プレミアリーグは、シーズンの折返し地点となる第19節を終えた。 昨シーズンの主役は、マンチェスター・シティだった。得点数&失点数ともリーグトップの数字を叩き出し、まさに圧倒的な強さで戴冠まで登りつめた。前半戦無敗のリバプール守備陣を統…
プレミアリーグは、シーズンの折返し地点となる第19節を終えた。
昨シーズンの主役は、マンチェスター・シティだった。得点数&失点数ともリーグトップの数字を叩き出し、まさに圧倒的な強さで戴冠まで登りつめた。
前半戦無敗のリバプール守備陣を統率するフィルジル・ファン・ダイク
実際、シーズン前半戦の時点で決着はついていた。第19節終了時で「18勝1分」の驚異的な結果を残し、2位マンチェスター・ユナイテッドと勝ち点で13ポイントもの大差をつけた。そのまま走りを止めることなく後半戦も突っ走り、プレミア史上初となる「勝ち点100」の大台を突破して頂点に立った。
それゆえ、今季も連覇は固いのではないか――。開幕前の下馬評ではそんな声も多く聞かれたが、彼らに代わって主役に躍り出たのは、在任4季目のユルゲン・クロップ監督率いるリバプールであった。
リバプールの強さは、数字が証明している。
シーズン前半戦を「無敗」(16勝3分)で折り返したことも特筆に値するが、とくに注目したいのが失点数だ。昨シーズン同時期の「23失点」から、今シーズンは「7失点」へ大幅に減少。しかも、7失点は堂々リーグトップの数字だ。これまでウィークポイントだった守備力が、ストロングポイントへと大きく様変わりしたのは、リーグ首位に躍り出る原動力となった。
なかでも、GKアリソン・ベッカーの前方を、CBのフィルジル・ファン・ダイクとジョー・ゴメスで固める守備ユニットは抜群の強度を誇った。昨シーズンまで守護神を務めたシモン・ミニョレとロリス・カリウス(現ベシクタシュ)は不用意なミスばかり目立ったが、ブラジル代表GKのアリソンは鋭いセーブで幾度となくピンチを救った。
また、力強い守備で最終ラインを支えたファン・ダイクも躍進の立役者。英紙『タイムズ』の記者7人が選ぶ「前半戦のMVP」に4人の投票を集めるなど、オランダ代表DFはプレミアを代表するCBへ進化した。
一方、攻撃陣も得点ランク2位タイの12ゴールを挙げるFWモハメド・サラーを中心に好調。守備陣がチームの屋台骨を支えることで、攻撃陣の勢いも増した。
過去10シーズンの戦歴を紐解くと、折り返し地点となるクリスマスを首位で迎えたチームが、そのままリーグ優勝を飾ったのは8回。はたして、クロップ体制は頂点まで走りきれるか。
そのリバプールを追いかける立場になったマンチェスター・Cも、シーズン序盤戦は快調そのものだった。第15節まで13勝2分で首位を快走。開幕直後にひざを痛めたMFケビン・デ・ブルイネが離脱した穴も、ポルトガル代表MFベルナルド・シウバの台頭で見事に補填し、弱点らしい弱点は見当たらなかった。
ところが、連戦の続く12月中旬から勢いが急速にしぼんだ。英紙『タイムズ』は、その原因を「3人のMFの負傷離脱」にあると指摘する。
4−3−3をベースにするマンチェスター・Cでは、インサイドMFのデ・ブルイネとダビド・シルバ、アンカーを務めるフェルナンジーニョが、文字どおり「心臓部」としてチームを動かしてきた。
ところが、デ・ブルイネがひざのケガでシーズン前半戦の7割弱を欠場すると、12月中旬になってダビド・シウバとフェルナンジーニョが代わる代わる負傷離脱した。その影響はやはり大きく、第16節のチェルシー戦から4試合で3敗。4試合の失点は合計8点にのぼり、攻守のバランスが著しく崩れた。
気がかりは、デ・ブルイネの負傷離脱がボディブローのように効いてきたチーム全体の疲労だ。ベルナルド・シウバの台頭でデ・ブルイネの穴は埋まったが、ダビド・シウバとフェルナンジーニョはここまでフル稼働してきた。試合数が一気に増えるこのタイミングで、「負傷離脱→チームが失速」の流れに陥ったのは、けっして偶然ではないように思う。
はたして、一時的なスランプとしてこの壁を乗り越えられるか。ジョゼップ・グアルディオラ監督の手綱さばきに注目だ。
そのマンチェスター・Cを鼻差の1ポイント差で交わし、2位に躍り出たのがトッテナム・ホットスパーだ。プレミアリーグ開始以来、初となる「補強選手ゼロ」で夏の移籍市場を終えたチームには、厳しい視線が向けられていた。
ところが、マウリシオ・ポチェッティーノ監督は複数のフォーメーションを使い分けることで戦い方の幅を広げて、チームを進化させた。サラーと並んで2位タイの得点を挙げたFWハリー・ケイン、目の覚めるようなドリブル突破と力強いシュートで躍動しているMFソン・フンミンの活躍も目立つが、最大の功労者はこのポチェッティーノ監督にほかならない。
マンチェスター・Uの次期監督として就任が噂されるポチェッティーノ監督は、12月15日に行なわれたバーンリー戦の勝利で「プレミア100勝」を成し遂げた。この記録は「トッテナムのみ」でカウントされたもので、単独クラブではプレミア史上3番目の速さで到達した(169試合で100勝)。
ちなみに、1位はチェルシー1次政権のジョゼ・モウリーニョが記録した142試合、2位はマンチェスター・Uのアレックス・ファーガソンの162試合であり、4位にアーセナルのアーセン・ベンゲルの179試合が続く。46歳のアルゼンチン人指揮官は、「名将」への階段を着実に登っていると言えよう。
1位のリバプールから3位のマンチェスター・Cまで、勝ち点差はわずか7ポイントだ。マンチェスター・Cが独走体勢を築いた昨シーズンに比べても、競争は激しさが増している。英BBC放送が「リーグ優勝はこの3チームに絞られた」と伝えたように、三つ巴の優勝争いが繰り広げられそうだ。
とはいえ、各クラブが潤沢な資金を持つプレミアリーグでは、下位クラブとの試合であってもけっして油断ならない。イージーゲームのない厳しさを考えると、マウリツィオ・サッリ監督のもと、ポゼッションベースの魅せるサッカーで勝ち点を重ねる4位チェルシーも、頂点に立つのは難しいとしても、上位3チームとの差を縮めてリーグ戦を盛り上げるかもしれない。
予言めいたように、クロップ監督は言う。「優勝チームが決まるのは、リーグ最終節だ――」。はたして、プレミアリーグが最終節を迎える5月に笑うのはどこか。