「2018年シーズン10大注目ポイント」の答え合わせ(3) 2018年1月に占った今季F1の10大注目ポイント。今シーズンの結果を見返すと、その予想は当たっていたり、当たらなかったり……。年の瀬に答え合わせをして…

「2018年シーズン10大注目ポイント」の答え合わせ(3)

 2018年1月に占った今季F1の10大注目ポイント。今シーズンの結果を見返すと、その予想は当たっていたり、当たらなかったり……。年の瀬に答え合わせをして、2018年を振り返る。

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ホンダの提携するチームに日本人が乗る可能性はあるのか?

(8)フランスGPの復活でF1カレンダー再編も? → 【結果】×

 2018年はフランスGPが2008年以来の復帰を果たし、F1史上初の3週連続開催を含む21戦という長いシーズンになった。7月には、6週間で5戦という超過密スケジュールもこなした。

 1990年以来のF1開催となったポール・リカールは、アクセスルートが少なく大混雑が懸念されたが、主催者の巧みなオーガナイズでうまく処理した。ルノーと3人のフランス人ドライバーが参戦していることもあり、大いに盛り上がって大成功のグランプリとなった。

『Sportiva』での戦前予想では、さらなる開催数増加に向けて開催カレンダー再編も進められるかと書いたが、ひとまずこれは外れた。開催契約が満期を迎えるにあたって開催継続が不安視されていた日本GPも、鈴鹿サーキットがリバティメディアと新たに3年契約を結び、同時に隔年開催となっていたドイツGPもホッケンハイムが開催契約を結んだ。

 いずれも、ホンダとメルセデスAMGというF1参戦メーカーが地元グランプリに協力する形で支援を行ない、リバティメディアとしても自動車メーカーやサーキットを巻き込んでグランプリ開催の形態を変えていこう、という意思が感じられる。

 今やF1の最大スポンサーのひとつであるハイネケンの意向を受けて、2020年からのハノイ市街地におけるベトナムGPの開催が決まった。その他にも、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)人気で盛り上がるオランダでの開催や、ケビン・マグヌッセン(ハース)人気を受けてデンマークでの開催にも動いている。

 その一方で、マイアミ市街地での開催計画は地元の反対を受けて事実上の白紙撤回とするなど、リバティメディアが進めようとしている開催計画は順調とは言えない部分もある。

 すでに年間25戦開催という構図を視野に入れ始めており、そのためには一部のグランプリを除き、ほとんどを土日の2日間開催としてチームスタッフの負担を減らすなどといった方策が話し合われている。

 2019年も同じく21戦で、開催時期の変更もなし。チーム側からの反対が多かった3週連続開催は回避されることになったが、カレンダー再編は実質的に先送りとなっている。

(9)リバティメディアのF1改革、いよいよ本格化か? → 【結果】△

 F1を買収して2年目を迎えた2018年は、リバティメディアが本格的なF1改革を断行するのではないかと予想した。だが、改革と言えるほどの変化が果たされたかというと、そうではなかった。とくに「中身」の部分には、手が及びきらなかったと言うべきだろう。

 ロゴ刷新やテーマソング導入、オープニング映像やテロップといったテレビ放送の改善、映像素材やSNSをはじめとしたプロモーション面では、かなり手が加えられた。

 しかし、レースそのものの改革は、予想に反してあまり進まなかった。

 決勝スタート時刻はヨーロッパでのテレビ放送時間帯を意識して原則午後3時10分となったが、それが視聴率の向上に大きな効果を果たしたという話は聞こえていない。2020年以降に向けて、カレンダーの拡大と開催スケジュールの変更も視野に入れた議論が始まっているようだが、今のところ明確な方向性が見いだせていない。

 バーニー・エクレストンが統括していた時は、よくも悪くも独断専行で、予選方式をガラリと変えることができ、チーム側もエクレストンの決断には従ってきた。しかし、リバティメディアが統括するようになってからは明確なリーダーシップがなく、チーム側も含めた合議制のような形になった。それゆえ、各チームの利益が相反する事柄に関しては、結論に至るまでのプロセスが冗長になりがちだ。

 2021年以降の技術レギュレーションも、いまだに策定できていない。近未来的なフォルムをしたマシンのイメージ画像が公表されたが、その根拠として提示されたのは、ごく当たり前の概要だけ。各チームが研究開発を進めるために必要な技術規定は、まだ固まっていないのが実状なのだ。

