ウズベキスタンに2-1で逆転勝ち。日本は塩谷司(アルアイン)の逆転ゴールを何とか守り切り、決勝トーナメント1回戦で、オーストラリアではなくサウジアラビアと対戦することになった。内容もまずまずで、少なくとも第1戦、第2戦よりよかった。バ…

 ウズベキスタンに2-1で逆転勝ち。日本は塩谷司(アルアイン)の逆転ゴールを何とか守り切り、決勝トーナメント1回戦で、オーストラリアではなくサウジアラビアと対戦することになった。内容もまずまずで、少なくとも第1戦、第2戦よりよかった。バランスのいい、スッキリとしたシンプルなサッカーを展開した。

 もっとも目を引いたのは右ウイングの伊東純也(柏レイソル)だった。1、2戦に先発した堂安律(フローニンゲン)が、早い段階から、格闘技で言うところの左半身の態勢で、真ん中に入り込んでくるのに対し、伊東は縦に突いて出た。スピード豊かな推進力を活かし、右の奥深い位置に侵入。数多くのチャンスをつかんだ。



ウズベキスタン戦で縦への突破によりチャンスをつくっていた伊東純也

 縦に強い右利きの右ウイングは世界的にも希少。歴代の日本代表でもこれといった選手はいない。長谷川健太、福田正博がいたオフトジャパンの時代にまで遡ることになる。ロシアW杯を戦った西野ジャパンの右ウイング、原口元気(ハノーファー)も左派だ。森保ジャパンではそこに戻ってプレーしている。

 この日、先発を飾った乾貴士(ベティス)、故障でメンバーを外れた中島翔哉(ポルティモネンセ)も右利きながら左派だ。ザックジャパン時代に右でプレーする機会が多かった岡崎慎司(レスター)にしても、動きは左の方が滑らかそうだった。

 左派は多いが右派は少ない。左派の中島がロシアW杯のメンバーから落選した理由でもある。反対に、本田圭佑(メルボルン・ビクトリー)が選出された理由は右ができたからだ。左利きの右ウイング。堂安はこのスタイルになるが、左半身の態勢が本田よりキツい。南アフリカW杯に臨んだ岡田ジャパンで、最後に本田とスタメンを争うことになった中村俊輔(ジュビロ磐田)に近い。

 典型的な右ウイングとはいえ、いそうでいないタイプ。その伊東が縦に引っ張ったことで、少しばかり楽になったのが右SBの室屋成(FC東京)だ。

 前半40分、ウズベキスタンに先制ゴールを奪われたその3分後だった。右のタッチライン際で、身体を巧く回転させながら、ドリブルで鋭く縦に突いて出て、深い位置からマイナス気味の折り返しを決めた。

 これを武藤嘉紀(ニューカッスル)がヘディングで合わせ、早い段階で追いついたことがこの試合のポイントになる。格下相手に大苦戦した第1戦、第2戦。この試合も先制点を奪われ、嫌なムードになりかけた時間帯だった。流れを変える価値あるゴールと言えた。塩谷が逆転弾を決めた後半14分前後は、すっかり日本のペースで推移していた。

 森保一監督は2戦目のオマーン戦から先発10人を入れ替えて、このウズベキスタン戦に臨んだ。ただひとり、スタメンで2戦連続出場を飾った北川航也(清水エスパルス)も本来の扱いはサブ。オマーン戦も後半12分にベンチに下がっていた。悪く言えば代表2軍だ。

 にもかかわらず、冒頭で述べたように、こちらの11人の方がよく見えた。唯一の難点は右に比べ、左の乾・佐々木翔(サンフレッチェ広島)の攻撃が弱かったことだが、それでも左右のバランスはこれまでより取れていた。

 もしウズベキスタンと第1戦、第2戦で戦っていたら、勝利を飾ることができていただろうか。怪しい限りである。

 注目されるのは4戦目、サウジアラビア戦のスタメンだ。森保監督はおそらく、当初のメンバーに戻すのだろう。もったいない気がしてならない。この日のスタメン11人が積んだ経験を、次戦でまったく活用しない手はないのだ。

 1戦目、2戦目は限られた選手で戦い、3戦目を過去2戦にあまり関わっていない選手で臨む。そして4戦目で、再び1、2戦のメンバーに戻して戦ったのは、ロシアW杯の西野朗監督だ。その時コーチだった森保現監督が同じ轍を踏もうとしているのだとすれば、次につながらない試合になる。

 3戦目と4戦目をどう融合させるか。関係性を持たせるか。もし、4戦目でスタメンを元に戻せば、続く5戦目で再び、彼らはエネルギー切れを起こす。6戦目(準決勝)は、どうするつもりなのか。またサブで戦うのか。

 森保ジャパンは西野ジャパンとは異なり、優勝を狙っている。同じやり方では7試合目は戦えない。

 見習うべきは敗れたウズベキスタンの指揮官、エクトル・クーペルの戦い方だ。バレンシアを2シーズン連続(99-00、00-01シーズン)でチャンピオンズリーグ決勝まで導いたアルゼンチン人監督は、今回のアジアカップでメンバーを毎試合、少しずついじっている。

 後半20分、ドストンベク・ハムダモフに代わりピッチに姿を現したアジスベク・トゥルグンボエフは、フィールドプレーヤー20人の中で、19人目に出場した選手となった。3戦を終えて出場していない選手は、来季からJ2レノファ山口でプレーするドストンベック・トゥルスノフただひとりとなった。

 あるいはトゥルスノフは故障中なのかもしれないが、それはともかく、数的には、20人全員を使った森保采配と、19人を使ったクーペル采配とは拮抗した関係にある。だが、森保采配がAかBの二択であるのに対し、クーペル采配は漸次的だ。グラデーションが掛かっているかのように、前後の関連性が見て取れる采配だ。4戦目(オーストラリア戦)に誰がスタメン出場を飾っても、不思議のない状態にある。

 サウジアラビア戦。「全取っ替え」は止めるべきである。ウズベキスタン戦に出場したフィールドプレーヤー10人中、半分程度は残すべきだ。具体的には、この日先発したCB2人(三浦弦太/ガンバ大阪、槙野智章/浦和レッズ)、SB2人(室屋、佐々木)、守備的MF2人(塩谷、青山敏弘/サンフレッチェ広島)、両ウイングの2人(乾、伊東)、そして2トップの2人(北川、武藤)のうちのどちらか、である。

 28日間で7試合を戦うアジアカップの道のりは、31日間で7試合を戦うW杯より厳しい。試合間隔は短い。19日間で6試合を戦う五輪の監督を兼ねるならば、なおのこと意識すべきだろう。「総力戦」。この日の試合後の会見でも口にした言葉だが、森保式および西野式総力戦は4、5試合で限界を迎える”弱者の発想”だ。

 さらに森保監督の場合、交代のタイミングも相変わらず遅い。この日、初めて行なった交代(乾→原口)は、ウズベキスタンのクーペルが3人の交代をすべて終えた5分後という遅さだった。そして、3度行なった交代の質も悪かった。

 1戦目、2戦目では交代枠(3人)さえフルに使い切らなかった。これを総力戦と認めるわけにはいかない。森保監督には、7試合目からの逆算に基づく計画性に富んだ総力戦をしてほしいものである。

 ウズベキスタン戦で、思いがけずつかんだこのいい流れを、日本はサウジアラビア戦、さらには準々決勝に活かすことができるだろうか。