パ・リーグはリーグ2連覇中のソフトバンクが今年も盤石の強さを発揮し、前半戦で早くも貯金「30」を積み上げた。一方、セ・リーグは2位以下が大接戦で、パ・リーグも2位・日本ハムが前半戦の終盤から怒涛の勢いを見せている。広島、ソフトバンクが首位を…

パ・リーグはリーグ2連覇中のソフトバンクが今年も盤石の強さを発揮し、前半戦で早くも貯金「30」を積み上げた。一方、セ・リーグは2位以下が大接戦で、パ・リーグも2位・日本ハムが前半戦の終盤から怒涛の勢いを見せている。広島、ソフトバンクが首位を走る要因とは何か――。前オリックス監督の森脇浩司氏に話を聞いた。

■森脇氏が見る広島&ホークス首位独走の要因とは

 プロ野球はオールスターゲームを終え、今日18日から後半戦がスタートする。前半戦では、セ・リーグは広島が2位・巨人と10ゲーム差をつけて首位を快走。パ・リーグはリーグ2連覇中のソフトバンクが今年も盤石の強さを発揮し、前半戦で早くも貯金「30」を積み上げた。一方、セ・リーグは2位以下が大接戦で、パ・リーグも2位・日本ハムが前半戦の終盤から怒涛の勢いを見せている。広島、ソフトバンクが首位を走る要因とは何か――。前オリックス監督の森脇浩司氏に話を聞いた。

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 セ・リーグは広島の勢いが止まらないまま前半戦を終えた。87試合を消化し52勝33敗2引き分け。2位・巨人までは10ゲーム差、貯金を「19」まで増やして折り返すことができ、非常に有利に後半戦をスタートさせることができるだろう。

 1991年以来、実に25年ぶりの優勝を目指す広島は投打においてバランスが取れている。投手では一本立ちした野村が前半戦だけで11勝。メジャーへ挑戦したエース・前田健太が抜けた穴は大きいと誰もが思っていたが、それ補って余りある素晴らしい活躍を見せている。そして昨年、最優秀防御率を獲得したジョンソンが9勝と今年も安定している。序盤はドラフト2位・ルーキーの横山弘樹が奮闘し、同1位の岡田もそれに負けじと先発ローテに加わった。先発陣は若い力が踏ん張りを見せ、黒田(6勝5敗)に掛かる負担を減らしたのが大きい。

 そして打線は文句の付けようがないほど充実している。チーム打率2割7分2厘、88本塁打、421得点、77盗塁は12球団NO1の成績だ。まさに理想的な打線と言えるだろう。

 田中、菊池、丸の1、2、3番は出塁率が高く機動力を駆使し、時には自ら決めにいく勝負強い打撃がある。中軸にはケガで離脱したがエルドレッド、新加入のルナ、そして復活を果たした新井が構える。そこに勢いのある鈴木、下水流、安部が存在し、代打には松山、岩本が控え、相手投手は気が抜けない。また、走者一塁からのシングルヒットで一、三塁を作る確率が昨年を大きく上回り、他チームとゲーム差以上に差を感じる部分でもある。

■現場、フロント一体の戦いができている広島

 前半戦は投打がしっかりとかみ合った。だが、1年間のペナントは山もあれば谷もある。広島はチーム全体に活気があり、ほぼ全ての選手たちが好調のまま前半戦を終えた。これらの選手たちが調子を落とした時にどのような対応を見せるのか。後半戦はここに注目してみたい。

 ただ、近年のカープを見るとフロント、現場が一体となってチーム作りを行っている。前述したようにエルドレッドが離脱したと同時にオフに獲得したルナがその穴をきっちりと埋めることに成功した。さらに不安のあったブルペン陣にはジャクソン、ヘーゲンズが加わり、勝負所となる7、8、9回を確立させた。シーズンを戦う上で非常にタイムリーな補強に成功したと言えるだろう。現場、フロントの一体感がこの成績に繋がっている。

 一方、パ・リーグに関しては戦前の予想通り。投打において圧倒的な戦力を誇るソフトバンクが貯金「30」と独走体勢を見せている。

 日本ハムも怒濤の勢いで球団新記録の15連勝をマークしたが、それでもホークスには6ゲーム差。打線の軸でもあった李大浩が退団したが柳田、内川、松田は健在。安定した打撃を見せる中村、昨年はケガで不振だった長谷川が本来の打撃を見せるなど強力打線は不変といったところか。交流戦で大活躍の城所、格段に打撃が成長した今宮など隙がない打線だ。

 投手陣も日本球界に復帰した和田が9勝、今やエース級の活躍を見せる武田も9勝と左右の軸が確立。東浜、千賀、バンデンハークら挙げればキリがないほど先発陣が充実している。防御率は12球団トップの2.93。打撃だけではなくバッテリーを含めた守りの野球もしっかりと出来ている。

■ソフトバンクと他球団の最大の差は…

 勝率は驚異の6割9分2里。一発勝負のクライマックスシリーズ(CS)なら勝機は見いだせるが、今のホークスと対等に渡り合うのは簡単ではない。一時より差は詰まったとはいえるが、この差の大きな要因はホークスは9イニングを27アウトで終える確率が最も高く、下位チームは9イニング33~36アウトの試合運びであったということ、更にはホークス強しと認めながら打つ手を打たずに負けたゲームが多くあったことは残念でならない。

 細かくは触れないが、その日のゲームをどう戦うか、同時にペナントをどう戦うか、この繰り返しの中、4月、5月には必要な戦略、戦術、そして餌まきがもっともっとあったように思う。

 セ・パともに首位チームが突き抜けてしまったが、過去には10ゲーム差を逆転しペナントを制したチームを何度も見てきた。各球団とも後半戦に向け新たな策を立て巻き返しを狙っているはずだ。独走状態に待ったをかけるチームが現れればプロ野球ファンの方々はより楽しみが増えるだろう。「10・19」、「10・8」、「10・2」、過去に見た歴史的一戦が今年のペナントレースの最後に実現されることをファンの方々と共に期待し、一挙手、一投足に注目して後半戦を見ていきたいと思う。

◇森脇浩司(もりわき・ひろし)

1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。55歳。現役時代は近鉄、広島、南海でプレー。ダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、06年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。11年に巨人の2軍内野守備走塁コーチ。12年からオリックスでチーフ野手兼内野守備走塁コーチを務め、同年9月に岡田監督の休養に伴い代行監督として指揮し、翌年に監督就任。178センチ、78キロ。右投右打。