一見、最悪な事態だが、実は絶好の機会かもしれない。ひらたく言えば、ピンチはチャンス--。 1月13日に行なわれるアジアカップ第2戦のオマーン戦。絶対的なエース、大迫勇也(ブレーメン)に欠場の危機が生まれている。ロシアW杯以来の代表復帰に気…
一見、最悪な事態だが、実は絶好の機会かもしれない。ひらたく言えば、ピンチはチャンス--。
1月13日に行なわれるアジアカップ第2戦のオマーン戦。絶対的なエース、大迫勇也(ブレーメン)に欠場の危機が生まれている。
ロシアW杯以来の代表復帰に気合の入る武藤嘉紀
初戦のトルクメニスタン戦で2ゴールを奪ったように、大迫は得点源として、また、2列目の南野拓実(ザルツブルク)や堂安律(フローニンゲン)を生かす存在としても欠かせない大黒柱だが、右臀部の痛みのためにオマーン戦前々日、前日のトレーニングを回避したのだ。森保一監督も前日会見で「明日の試合は難しいと思います」と認めている。
もっとも、大迫はドイツから帰国し、昨年末の国内合宿に合流した時点ですでに同箇所を痛めており、別メニュー調整を続けていた。そのため、いずれにしても優勝を目指すうえで、途中交代も含めて休ませる必要があった。
その点で痛恨だったのが、トルクメニスタン戦の終盤だ。「もう少し展開に余裕があれば代えていたと思います」という指揮官の言葉を聞けば、途中交代の考えもあったようだが、3−2と1点差に詰め寄られたため、下げられなかったということだろう。
どこかで休ませたいが、簡単に決断できないほど、今の大迫の存在は大きい。
それゆえ、オマーン戦での”強制的な欠場”は、この先の戦いを見据えれば、負傷箇所を回復させるためにも、代わりの選手にチャンスを与えるためにも、絶好の機会と言えるのだ。
「理想は3人くらいずつ代えていくこと。そうすれば、全員のコンディションや試合勘が上がった状態で、ベスト8、ベスト4に入っていける」
そう語ったのは、今回と同じセントラル開催だった3年前のリオ五輪アジア最終予選でチームを優勝へと導いた手倉森誠監督(現V・ファーレン長崎)である。実際、同大会では3〜5人ほど入れ替えながら、総力戦でアジアの頂点へと駆け上がった。
反対に、4年前のアジアカップでは日本は全試合同じスタメンで臨み、ベスト8であえなく散った。また、昨夏のロシア・ワールドカップでは1、2戦目は同じメンバーで戦い、3戦目で一気に先発6人を入れ替えたが、メンバーの半数以上が代われば連係面で支障をきたすのも当然だ。結果、サブ組にプレー経験を積ませる以上でも、以下でもないゲームになってしまった。
理想は3人程度--。ひとりは、言うまでもなく、大迫の代わりとして武藤嘉紀(ニューカッスル・ユナイテッド)か、北川航也(清水エスパルス)のどちらか。残りふたりは、遠藤航(シント・トロイデン)と青山敏弘(サンフレッチェ広島)のボランチはどうか。
オマーンはウズベキスタンとの初戦に4−2−3−1の布陣で臨んでいる。キーマンはトップ下の10番モフシン・アル・ハルディと、ボランチでキャプテンの12番アハメド・アル・ムハイジリ(今大会ではアル・ムハイジリと登録されているが、2012年11月の日本戦でゴールを奪ったアハメド・ムバラクと同一選手)だ。
広範囲に動き回ってボールに関わり、鋭いパスを繰り出すアル・ハルディのマーク役には、所属するベルギーのシント・トロイデンで相手のキーマンを潰す役割をこなしている遠藤が打ってつけの存在だろう。
より攻撃のビルドアップに関わるアル・ムハイジリに対しては、青山がアプローチしたい。オマーンの特徴として、カウンターの際に人数をかけて迫力を持って攻め上がってくることが挙げられるが、逆に、カウンターのカウンターを繰り出せば、大きなチャンスにもなる。その際、青山の縦パスはビッグチャンスを呼び込めるだろう。
遠藤と青山のボランチ起用にともない、トルクメニスタン戦でボランチを務めた冨安健洋(シント・トロイデン)は本来のセンターバックで起用してもいい。もうひとりのボランチ、柴崎岳(ヘタフェ)の調子が万全ではなかっただけに、ここで遠藤や青山にプレー機会を与えておきたい。
もうひとり、オマーンで警戒すべき選手を挙げるなら、11番をつけた右サイドバックのサード・アル・ムハイニだ。その背番号が表すように、かなり攻撃的なサイドバックだが、対峙するのは日本の左サイド、原口元気(ハノーファー)と長友佑都(ガラタサライ)である。走力に優れ、経験者のふたりなら、簡単に後手に回ることはないはずだ。
一方、「他の選手はこのチャンスを掴まなくてはいけない」というキャプテンの吉田麻也(サウサンプトン)の言葉がより当てはまるのが、大迫の代わりを務める選手だ。
ロシア・ワールドカップのポーランド戦で得点のチャンスを逃し、それ以来の代表となる武藤か、トルクメニスタン戦で途中出場を果たしたが、ボールを失い、失点の要因となった北川か。どちらが出るにしても、そのリベンジの想いが彼らを駆り立てる。
懸念されるコンディションに関しても、1月3日のUAE入りから10日が経過し、国内組と海外組のコンディションのバラツキは整えられてきた。UAEで合流して2日間のオフを過ごした吉田も、「練習を初めて1週間弱。この間、割と暑いなかでやったということもあって、気候には慣れてきたと思います」と力強く言う。
かつてJリーグでも指揮を執った敵将ピム・ファーベーク監督は、「勝つために日本のあらゆる弱点を突いていくつもりだ。昨日までに何本かビデオを見て、トレーニングに落とし込んだ」と自信をのぞかせている。オマーンはUAEの隣国だから大量のサポーターも詰めかけるだろう。不気味なのは間違いないが、トルクメニスタン戦とは打って変わって賢い戦い方で勝ち点3を掴み取り、ここでグループステージ突破を決めたい。