プロスポーツのなかでも、群を抜いて長いオンシーズン期間を誇るテニスの世界。トッププレーヤーたちのシーズンは10ヶ月にも及ぶ。これが選手たちに疲労をもたらしているとして、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)が11月のATPファイナルズで不満を表…

プロスポーツのなかでも、群を抜いて長いオンシーズン期間を誇るテニスの世界。トッププレーヤーたちのシーズンは10ヶ月にも及ぶ。これが選手たちに疲労をもたらしているとして、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)が11月のATPファイナルズで不満を表明。ノバク・ジョコビッチ(セルビア)もこれに同調したが、必ずしも同意する選手ばかりではないようだ。

◆年間ほとんどがオンシーズン

テニスのオンシーズンの長さを指摘するのはExpress紙。例年1月に始まるシーズンは、11月に開催されるATPファイナルズまで続く。トップ・プレーヤーたちの活動期間は年間10ヶ月間にも達すると指摘し、異例の長さを強調している。

長期間にわたるオンシーズンは、選手のコンディションに影響を及ぼしている。今年のATPファイナルズで不調が目立ったと指摘するTelegraph紙は、専門家たちの認識を紹介。選手間に漂う疲労が不調の原因になっているとの見方が主流のようだ。さらに同紙は、元ウインブルドン・ファイナリストのアグネツカ・ラドバンスカ(ポーランド)の事例を挙げる。29歳の若さで引退した彼女は、元世界ランク2位から75位に急降下。その際、以前のようにはプレイできなくなったと漏らし、思ったように体が反応しない、と悔しさを滲ませた。長引くオンシーズンにより、選手生命が影響を受けるケースもあるようだ。

◆ズベレフとジョコビッチの不満爆発

こうした現状に異を唱えたのがズベレフ。11月のATPファイナルズでのインタビューで不快感を声高に表明した。シーズンが後半に進むにつれ、疲労感が蓄積してゆくと訴えた。同様にジョコビッチも、多忙極めるスケジュールへの不満を露わにしている。

二人の意見を詳細に報じたTelegraph紙によると、ジョコビッチは11月14日、ATPファイナルズのグループ・ステージでズベレフに勝利。今後の試合について語ったが、その体調は万全とは言えない状態だった。鼻水を垂らし、時折咳き込みながらインタビューに応じた31歳のジョコビッチ。健康状態について記者に聞かれると、良好ではないことを率直に認めた。相手のズベレフも不調に見えたと指摘し、質の良いマッチとは言えなかったと思う、と試合を振り返った。

ズベレフ自身も、過去2ヶ月間ほどにわたりベストとは言える状態ではないと述べている。同紙によるとシーズンが長すぎることが原因だと言及し、ほかのどんなプロ競技もこのような長いシーズン期間を設けていないと指摘している。

◆反論相次ぐ

しかし、不平をこぼす二人に対し、厳しい視線を注ぐプレーヤーも。元世界王者のエフゲニー・カフェルニコフ(ロシア)がSNSで即座に反応した、とTelegraph紙は伝えている。Twitterで「この男にはうんざりだ」とツイートし、嫌悪感を露わにした。90年代にはグランドスラム・カップが12月10日まで行われていたが、不平をこぼす者は誰もいなかった、というのがカフェルニコフの主張だ。

グランドスラム決勝に2度進出したマーク・フィリポーシス(オーストラリア)も、二人を批判する立場だ。疲労感を訴える選手については、より小規模だが高額な報酬を伴うイベントには喜んで出席していると述べ、その姿勢を批判している。出場義務のある大会は年間16ほどだが、疲労を訴える選手は報酬目当てで30以上の大会に出場していると指摘。あくまで現状のスケジュールは適正だと思う、との認識をMetro紙に語った。

さらに同紙によると、フェデラーも現状のスケジュールで問題ないとの立場だ。多くの大会が開催されることでトップ・プレーヤーのみならず様々な選手に活躍の機会が与えられるとの考えを表明し、下位ランクの選手たちへの配慮を見せている。

過密気味のスケジュールを懸念する声もあるが、トップ・プレーヤーの間でも認識が分かれているようだ。(テニスデイリー編集部)

※写真はテニスシーズンの長さに不平をこぼしたジョコビッチとズベレフ(ReflectedLight / Shutterstock.com)