アジア王者を決めるアジアカップ(1月5日~2月1日/UAE)が開幕した。無論、期待するのは、日本代表の2大会ぶり5度目の優勝である。だが、アジアの戦いはそれほど簡単ではない。実際、日本にとっては嫌なデータもある。そんなデータも含めて、…

 アジア王者を決めるアジアカップ(1月5日~2月1日/UAE)が開幕した。無論、期待するのは、日本代表の2大会ぶり5度目の優勝である。だが、アジアの戦いはそれほど簡単ではない。実際、日本にとっては嫌なデータもある。そんなデータも含めて、アジアカップにおける日本代表の”ジンクス”を紹介していきたい。



2011年大会で4度目の優勝を飾った日本代表photo by AFP/AFLO

◆ジンクスその1:日本人監督では勝てない
 日本はアジアカップで過去4度優勝しているが、その際、チームの指揮を執っていたのは、いずれも外国人監督だった。初優勝を飾った1992年大会はハンス・オフト監督。以降、2000年大会がフィリップ・トルシエ監督、2004年大会がジーコ監督、そして2011年大会がアルベルト・ザッケローニ監督だった。

 一方、日本人監督が指揮官だったことは過去2度あるが、山口芳忠監督がチームを率いた1988年大会は1次ラウンド(グループリーグ)で敗退。加茂周監督が采配をふるった1996年大会も準々決勝で敗れ去っている。

 今回、日本代表の指揮を執るのは、日本人の森保一監督。すなわち、”日本人監督では優勝できない”というジンクスに挑むこととなる。

 ちなみに、森保監督は現役時代、1992年大会に出場。日本の初優勝に貢献した。これまで、選手、監督の両方でアジアカップを制した人物はいないため、森保監督はこの”快挙”にもチャレンジすることになる。

【アジアカップにおける日本代表の成績】
1988年=1次ラウンド(山口芳忠)
1992年=優勝(ハンス・オフト)
1996年=ベスト8(加茂周)
2000年=優勝(フィリップ・トルシエ)
2004年=優勝(ジーコ)
2007年=4位(イビツァ・オシム)
2011年=優勝(アルベルト・ザッケローニ)
2015年=ベスト8(ハビエル・アギーレ)
※( )内は監督名

◆ジンクスその2:アジアカップV逸の呪い
 アジアカップで優勝を逃した日本代表監督は、これまでに4人いる。そのうち、そもそもB代表で臨んだ1988年大会の山口監督以外は、実はその後、数奇な運命をたどることになる。

 まず、1996年大会の指揮官だった加茂監督は、1998年フランスW杯のアジア最終予選中に成績不振で電撃解任された。

 2007年大会で4位に終わったイビツァ・オシム監督は、その4カ月後に急性脳梗塞で緊急入院。2010年南アフリカW杯予選を前にして、不運にも代表監督の座から退くことになった。

 そして、2015年大会にチームを率いたハビエル・アギーレ監督は、直後にサラゴサ時代の八百長疑惑が発覚。無念にも代表監督から解任されている。

 つまり、アジアW杯で優勝できなければ、次のW杯はもちろん、W杯予選さえ完遂できずに代表監督の座から退く可能性が高い、ということ。森保監督にとっては、プレッシャーのかかる”ジンクス”と言えるかもしれない。

◆ジンクスその3:初戦は負けなし
 ここからは、日本にとってポジティブなデータを綴っていく。

 日本代表は、これまでに出場したアジアカップ全8大会で初戦に敗れたことは一度もない。B代表で臨んだ1988年大会でさえ、強豪イランと対戦した初戦は0-0で引き分けている。

 このデータからして、トルクメニスタンと対戦する初戦(1月9日)、日本が負けることはほぼない。そういう意味では、破壊力のある攻撃陣によるゴールラッシュが見られることを期待したい。

