年末年始の風物詩、全国高校サッカー選手権が今年も12月30日に開幕する(決勝戦は1月14日)。 2005年度に滋賀県の野洲が優勝して以降、どこが勝ってもおかしくない”戦国模様”に突入した高校サッカー界。優勝候補…

 年末年始の風物詩、全国高校サッカー選手権が今年も12月30日に開幕する(決勝戦は1月14日)。

 2005年度に滋賀県の野洲が優勝して以降、どこが勝ってもおかしくない”戦国模様”に突入した高校サッカー界。優勝候補が順当に勝ち上がることが少なくなり、逆に予想もしなかった伏兵が栄冠を手にすることが何度となく起こってきた。

 だがここ数年は、かつてのように実力のある高校、力のある地域の代表校が、前評判どおりの力を示して、栄冠を手にするようになってきた。そして昨年度も、その前年に準優勝と涙を飲んだ前橋育英(群馬県)が戴冠。常にV候補に挙げられてきた名門が、前年のリベンジを果たすとともに、出場21回目にしてついに悲願の初優勝を遂げた。



前回大会決勝は前橋育英と流経大柏が激突し、1-0で前橋育英が勝利した。photo by Takahashi Manabu

 そうした流れからすると、今年度は前回大会決勝で惜敗した流通経済大柏(千葉県)が優勝候補の筆頭。最大の激戦区を突破し、本大会では前年の雪辱を晴らして11年ぶり2度目の頂点に立つ可能性が高いと見る。

 実際、今年のチームは相当強い。全国制覇を果たせるチームだと思わせるだけの根拠もある。

 根拠のひとつは、チーム力の高さだ。今年は選手権で優勝するために、基礎となる守備を再強化。そのうえで、さまざまな選手を組み合わせて、ベストな布陣を導き出してきた。その結果、熾烈な千葉県予選では、習志野(1-0)、市立船橋(2-0)ら強豪を完封して退けてきた。

 その中軸を務めてきたのが、鹿島アントラーズ(J1)入りが内定し「大会ナンバーワンDF」の呼び声高い、関川郁万(せきがわ・いくま/3年)だ。関川はケガの影響で約半年間、ボールを蹴ることができなかったが、ピッチの外からサッカーを見ることで戦術眼が向上。同時に、精神的にもたくましくなった。

 一方、攻撃陣を引っ張るのは、1年時からトップチームのメンバーだった熊澤和希(くまさわ・かずき/3年)。ゲームメイク能力に長けるMFだが、県予選では4試合連続ゴールを決めるなど優れたゴール感覚も持ち合わせており、相手にとっては脅威だ。

 この熊澤と関川といった攻守の大黒柱がいることで、試合を勝ち切る力強さが増した。接戦が多い本大会では、大きな強みとなるに違いない。

 ふたつ目の根拠は、クジ運のよさである。なんと、流経大柏のライバルと目されていた他の有力校のほとんどが、同校とは逆のブロックに固まったのだ。

 もちろん同ブロックにも、名門・四日市中央工(三重県)、インターハイベスト4の東山(京都府)、初出場ながら前評判の高い瀬戸内(広島県)、そして2014年度大会の覇者・星稜(石川県)など、上位を狙える実力校もいるが、ここ1年の戦いぶり、選手権へ向けての充実度からすれば、流経大柏が一枚上。初戦をきっちりモノにできれば、決勝まで難なく勝ち上がっていってもおかしくない。

 翻(ひるがえ)って、流経大柏の逆ブロックは強豪校がひしめく大激戦だ。なかでも、決勝まで駒を進める候補としては、連覇を狙う前橋育英、前々回の覇者・青森山田(青森県)、九州の猛者・大津(熊本県)の3校が挙げられる。

 前橋育英は、松本山雅FC(J1)入りが内定しているFW榎本樹(えのもと・いつき/3年)、アルビレックス新潟(J2)入りが内定しているMF秋山裕紀(あきやま・ひろき/3年)が軸。榎本は前回大会の優勝メンバーで、高さ、強さ、テクニックと三拍子そろったストライカーだ。

 片や、秋山はチームのエースナンバー「14」を背負う逸材。ボランチとしてチーム全体をコントロールし、展開力と”ここぞ”という場面でゴール前まで出ていく嗅覚には目を見張るものがある。

 チームとしても、モットーとする”ネバーギブアップ”の精神は健在。県予選の決勝では、桐生第一に先制を許すも、終了間際に逆転勝ちを収めた。自慢の勝負強さにさらに磨きがかかって、大会連覇へ向けて準備は整っている。

 東北の雄・青森山田は、爆発的な攻撃力を誇るチーム。高円宮杯U-18プレミアリーグEAST(※ユース年代最高峰の東日本リーグ)では惜しくも2位となったが、総得点では優勝した鹿島ユースよりも20得点も多く、断トツの1位だ。

 その原動力となっているのが、コンサドーレ札幌(J1)入りが内定しているMF檀崎竜孔(だんざき・りく/3年)。左サイドからのスピードに乗ったドリブル突破は強烈で、同リーグでは16ゴールも叩き出した。

 守備では、アビスパ福岡入りが内定しているDF三國ケネディエブス(みくに・けねでぃえぶす/3年)が圧倒的な存在感を示し、卓越した身体能力で相手の攻撃を遮断。身長192cmと高さもあって、状況によっては、FWとして起用されることもある。

 今年も、攻守に充実したタレントをそろえる青森山田。2年ぶりの頂点も、十分射程圏内にとらえている。

 3年ぶりに選手権の舞台に戻ってきた大津は、超高校級の3選手に注目だ。まずは、センターバックのふたり。U-18日本代表の吉村仁志(よしむら・ひとし/3年)と、湘南ベルマーレ(J1)入りが内定している福島隼斗(ふくしま・はやと/3年)のコンビが中央にドーンと構えて、強固な守備を築いている。

 もうひとりは、MFの水野雄太(みずの・ゆうた/3年)。彼もU-18日本代表メンバーで、切れのあるドリブルを武器に決定機を生み出す。

 これらタレントを擁して、プレミアリーグ昇格をかけたプレーオフ決勝では、矢板中央(栃木県)に3-1と快勝し、見事に昇格を決めた。その勢いに乗って、”全員攻撃・全員守備”と”献身的なプレー”を身上とする大津が、選手権で初の戴冠を遂げても不思議ではない。

 この3校の他にも、中村拓海(なかむら・たくみ/3年)ら世代別代表が3人もいる東福岡(福岡県)、プレミアリーグのひとつ下のリーグとなるプリンスリーグ関東で圧倒的な強さを見せた矢板中央、大会屈指のFW西川潤(にしかわ・じゅん/2年)を擁する桐光学園(神奈川県)などと、こちらのブロックには名前を挙げればきりがないほど、有力校がズラリとそろう。

 はたして、組み合わせに恵まれた流経大柏が2度目の優勝を飾るのか、それとも激戦ブロックを勝ち抜いてきた実力校が栄冠を手にするのか。例年になく興味深い戦いの幕が、いよいよ切って落とされる。