本人がもっと上を狙っているのを知っていますから、満足することなく少しでも次のステージで、いいプレーできるような考えをもってやってほしいですね」
こう吉川コーチは期待をかけるが、大坂自身もまだまだ満足していないのが実に頼もしい。準決勝でのビッグサーバー同士の対決を大坂が制し、全豪初の決勝進出なるか、21歳の快進撃はまだまだ止まりそうにない。