WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス アメリカで注目のアマチュア選手がプロ転向を果たした。「オールミス(Ole Miss)」の愛称で親しまれるミシシッピ大学(ミシシッピ州オックスフォード)4年生のブラデン・ソーンベリ…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 アメリカで注目のアマチュア選手がプロ転向を果たした。「オールミス(Ole Miss)」の愛称で親しまれるミシシッピ大学(ミシシッピ州オックスフォード)4年生のブラデン・ソーンベリー(21歳/アメリカ)だ。



プロ転向を決めたブラデン・ソーンベリー

 2017年にNCAA(全米大学体育協会)の個人優勝を遂げ、元世界アマチュアランキング1位でもあるソーンベリーは、先日行なわれた米PGAツアーの下部ツアーとなるウェブ・ドット・コムツアーの最終予選会(12月15日~19日/アリゾナ州)に挑んだ。

 結果は74位。40位までに与えられる来季ツアーのフル出場権は得られなかった。しかしこの結果が、図らずもソーンベリーの決断を早め、来年6月の大学卒業を待たずしてプロになることを、彼は決めた。

「もし最終予選会を上位で終えて(来季の)ツアーカードを獲れていたら、春まで大学に残って、そのあとから(ツアーに)参戦したかもしれない。でも、(今回の結果を受けて)僕の気持ちはもう『プロになりたい』――そう強く思った。だから、すぐに(プロとしてツアーに)挑戦したい」

 そう語ったソーンベリー。ツアーへの出場資格を持たないが、「ソーンベリーの経歴があれば、きっと応援してくれるスポンサーはたくさんいると思う」というコーチらの強い後押しを受けて、今回のことを決断したという。

 こうして、ソーンベリーは年明けからプロとして活動。スポンサー推薦などでPGAツアーやウェブ・ドット・コムツアーへの出場機会を得て、そのチャンスを生かしてツアーメンバーへの道を目指していくことになる。

 ソーンベリーの今回の決断を受けて、頭をよぎったことがある。それは、現在PGAツアーで検討されている”ドラフト制度”がすでにあったら、ソーンベリーの歩む道も違っていたかもしれない、ということだ。

 PGAツアーでは今、大学ゴルフで活躍した選手に、PGAツアー傘下のツアーに出場権を付与することを計画しているという。米ゴルフ雑誌の取材に対して、PGAツアーの担当者がこんな話をしている。

「野球やフットボール、バスケットボールなど、NCAAで活躍した選手たちは、おおよそドラフトによってプロ入りする。それによって、大学卒業後の働き場所であり、戦える場所が確約される。ゴルフ界も同様に、大学で実績を残した選手に対して、卒業後に”戦う舞台”を準備してあげれば、学生たちは在学中、もっとプレーや勉学に集中することができるのではないか」

 この話が実現すれば、大学側のメリットも大きい。最終学年を迎えた実力のある選手が、卒業するまで心置きなく在学できる環境となり、最後の春のリーグ戦にも出場してくれる可能性が高まるからだ。

 この”ドラフト制度”で選手の評価対象となるのは、あくまでも大学リーグでのプレーで、アマチュアランキングではない。その理由としては、”学業との両立”という主旨が多分に含まれているからだ。

 アメリカの大学では、スポーツ推薦などで入学してきた選手であっても、きちんと勉学することが要求される。その分、”卒業する”ということは、単なる”学位”以上の価値があるのだ。

 ソーンベリーの話に戻そう。彼はミシシッピ大在学中、数々の記録を打ち立ててきた。冒頭でも触れたとおり、2017年にNCAAの個人戦を制覇するなど、在学中にトータル11勝。同大学の最多勝利記録を達成した。また、アマチュアの英米対抗戦、ウォーカーカップのメンバーとしても活躍した。

 その一方で、2017年6月には初のPGAツアー参戦も果たした。その”デビュー戦”となったフェデックス・セントジュードクラシック(テネシー州)では、歴戦のプロ相手に優勝争いを展開。堂々の4位タイでフィニッシュした。さらに、2018年には全米オープンにも出場している(予選落ち)。

 そうして、たびたびプロ転向の噂が囁かれてきたソーンベリーだが、「”オールミス”が大好きだから、ここで戦いたい」と最終学年まで残っていた。

 そんな彼でも、ついにプロ転向を見越して最終予選会に出場。初日は「62」をマークしてトップに立ったが、残り3日間で後退し、結局ツアーへの出場資格は得られなかった。

 だが、もし”ドラフト制度”があれば、ソーンベリーは在学中の実績からして、”ドラフト1位”となって、来季からのツアー参戦は保証されていたに違いない。

 この新しい制度はまだ検討中ゆえ、実施される時期などの詳細は不明だが、”ドラフト”にかかれば、下部ツアーのウェブ・ドット・コムツアーか、あるいはPGAツアーの傘下となるPGAツアー・カナダ、ラテン・アメリカ、チャイナシリーズの、いずれかのフルシードが与えられることになるだろう。

 1996年、全米アマ3連覇を達成したタイガー・ウッズ(アメリカ)が、スタンフォード大を卒業せずにプロに転向。以来、”学士プロ”になるよりも、いち早くプロの道を選択する学生選手が増えている。

 プロとして成功すれば”学位”は不要なのかもしれないが、客観的な意見として「あと数カ月待てば、せっかく得られる学位があるのに、それをふいにしてしまうのは非常に残念な選択」という声も少なくない。

 ゴルフ界の”ドラフト制度”に”卒業”が条件になるかどうかもまだわからないが、同制度によって、学業とスポーツに専念したのち、プロの舞台がその後に保証されているとなれば、学生にとって、大きな目標となることは間違いない。

 PGAツアーの改革は、プロを目指す学生たちに”新たな光”をもたらしてくれるかもしれない。