試合後、改めて勝利を噛み締めた錦織圭 3時間48分に及んだ激戦を制した瞬間、錦織圭は、両手と両ひざをテニスコートにつけて、まるでテニスの神様に祈りを捧げるかのように首を垂れた。その姿は、いかに勝利まで辿り着くのが難しかったかを象徴しているよ…



試合後、改めて勝利を噛み締めた錦織圭

 3時間48分に及んだ激戦を制した瞬間、錦織圭は、両手と両ひざをテニスコートにつけて、まるでテニスの神様に祈りを捧げるかのように首を垂れた。その姿は、いかに勝利まで辿り着くのが難しかったかを象徴しているように見えた--。

 第8シードの錦織(ATPランキング9位、1月14日づけ/以下同)は、全豪オープン2回戦で、イボ・カロビッチ(69位、クロアチア)を、6-3、7-6(8-6)、5-7、5-7、7-6(10-7)で破って2年ぶりに3回戦に進出した。

 際どいゲーム展開で、最後までどちらが勝つかわからなかった。もともとリターンがそれほどよくないカロビッチに対して、錦織は、ファーストサーブでしっかりコースを突き、カロビッチの甘くなったリターンを、3球目のアタックで仕留めた。

 また、身長211cmから放たれるカロビッチの高速サーブのコースを読み、「いい感じでリターンはできていた」錦織が2セットアップとした。

 第3セット第11ゲームでカロビッチは、錦織のセカンドサーブをフォアリターンで叩いたり、バックのリターンダッシュをするなど、錦織のミスを誘ってラブゲームでブレーク。このワンブレークを生かして第3セットを奪った。

 さらに、第4セット第11ゲームでも、バックのダウンザラインへのパッシングショットやリターンエースを決めて、再びラブゲームでブレーク。カロビッチが第4セットを取って、2セットオールとなった。

 ファイナルセットでは、錦織が先にピンチを迎え、4-4。錦織サーブの第9ゲームで0-40になった時には、錦織は「負けたと思いました」と敗戦を覚悟した。

「嫌な感じはもちろんありました。ファーストサーブが入ってくれれば、可能性はまだあるんじゃないかと多少は思いました。1ポイントずつというか、サーブにすごく集中しました」

 こう語った錦織が、5ポイント連続でカロビッチのミスを引き出してキープに成功すると、お互いすべてサービスキープをしてタイブレークに突入した。

 今年の全豪から、ファイナルセットで6-6になった場合、10ポイントマッチタイブレークで決着がつけられる。タイブレークでも一進一退の攻防が続き、錦織はなかなかカロビッチを引き離せない。

「リターンは返しまくっていたのに、(カルロビッチから)スーパーボレーが返ってきた。もう1点が取れないという嫌な展開でした。とくに、6-6のポイントでは決め切れなかった部分があった」

 錦織は、フォアの逆クロスを思い切って打って前へ出たが、カロビッチの読みが当たってバックのダウンザラインへのパッシングショットが決まり、錦織の6-7となった。しかし、ここからカロビッチのミスが続き、「まだチャンスはあると思っていたし、サーブの読みさえ当たれば確実にチャンスは来ると思っていた」と言う錦織が4ポイント連続で奪って決着をつけ、「勝ち切ったというか、自分から勝ち取ったスーパータイブレーク(※)」と、激闘を制した。
※10ポイントマッチタイブレークのこと

 錦織を最後まで苦しめたのは、やはりカロビッチのサーブだった。ファーストサーブの確率は75%、最高時速は219km、平均速度204km。しかも、カルロビッチのセカンドサーブの平均速度は時速189kmと、錦織のファーストサーブの平均速度の時速171kmより速かった。結局、59本のサービスエースを含む89本のウィナーを錦織にたたき込んだ。

 そんなカロビッチの猛攻撃のなかでも、錦織が最後まで崩れなかった要因のひとつとして、サーブの出来のよさが挙げられる。錦織のファーストサーブは確率77%、ファーストサーブでのポイント獲得率79%、セカンドサーブでのポイント獲得率70%、サービスエースが9本だった。

「サーブゲームは比較的よかった。3セット目4セット目で落としたあのゲームだけ、ファーストが入らなくて、セカンドを叩かれたり、リターンダッシュされたり……。やっぱりファーストが入るか入らないかでだいぶ違うので、そこはすごく意識した。最初から入れにいこうというか、確率は上げようと思っていました」

 また、ネットプレーも果敢に出て、51回出て36回成功させ(71%)、なかでもサーブ&ボレーは38回出て28回成功させている(74%)。

 結局、錦織は、フォアウィナー32本を含む69本のウィナーを決める一方で、ミスを17本に抑えて自分から崩れる要因を最小限に抑えた。

 振り返れば、開幕週のATPブリスベン大会初優勝の原動力となったのも、錦織の好調なファーストサーブだった。特筆すべきは、ファーストサーブでのポイント獲得率が、全試合で70%以上だったことだ。

 錦織に帯同するダンテ・ボッティーニコーチは、次のようにサーブのよさを語る。

「サーブは、ずっと長い間課題にしてきましたが、オフシーズンで調整がうまくいきました。とくに、トスをより高くするように話しました。まっすぐ高く、そして前方に。高い打点で捕らえるというより、前でボールを捕らえることで、ネットの上を通過させることができ、それがとてもうまくいっています。同時に、(軸足となる左足に右足をすり寄せず、両足スタンスのまま)両ひざの曲げ伸ばしを使ってジャンプして打つのです」

 3回戦で錦織は、第32シードのフィリップ・コールシュライバー(34位、ドイツ)をフルセットで破ったジョアン・ソウザ(44位、ポルトガル)と対戦する。対戦成績は、錦織の1勝1敗で、グランドスラムでは初対決となる。

「もうちょっとストローク戦をしたいですね。ラリー戦で自信がついてくれば、さらに気持ちがよくなると思う」と言う錦織。もっとも得意とするストローク戦で本領を発揮して、さらに調子を上向きにできるか。