「栗山キャンプテンをオールスターへ!」そんな、ライオンズファンの心からの思いが、ついに現実のものとなった。■過去に球宴出場なしは「意外」、今年はファンも「栗山巧をオールスターへ」「栗山キャンプテンをオールスターへ!」 そんな、ライオンズファ…

「栗山キャンプテンをオールスターへ!」そんな、ライオンズファンの心からの思いが、ついに現実のものとなった。

■過去に球宴出場なしは「意外」、今年はファンも「栗山巧をオールスターへ」

「栗山キャンプテンをオールスターへ!」

 そんな、ライオンズファンの心からの思いが、ついに現実のものとなった。

 2002年に西武に入団した栗山巧外野手は、05年に1軍定着してから、15年目を迎えた現在に至るまで、ケガ離脱を除いて常にレギュラーとして試合に出続けている。その間、毎年打率3割前後、出塁率4割近くの数字をコンスタントに残し、08年には最多安打のタイトル(167本)を獲得。ゴールデングラブ賞(10年)、ベストナイン3回(08、10、11年)受賞、さらに今年6月19日のヤクルト戦(神宮)では通算120人目となる通算1500本安打を達成するなど、球界にいくつも名を残している。

 これまで、何度もオールスター出場のチャンスはあったはずで、その資格も十分すぎるほどだけに、チームメートを含めた多くの野球関係者たちは、当然出場経験はあるものだと思っていた。だが、なぜか、1度も選出されていなかったのである。誰もが「意外」と口を揃えてきた。当然、ライオンズファンも同じ思いを抱え続けてきた。

 だが今年、ついに立ち上がった。栗山は開幕から、近年の中でも特に好調を維持。オールスターファン投票が開始された5月24日時点でリーグ3位の打率.329を残し、投票期間中に1度も3割をきることはなかった。さらに、6月19日には1500本安打を記録と、選出されるべき堂々たる理由が揃っていたのである。

 球団がtwitterで『#VOTE栗山巧』と投票を呼びかければ、ファンも同SNS内で『#栗山巧をオールスターへ』と“1日1票”運動を展開。結果、ファン投票では惜しくも26万7709票の外野手5位となったが、選出枠内の3位糸井嘉男選手とは、わずか1809票の僅差に迫ったのだった。

■同僚が語る栗山の凄さ、「もっとリスペクトされるべき選手」

 その人気の高さと、2010年の1年間だったとはいえ現役時代にチームメイトとして背番号1の野球人としての姿勢を直視していたからであろうか、全パ・リーグ監督を務めるソフトバンク工藤公康監督からの推薦により、15年目の初出場が決まった。前出のサイト上では、我がことのように喜ぶファンの声が殺到。そのファンに対し、栗山本人も会見の席で「ファン投票でたくさんの投票をして下さって、すごく感激していますし、嬉しかったです」と、感謝の言葉を語った。

 その陰で、もう一人、これだけの実績ある選手が球宴に選ばれない不遇に気付いていた選手がいた。3歳年上ながら、1期後輩の上本達之である。オフの自主トレも一緒に行う間柄で、14年間常にそばで栗山と切磋琢磨を続けてきたが、ようやく訪れた朗報に「嬉しいですよ」と、しみじみ。そして、力説した。

「正直、あれだけの選手なのに、どちらかといったら、いわゆる“玄人受けする”地味なプレースタイルだけに、日の目を見ることが少ないじゃないですか。だから、出なかったら出ないで、それはそれでいいんじゃない?って思っていました。でも、うちのチームの中で一番大事な部分を担っている選手。家を建てる上で言ったら、基盤みたいなものです。そこがしっかりしてないと、話にならない。

 今のチームでも、彼がいるから、他の選手が自由に動けたりしているし、10年以上試合に出続けている。さらに、いまだに毎年クオリティを高めつつ、進化を求めていろいろな努力をしています。その姿をずっと見てきて、同じ選手として本当にすごいと思います。もっと後輩からも世間からもリスペクトされるべき選手だと思いますし、だからこそ、西武がここまで彼とずっと契約してきてるという現実を、僕は、もっといろんな人に知ってもらいたいです!」

■球宴では「ヒットよりもホームラン。ヒットよりも四球」!?

 出場が決まった後、栗山本人とはオールスターについて直接話してはいないというが、上本が密かに期待する、たった2試合の中で“栗山巧”の凄さを証明する方法とは……。

「ホームラン打ちにいけばいいんじゃないですかね。狙って打てない選手ではないですから。それか、あえて、普通通り四球を取りにいくか。ヒットよりもホームラン。ヒットよりも四球だと思いますよ」

 さすが14年来の戦友!と、脱帽せずにはいられないほど、この言葉には、栗山巧の選手像がすべて詰まっているように思う。恐らく、現実的に求められれば、本塁打を量産するための技術力と努力する術は持ち合わせているはず。また、四球数を含めた出塁率は毎年4割近くの数字を残し続けており、栗山の専売特許の1つともいえる。その選球眼の良さには、入団時から田邊徳雄現監督(当時は2軍打撃コーチ)も着目しており、「最初から別格だった」と、賛辞を惜しまない。

 本塁打も四球も、どちらも十分狙う価値があることは間違いない。「オールスターだからといって、何かが特別できるわけではないですが、思い切りバットを振りたい」と、意気込みを語ったライオンズの看板選手。どのような形で存在をアピールしてくれるだろうか。同時に、ゲーム内だけに止まらなくていい。選ばれた、各チームの中で同じ立場にあるであろう中心選手たちの立ち居振る舞いの中から、何を感じ、刺激を受け、今後に生かしていくのだろうかが非常に楽しみでもある。

 本人の好成績はもちろんだが、ファンも一緒になって掴み取った形の出場切符。ライオンズを想う人にとって2016年オールスターは、念願叶った、通年以上に格別な舞台になりそうだ。

上岡真里江●文 text by Marie Kamioka