 なお、アジアカップの歴史において、初戦で黒星を喫した国が栄冠を手にしたことはない。頂点を目指すうえでは、初戦の勝ち点確保は必須だ。

【アジアカップにおける日本代表の初戦成績】
1988年=日本0△0イラン(カタール)
1992年=日本0△0UAE(日本)
1996年=日本2○1シリア(UAE)
2000年=日本4○1サウジアラビア(レバノン)
2004年=日本1○0オマーン(中国)
2007年=日本1△1カタール(ベトナム※)
2011年=日本1△1ヨルダン(カタール)
2015年=日本4○0パレスチナ(オーストラリア)
※( )内は開催国、2007年は東南アジア4カ国共催。

◆ジンクスその4:幸運を呼ぶオマーン
 今回のアジアカップで、日本はグループリーグでウズベキスタン、オマーン、トルクメニスタンと同組となった。そのうち、オマーンと同組になったことはかなりの幸運だ。

 というのも、オマーンは今回でアジアカップ4度目の出場となるが、過去3度の大会において、同国とグループリーグで同組となった国から王者が生まれているのだ。2004年の日本、2007年のイラク、2015年のオーストラリアがそう。日本にとっては、非常に心強いデータとなる。

 ちなみに、日本はオマーンと過去に11回試合をしたことがあり、8勝3分と圧倒している。

◆シンクスその5:7大会連続グループリーグ首位通過
 日本はA代表で参加した1992年アジアカップ以降、7大会連続でグループリーグを首位通過している。さらに現在、グループリーグでは21試合無敗記録を継続中。今回も記録更新が見込まれる。

【アジアカップにおける日本代表のグループリーグ戦績】
1988年=最下位※(1分3敗)
1992年=首位通過(1勝2分)
1996年=首位通過(3勝)
2000年=首位通過(2勝1分)
2004年=首位通過(2勝1分)
2007年=首位通過(2勝1分)
2011年=首位通過(2勝1分)
2015年=首位通過(3勝)
※1988年大会、日本はB代表での出場

◆ジンクスその6:優勝のサイクル
 2018年ロシアW杯では戦前の予想を覆(くつがえ)して、見事に決勝トーナメント進出を果たした日本。アジアカップに向けて、これは吉兆となる。なにしろ、W杯で決勝トーナメントに進出したあとのアジアカップでは、常に優勝しているからだ。

・2002年日韓共催W杯ベスト16→2004年アジアカップ優勝
・2010年南アフリカW杯ベスト16→2011年アジアカップ優勝

 また、日本は初めて出場した1988年大会以降、2大会連続で優勝を逃したことがない。そのため、前回ベスト8にとどまった日本が優勝する確率はかなり高い。

◆ジンクスその7:大迫勇也「アジア無双」
 日本代表のエースFW大迫勇也。ロシアW杯でも鮮やかなゴールを決めて脚光を浴びたが、アジアカップではそれ以上の活躍が期待される。

 なぜなら、大迫の出場試合(国際Aマッチ)で対戦国がアジアだった場合、日本は一度も負けたことがないからだ(12戦8勝4分)。加えて、大迫は代表通算10得点を挙げているが、そのうち6点をアジア勢から奪取。まさしく”アジアキラー”と言える。

 さらにひとつ補足しておくと、2018年W杯アジア最終予選では、ホームのUAE戦とアウェーのサウジアラビア戦とふたつの黒星を喫しているが、ともに大迫は不在だった。

 とにかく、日本代表に大迫がいれば、アジア相手には負けない――これこそ”半端ない”ジンクスだ。

【大迫勇也出場試合における日本vsアジア勢の成績】
2013年=日本3△3中国(東アジア杯/韓国)
2013年=日本3○2オーストラリア(東アジア杯/韓国)
2015年=日本5○1ウズベキスタン(親善試合/日本)
2015年=日本4○0イラク(親善試合/日本)
2015年=日本0△0シンガポール(W杯予選/日本)
2016年=日本4○0オマーン(親善試合/日本)
2016年=日本2○1サウジアラビア(W杯予選/日本)
2017年=日本2○0UAE(W杯予選/UAE)
2017年=日本1△1シリア(親善試合/日本)
2017年=日本1△1イラク(W杯予選/イラン)
2017年=日本2○0オーストラリア(W杯予選/日本)
2018年=日本4○0キルギス(親善試合/日本)
※( )内は大会名/開催国