 一部の団体からの批判を受けてグリッドガールは廃止されたものの、各グランプリのスポンサーの意向によってはグリッド前方にそのPRのための男女が並んだり、ドライバーズパレードにのみ参加したりと、F1としての主義主張が揺らいだ部分もあった。

 さまざまな部分でアメリカ的な視点による変革がもたらされたことも事実だが、F1そのものの改革はまだまだ本格化にはほど遠い、というのが実際のところだった。

(10)日本人F1ドライバー、今年こそ誕生なるか? → 【結果】×

 2018年は福住仁嶺(ふくずみ・にれい)と牧野任祐(まきの・ただすけ)がFIA F2に参戦し、F1デビューに必要とされるスーパーライセンスの取得を目指したが、果たされなかった。

 牧野が所属したロシアンタイムは2017年のチームランキング1位だった。だが、昨年王座を争ったアルテム・マルケロフ(ロシア/24歳)も今年はランキング5位に終わってしまったように、他の上位チームと比べると導入されたばかりの新車F218の理解にやや苦しんだ格好だ。

 そんなチーム状況だけに、ユーロF3からのステップアップで初めてのピレリタイヤを使った牧野には、やや荷が重かった。だが、シルバーストンあたりからはタイヤの勘所を掴んで右肩上がりに速さを増していき、モンツァのレース1で優勝するなど結果を残した。2年計画の1年目で、初年は「学習の年」と位置づけていたことを考えれば、まずまずの成長曲線だった。

 福住は昨年最下位のアーデンで、約束されていたチーム体制強化も十分に果たされていたとはいえず、最悪の状況でレースを強いられた。さらに、スーパーフォーミュラとの並行参戦もあって、完全にリズムを見失ってしまった。

 アーデンではどれだけセットアップを施しても、マシンには速さがないうえにトラブルが相次ぎ、メカニックの作業ミスも目立った。シーズン終了後のチェックではモノコックにクラックがいくつも見つかるなど、実力が発揮できる状態でなかったことは明らかだった。

 ヨーロッパに挑戦した若手ドライバーふたりが、それぞれ本領を発揮できない中途半端な形でその挑戦を中断し、日本に戻らなければならないのは残念だ。

 その一方で、スーパーフォーミュラとスーパーGTの両タイトルを獲得してスーパーライセンス取得の要件を満たした山本尚貴は、アブダビGPに訪れてF1のチャンスを模索した。だが、こちらも具体的な成果を得られなかった。

 トロロッソ・ホンダのテストドライバーを務めるショーン・ゲラエル(インドネシア/22歳)のように、FIA F2に参戦しているドライバーには500万~1000万ユーロ(約6億3000万~12億6000万円)程度の持ち込み資金と引き替えに、公式テストでの走行と複数回のフリー走行1回目出走がオファーされるのが通例だ。2018年でいえば、ニコラス・ラティフィ(フォースインディア)、アントニオ・ジョビナッツィ(ザウバー)、ランド・ノリス(マクラーレン)、ロベルト・クビツァ(ウイリアムズ)らがそれにあたる。

 しかし、レッドブルとトロロッソは山本のレギュラー起用どころか、こうしたテストへの起用にすら難色を示し、現状では来季の日本GPでのFP1出走に向けて、あらためて議論を進めるといった状態だ。

 つまり、いくらスーパーライセンスポイントがあっても、ヨーロッパのサーキットやピレリタイヤの経験がなければF1のチャンスを掴むことはできない、という現実が突きつけられてしまったことになる。ホンダと強い提携関係にあるレッドブル及びトロロッソでさえそうなのだから、日本人ドライバーがF1のレースシートを掴み獲るためには、やはりFIA F3やFIA F2で結果を出さなければならないということになる。

 2018年は3強と中団グループの実力がそれぞれ拮抗し、大激戦のシーズンになった。接戦だったからこそ、「最速」のマシンではなく「最強」のチームがそれぞれのトップを獲った。ルイス・ハミルトンが最強のドライバーとして5冠を達成した一方で、マックス・フェルスタッペンやシャルル・ルクレールといった若手の台頭も目立ち、世代交代の足音も聞こえ始めた。

 ホンダはレッドブルとのタッグを決め、さらに新たなステージへと歩を進めようとしている。リバティメディアの支配下で新たなF1の姿も見え始め、2019年に向けてさらにエキサイティングで魅力的なF1へと進化を遂げそうな期待が感じられた2018年シーズンだった。