よくも悪くも、面白い試合だった。手放しに称賛するつもりはないが、日本のグループリーグ3試合のなかでは、ベストゲームだったことは間違いない。 アジアカップのグループリーグ第3戦。日本はウズベキスタンとの全勝対決を2-1で制した。3連勝の…

 よくも悪くも、面白い試合だった。手放しに称賛するつもりはないが、日本のグループリーグ3試合のなかでは、ベストゲームだったことは間違いない。

 アジアカップのグループリーグ第3戦。日本はウズベキスタンとの全勝対決を2-1で制した。3連勝のグループ首位で、決勝トーナメント進出である。

 2試合を終えた時点で、すでに決勝トーナメント進出が決まっていた日本は、第2戦から大幅に先発メンバーを変更した。初戦のトルクメニスタン戦から第2戦のオマーン戦では、ふたりしか入れ替わらなかったが、第2戦から第3戦では、10人も入れ替わった。

 DF槙野智章(浦和レッズ)、FW北川航也(清水エスパルス)以外の9人は、今大会初先発。第2戦で途中出場しているMF伊東純也(柏レイソル)、FW武藤嘉紀(ニューカッスル/イングランド)も除けば、残る7人は今大会初出場である。選手個々には、一緒にプレーした経験がある選手はいても、実質的には初めて組まれた、ぶっつけ本番のチームだったと言っていい。

 加えて、そのほとんどを占めるJリーグ組にとっては、昨年12月1日のJ1最終節、あるいは、12月9日の天皇杯決勝以来の公式戦。しかも、対戦相手はグループリーグ最強の敵、ウズベキスタンである。

 これまでの2試合を見る限り、”主力組”でさえ、およそほめられた内容の試合ができていないのだから、”控え組”では……。そんな不安がなかったわけではない。というより、大きかった。

 ところが、フタを開けてみれば、ようやく出場機会を与えられた選手たちが、これまでのうっ憤を晴らすかのように生き生きとプレーした。こと攻撃に関しては、過去2試合よりも明らかにチームとしての機能性が高く、そのうえ、選手それぞれの特長も発揮されていた。ゲームキャプテンを務めたMF青山敏弘(サンフレッチェ広島)は、「組織のうえに個を出せた」と振り返る。



ウズベキスタンに2-1と勝利した森保Jの

「控え組」

 立ち上がりこそ、試合開始から1分経たずにピンチを迎えるなど、芳(かんば)しいものではなかったものの、10分を過ぎたあたりから、徐々に試合の流れをたぐり寄せると、「チームとして機能し始めて、連動して(攻撃の)形を作れた」と青山。時間の経過とともに、複数の選手が連係して、相手DFラインを突破するシーンを増やした。

 青山曰く、「ボールの感覚も違うし、久しぶりの公式戦だったので(苦笑)」、サイドチェンジのボールが長くなりすぎるなど、簡単なミスも生まれたが、「試合のなかで(互いの連係を)合わせていった。後半は自分たちらしくボールを動かせた」という。

 前半40分にカウンターから先制されはしたが、わずか3分後に武藤のゴールで落ち着くと、後半13分にボランチを務めたDF塩谷司(アルアイン/UAE)が、豪快なミドルシュートを叩き込んで逆転。終盤はウズベキスタンの反攻を危なげなくはね返し続け、試合を終えた。

「僕らはチャンス(出場機会)をもらえず、ウズウズしていたのを(この試合に)ぶつけられた」

 試合後、DF佐々木翔(サンフレッチェ広島)がそう話していたように、この試合の勝因は探れば、おそらく”控え組の意地”に尽きるのだろう。

 まずはチームの一員として、2連勝できているいい流れを止めたくない。彼らにそんな気持ちは、当然あっただろうが、それと同時に、ここで下手な試合をすれば、控え組という自分たちの立場を一層強めることになりかねない。そんな危機感も相当に強かったはずだ。DF室屋成(FC東京)が語る。

「負けるわけにはいかなかった。メンバーが変わったなかで、絶対に勝ってやると思っていた」

 その結果が、グループリーグのベストゲームと言うべき試合である。

 とはいえ、この試合を単体で評価することには、あまり意味がない。

 すでに決勝トーナメント進出が決まっており、選手に大きなプレッシャーがかからなかったこと。そして、明らかに力が劣るトルクメニスタンやオマーンに比べると、”普通に”戦ってくれるウズベキスタンは、日本にとって戦いやすい相手だったこと。この試合に、そうした側面があったのは事実だ。

 冴えない主力組と、がんばった控え組。そんな色分けは、フェアな見方とは言えないし、意味もない。

 重要なのは、今大会で優勝するために7試合を戦うなかで、この試合にどんな役割を持たせられるのか、だ。ただ単に、「主力組を1試合休ませられた」だけで終わってしまえば、あまりにもったいない。

 そこで注目すべきは、今後の選手起用。この試合をきっかけに、主力組と控え組の垣根が取り払われ、選手を入れ替えながら、決勝までの4試合を戦っていけるか否か、である。

 もちろん、メンバーを固定していけば、チームとしての成熟は早く、一定の結果を出すには手っ取り早いだろう。実際、ウズベキスタン戦にしても、必ずしも全部が全部、いい内容の試合だったわけではない。拙(つたな)い守備の対応でピンチを招くこともあったし、味方との連係を意識しすぎてチャンスをフイにすることもあった。

 しかし、Jリーグ組を中心に編成されたチームは、アジアトップレベルの相手に対し、試合のなかで試行錯誤しながら、機能性を高めていった。貴重な90分間のなかで、チームが少しずつ成熟していく様は、見ていて単純に面白かった。

 もちろん、面白さとは裏腹に、危なっかしさもある。大きくメンバーを入れ替えたとして、すべての試合がウズベキスタン戦のようにうまくいくわけではない。試行錯誤の末、何もできずに終わってしまうこともあるだろう。

 だが、新チームを立ち上げてまだ4カ月ほどである。危なっかしさも含めて、もっとこういう試合があっていいし、見てみたいと思うのだが、森保一監督の判断やいかに。