フィギュアスケートの全日本選手権で、24人目となる新たな日本の女王が誕生した。大会の主人公は、平昌五輪6位の坂本花織だった。ショートプログラム(SP)2位から、フリーでは152.36点の高得点をマークして、合計228.01点を叩き出し…
フィギュアスケートの全日本選手権で、24人目となる新たな日本の女王が誕生した。大会の主人公は、平昌五輪6位の坂本花織だった。ショートプログラム(SP)2位から、フリーでは152.36点の高得点をマークして、合計228.01点を叩き出して逆転初優勝を成し遂げた。
全日本選手権で初優勝を飾った坂本花織、フリーの演技
昨年の大会同様に最終滑走者だったフリーで、ほぼミスのない演技を披露したことが高く評価され、これまで自身が出したことがなかった高得点を引き出した。坂本は得点が出た瞬間、目を見開き、両手を口に当てて、のけぞりながら驚きの表情。”元気印”がトレードマークの18歳は、ニコニコ顔が止まらなかった。
「点数が出たときは、ちょっと計算ミスかなと一瞬思ったんです(笑)。えっ、150?
そんなに10点も一気に上がるとは思わなかった。SPと同じく、ただ、ただ、びっくりしました。演技構成点で初めて70点を超えて、ブラッシュアップした成果がちゃんと出て大きく点数が伸びた原因だったかなと思います。今日はジャンプがよくなかったので、他のエレメンツでリカバリーしようと思って一生懸命にやりました」
SPでは首位の宮原知子に1.11点差をつけられ、トリプルアクセルで転倒した紀平梨花には6.90点差のリードをつけていた。そしてフリーでは、技術点でトップの紀平に次ぐ全体2番の79.11点を出し、演技構成点でもトップの宮原に続く全体2番の73.25点をマーク。終わってみれば、2位紀平に点差を縮められながらも4.25点差を、3位の宮原には4.67点差をつけての勝利だった。
優勝争いを演じたなかで、SPとフリー、ともに持ち味のダイナミックなジャンプを跳んで堅実な演技を見せたことが勝因だった。
今季のグランプリ(GP)シリーズではスケートアメリカで2位、フィンランド大会3位と連続表彰台に上り、初出場のGPファイナルでは銅メダルまであと一歩の総合4位と健闘した。昨年の全日本選手権は、SP首位発進からフリーで4位に沈んだが、総合2位に入って平昌五輪代表の座を奪い取った。今年のフリーでは最終滑走者の重圧をはねのけて納得の演技を見せ、試合後は大きなガッツポーズが飛び出した。
「ジャンプではちょっとずつ堪えて降りたりして、完璧じゃなかったんですけど、(非公認ながら)自己ベストを更新できたので、ファイナル以上に自信がつきました。(演技後のガッツポーズは)やり切ったから出ました!
ここであきらめてしまったら、いままで1年間頑張ったことが無駄になると思うので、必死に頑張りました。全日本チャンピオンになってうれしいけど、まだあまり実感ないかな」
フリー『ピアノ・レッスン』は昨季の五輪シーズンで初めてダックを組んだ振付師のブノワ・リショー氏が手がけている。坂本の特徴を十二分に生かしたプログラムになっていることも、今季好調な要因になっていると言っていい。
また、全日本女王の称号を手に入れることができたのは、この1年で表現力がついたことも大きいだろう。昨季は表現面でだいぶ苦労していたが、今季は試合を重ねるごとにレベルアップしてきた。
坂本が課題にしていた表現面の成長を促そうと喝を入れてきた中野園子コーチも、今大会での演技を高く評価した。
「得点はびっくりしました。ありがたいことです。練習の成果が出ました。2年連続で結果を出して、今日は本当に強いなと思いました。昨年も最終滑走でしたが、SPでちょっと失敗していたのが、今年はSPもノーミスでした。まったく優勝は狙っていなかった。世界選手権には行きたいということで、必死にやったと思います。心の入ったスケートができるようになって、演じようとしていました。今季テーマの『大人』のところは、ひとつひとつ表現を確かめながら、ストーリーになっていたと思います」
優勝は坂本、2位に紀平梨花、3位は宮原知子だった
「大人」の演技を目指してきた坂本は、今大会で、ある”秘策”が功を奏したと明かしてくれた。
「いままでは視線がジャッジより下でしたが、フリーは『跳ぶから見てろ』という感じで、めっちゃジャッジを見て(笑)、ガッツリとノックアウトしました!」
大トリを務めた演技は、ファンもさることながら、ジャッジをも魅了したに違いない。