12日に新潟で開幕した第40回日米大学野球選手権は、侍ジャパン大学代表が2勝して、舞台を東京へと移した。わずか2戦を戦っただけではあるが、選手の起用法を巡り、日本とアメリカの野球観の違いが見える。■役割分担に応じた継投をした日本と球数制限で…

12日に新潟で開幕した第40回日米大学野球選手権は、侍ジャパン大学代表が2勝して、舞台を東京へと移した。わずか2戦を戦っただけではあるが、選手の起用法を巡り、日本とアメリカの野球観の違いが見える。

■役割分担に応じた継投をした日本と球数制限で区切ったアメリカ

 12日に新潟で開幕した第40回日米大学野球選手権は、侍ジャパン大学代表が2勝して、舞台を東京へと移した。わずか2戦を戦っただけではあるが、選手の起用法を巡り、日本とアメリカの野球観の違いが見える。

 日本は第1戦、第2戦ともに、12奪三振と好投した佐々木千隼投手(桜美林大)と柳裕也投手(明治大)の2人を7回終了で降板させた。その後は、中継ぎ投手をはさみ、抑えの田村伊知郎(立教大)につなぐという勝利パターンで2試合連続白星。先発→リリーフ→抑えという役割分担がきっちりされた継投で、合理的な起用法だ。

 一方、米国代表は事前に各投手の投球数を決定し、そのスケジュール通りの起用を実施している。初戦の先発ホウクは、4回終了まで味方失策で出塁を許しただけの準パーフェクト投球で、要した球数は37球。試合前は4回で降板のスケジュールだったが、球数が予定の60球に達しなかったため、5回のマウンドに戻り、ここで2失点した。

 第2戦の先発だったファエドは、4回を投げて2安打6奪三振1四球無失点と好投したが、予定されていたイニング(4回)で予定されていた球数(60球)に近い56球を投げたために降板。5回から登板した2番手ピーターソンが失点し、米国代表は2連敗を喫した。ファエドがテンポよく投げていただけに、そのまま続投していたら違った試合展開になっていたかもしれない。

■米代表ホートン監督、2連敗に渋い表情も「事前に投げるイニング数が決まっている」

 試合後、ファエド降板のタイミングについて質問を受けた米国代表のホートン監督は、「彼の調子うんぬんではなく、最初から決められていたスケジュールに沿っただけ」と説明。「我々は長いシーズンを戦い終えたばかりで、ファエドは昨年62イニング投げ、今年は105イニング投げている。彼の大学(フロリダ大)の監督から投球回数について指示も来ている。ファエドだけではなく、他の投手も全員、事前に投げるイニング数が決まっているので、それを実施するだけ。これがアメリカ流です」と続けた。その横に座ったファエドも「当然のこと」と言わんばかりに大きくうなずきながら、監督のコメントを聞いていた。

 メジャーでは、先発投手の球数を100球前後で管理していることは、日本でもすでに広く知られていることだが、リトルリーグ、ボーイズリーグ、高校、大学と、各世代ですでに球数制限は始まっている。試合の勝敗も大事だが、それはしっかり選手を管理した後から付いてくるもの。特に、プロにより近くなる大学レベルでは、わずかな怪我や登板過多がドラフト順位や契約金に大きく響くため、非常に慎重な扱いになる。もちろん、日本代表にも多少なりとも起用法に制限はあるだろうが、機械的に選手を入れ替え、采配の機微を生かせない状態にはない。

 選手を怪我なくアメリカへ連れて帰ることが第一の使命だとはいえ、2連敗した後のホートン監督は苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。もちろん、打線が連日12奪三振に斬ってとられた屈辱もあるだろうが、選手を自由に使えないもどかしさや鬱憤もあったのではないか。

 日米どちらの起用法が正しいとは言えないが、それぞれが違った条件、違ったモチベーションで、同じ大会に臨んでいる様子が垣間見える場面だった。