終わってみれば、両チームの力の差が素直に出た試合だった。クラブW杯準決勝は、ガレス・ベイルのハットトリックにより、3-1でレアル・マドリードが鹿島アントラーズに勝利を収めた。鹿島アントラーズ戦でハットトリックを決めたガレス・ベイル(レ…

 終わってみれば、両チームの力の差が素直に出た試合だった。クラブW杯準決勝は、ガレス・ベイルのハットトリックにより、3-1でレアル・マドリードが鹿島アントラーズに勝利を収めた。



鹿島アントラーズ戦でハットトリックを決めたガレス・ベイル(レアル・マドリード)

 鹿島は、2年前に横浜で行なわれたクラブW杯決勝でレアル・マドリードを苦しめたチームとして、そしてまたヘタフェでプレーする柴崎岳の古巣として、スペインでも名前が知られている日本のチームのひとつになっている。今回の一戦は、スペインメディアにとって、見知らぬ格下のチームではなく、警戒すべきライバルとの対戦だったのだ。

 前回の対戦では、スペインでも人気の漫画『キャプテン翼』の作者である高橋陽一氏などを取材していたAS紙だが、今回はジーコを取材。MARCA紙も大岩剛監督のインタビューを掲載していた。このところ不安定なパフォーマンスを見せているレアル・マドリードに対して鹿島が、前日にリーベル・プレートを破ったアル・アイン同様、一矢を報いる可能性があると少なからず思っていたフシがある。

 実際、筆者もASの記者から鹿島の広報担当者の連絡先を聞かれたりしていた。そこには短期決戦の大会で当たる1チームとして紹介するというより、鹿島がどんなチームなのかをスペイン国内に伝えようとする意思を感じた。それだけこの2年で鹿島の知名度はスペインでも上がっていたのだ。

 前日の記者会見でレアルのサンティアゴ・ソラーリ監督は、鹿島について「2年前より経験を積んでいるチーム。当時は開催国の枠だったけど、今度はアジア王者として出場している。スピードとダイナミックさを持つダイレクトなサッカーをするチーム」と語っている。

 2年前の準決勝クラブ・アメリカ戦後、日本のメディアから鹿島のことを聞かれ、詳しくは知らないため返答に困っていた当時のジネディーヌ・ジダン監督に比べて、はるかに具体的で要領を得た答えだった。

 試合を中継していたTVEは、ハーフタイムの寸評で「試合序盤は鹿島がチャンスを掴む形で進んでいた。徐々にマドリードがリズムを上げてからは守勢に回ったが、このままリズムが上がっても我慢できればチャンスは回ってくる」と、鹿島にもチャンスはあると伝えていた。

 だが、後半開始直後に鹿島の守備のミスをついてベイルが2点目を決めると「この2点目が試合の流れを大きく決めた。山本(脩人)のバックパスが正確でなかったのに加えて、GKとDFの連係でもミスがあった。2つの鹿島のミスが重なって生まれたマドリードの2点目だった」と、その場面を振り返った。

 その後のテレビ中継は、試合後に放送する歌番組の宣伝を何度もはさむなど、かなり余裕を持ってレアル・マドリード優勢の試合を実況していった。VAR判定で決まった後半33分の土居聖真のゴールについても「VARは正当な判定を下してくれる」と、素直に得点になったことを認めていた。

 レアル・マドリードと鹿島の再戦。テレビのニュースではこの日一番のニュースではあったものの、アトレティコ・マドリードのリュカ・エルナンデスが冬の移籍市場でバイエルンへ移籍するという話も、それに負けないくらい大きく伝えられていた。

 試合後にASが下した個人評価は、鹿島については土居が3点満点中2点の最高評価で、評価なしの低評価が4人。一方のレアル・マドリードについては、ベイルが3点満点を獲得したのを始め、7人に2点という高評価が与えられた。

 欧州のチームがアジアのチームに勝つという、いつものクラブW杯のニュースで終わる試合になってしまった。