「2018年シーズン10大注目ポイント」の答え合わせ(2) 1年前に『Sportiva』で紹介した2018年シーズンの戦前予想がどれだけ当たっていたのか、その答え合わせをする第2弾。あの大型新人ドライバーについても触れていたが、はたして…

「2018年シーズン10大注目ポイント」の答え合わせ(2)

 1年前に『Sportiva』で紹介した2018年シーズンの戦前予想がどれだけ当たっていたのか、その答え合わせをする第2弾。あの大型新人ドライバーについても触れていたが、はたして結果は――。

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HALOの導入されたF1マシンも、もはや見慣れた光景となった

(4)トロロッソ・ホンダに勝機はあるのか? → 【結果】△

 ホンダが新たにタッグを組んだトロロッソとの道筋はけっして平坦ではなく、表彰台獲得は困難で、レース運営面の弱さでマシンパッケージの実力をフルに発揮しきれないだろうと予想した。そして残念ながら、多くのレースでそういう結果になってしまった。

 中団グループでコンスタントに入賞圏を争うという再スタートいう予想については、たしかに争いはしたものの、実際には「コンスタントに入賞」とまではいかなかった。

 それでも、バーレーンGPとハンガリーGPでは中団グループトップの実力と結果を手にするなど、予想以上の走りも見せた。だからこそ、ランキング9位に終わってしまったのは、「実力を結果に結びつけられない」というチーム力不足を証明することになってしまったのだが……。

 ただ、日本人や日本企業のメンタリティをよく理解しているフランツ・トストの統率もあって、トロロッソとホンダの関係は極めて良好だった。両者の協力体制は、技術面でも運営面でも予想以上にスムーズにいった。

 そしてホンダも、マクラーレンと組んだ過去3年間とは別次元の組織に生まれ変わり、ようやくF1で戦えるレベルのパワーユニットサプライヤーへと成長してきた。大幅な進歩は難しいだろうと予想したが、スペック2、そしてスペックス3では予想以上の進化を見せた。

 それが兄弟チームであるレッドブルとの提携締結に結びついたことは疑いようのない事実であり、レッドブルがホンダに寄せる期待の根拠でもある。

 結果はランキング9位という残念なものに終わったが、レッドブルという誰もが認める最速車両を作りあげているトップチームが認めるだけの内容を示すことができたことも、また事実なのだ。

(5)大型新人シャルル・ルクレールはどれだけすごい? → 【結果】○

 フェラーリの育成ドライバーとしてGP3、FIA F2を連続で制し、2018年にザウバーからF1デビューを果たしたシャルル・ルクレール。速さだけでなくメンタルの強さも兼ね備えており、2019年のフェラーリ入りも噂されると1年前に書いたが、実際にそのとおりの結果となった。

 シーズン序盤戦は挙動の定まらないマシンに苦戦を強いられ、スピンなど些細なミスもあった。だが、第4戦・アゼルバイジャンGPでマシンセットアップの方向性を見出し、リアの安定感が増してからは快走を見せ、次々と入賞を重ねていった。そして結果もさることながら、記憶にもしっかりと刻まれる走りを披露していた。

 本人いわく、「周りが自分に何を期待するかではなく、自分がやるべき仕事に集中しているからプレッシャーは感じない」。

 新人らしからぬ成熟度合いをみせ、キミ・ライコネンを押しのけて本家フェラーリ入りを決めたルクレールは、「ナンバー2を受け入れるという条件つきなら、このオファーは受けていない」ときっぱり語るなど、すでにマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と並んで次世代のスター候補生と目されている。

(6)伝説のアルファロメオ、F1復帰はいかに? → 【結果】○

 アルファロメオのF1復帰に注目が集まったが、フェラーリとアルファロメオを傘下に置くフィアットがザウバーをフェラーリのBチーム化し、レッドブルとトロロッソのような関係になると予想した。

 結果的には、その予想以上の関係強化が進み、フィアットからの資金投入とフェラーリのチーフデザイナーをザウバーのテクニカルディレクターに据えて人員補強も進めるなど、ザウバーのBチーム化はシーズンが進むにつれて一層強まっていった。見た目にはっきりとわかるほど、マシンも毎戦のように開発パーツが投入されて進化していった。

 コンストラクターズランキングこそ8位という結果に終わったが、とくにフェラーリとの提携が強化されていったシーズン中盤戦以降のザウバーは、常に中団グループの上位につけていた。後半戦はロシアとブラジルで中団グループ最上位の速さと結果を手にして、トロロッソ・ホンダを上回った。

 直線主体のサーキットが得意という傾向はあるが、フェラーリとの提携下でイチからマシンが開発された2019年はさらなる飛躍を遂げそうな予感がする。そんな期待を感じさせるに十分な2018年のアルファロメオ・ザウバーだった。

(7)HALO導入で「美しいF1マシン」はおしまい? → 【結果】○

 2018年シーズン開幕当初は、その美醜が盛んに議論された頭部保護デバイス「HALO(ヘイロー)」。だが、いざシーズンが始まってみればすぐに見慣れるだろうという予想どおり、そのルックスをあれこれ言う声は早い段階でかなり減った。個人的にも、すでにHALOがないマシンのほうが違和感を覚えるほどだ。

 その一方で、ベルギーGPスタート直後の多重クラッシュではルクレールのマシンにフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)のマシンが乗り上げ、HALOがなければルクレールは頭部に重大なダメージを受けていたはずだという検証結果も出た。

 スペインGPでも、FIA F2で牧野任祐(まきの・ただすけ)と福住仁嶺(ふくずみ・にれい)がクラッシュした際には、HALOにタイヤ痕がハッキリと残っており、ドライバーたちからはHALOの存在を歓迎する声が次々と聞かれた。

 最終戦アブダビGPでは、裏返しに止まったニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)のマシンで小さな出火があったにもかかわらず、即座に脱出できなかったことは議論を呼んだ。だが、マシンには消火器が搭載されており、サーキットのコース脇には消火器を持ったファイヤーマーシャルも待機している。ドライバーは耐火性能を持ったスーツとヘルメット(バイザーも含む)に身を包んでおり、最悪の場合でも消火までの数十秒間は十分に火に耐えられる。

 HALOよりさらに優れた頭部保護デバイスを研究開発することも、もちろん継続して進めていかなければならないだろう。ただ、現状ではHALOが最良のソリューションであるということも理解したうえで、ドライバーの命を守るHALOの導入を否定すべきではない。

 2018年はFIA F2やタトゥース製リージョナルF3車両にもHALOが導入されたが、2019年には新たに新車を導入するFIA F3やスーパーフォーミュラでもHALOが採用される。HALOはもはや、世界標準の安全デバイスとして定着しているのだ。