東京五輪を目指す若きフットボーラーたち(4)北海道コンサドーレ札幌・三好康児@前編 小学生時代から過ごしたクラブを離れ、誰も自分のことを知らない土地にやってきた2018年シーズン、プロ4年目にして初めてレギュラーとしてフル稼働した。代表…
東京五輪を目指す若きフットボーラーたち(4)
北海道コンサドーレ札幌・三好康児@前編
小学生時代から過ごしたクラブを離れ、誰も自分のことを知らない土地にやってきた2018年シーズン、プロ4年目にして初めてレギュラーとしてフル稼働した。代表の活動も増えてコンディション調整に苦労しながらも、シーズン終盤に会心のゴールを連発。あらためて能力の高さを証明したU-21日本代表の10番、三好康児の今に迫る。
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MF三好康児(みよし・こうじ)1997年3月26日、神奈川県生まれ。川崎フロンターレU-18出身
―― 小学生時代から過ごしてきた川崎フロンターレを離れ、大きなチャレンジをしたシーズンでしたが、自身の変化、成長をどう感じていますか?
三好康児(以下:三好) 今年、札幌に来るにあたって、それだけの覚悟を持って来ました。別に川崎にいたとき、甘えていたわけじゃないですけど、サポーターの方々も小さいころから見てくれているので、たとえ僕のプレーが悪かったとしても、優しい声をかけてくれて。でも、自分のことを誰も知らない土地で勝負したい、という想いがありました。
―― 北海道コンサドーレ札幌にもアカデミー育ちの選手は多いから、サポーターにとっては彼らのほうが可愛いでしょうし。
三好 そうですね。結果を残さないと、ここでは認めてもらえない。そういう覚悟を強く持たないといけないと思っていました。あと、今年はシーズンを通して試合に出させてもらって、アンダーの代表もあったから、本当にあっという間でした。これだけ試合に出させてもらったのは初めてなので、いいところも、悪いところも出たと思います。
―― 今年見ていて感じたのは、ピッチ内外で喜怒哀楽がすごく出るようになったということです。それこそ、ミックスゾーンでの言葉にも重みが増したように感じます。川崎時代はどうも優等生発言が多かったから。
三好 ハハハ。やっぱり川崎のときは途中出場が多くて、自分は主力じゃないと感じていて。だから、チームのことをそこまで考えられなかったというか。言い方は悪いですけど、自分のことしか考えてなかった。でも、これだけ試合に出させてもらうと、結果に対する責任を負わないといけない。それは札幌でも、代表でも感じられたことで、そこの考え方は変わったかなと思います。
―― 意識的にしたわけではなく、無意識のうちに?
三好 そうですね。しゃべる内容を変えようと思ったことはなくて、自分が感じたことをそのまま話していただけなので。
―― 8月のアジア大会でも、敗れたベトナム戦のあとに「もう子どもじゃないんだ」と言ったり、韓国との決勝の前に「自分たちも人生をかけている」と言ったり。聞いていて、ゾクッときました。
三好 本当ですか!? 立場が変わって、責任というのを感じるようになったのかな、と思います。
―― 川崎時代は寮生活でしたが、知らない土地でひとり暮らしをしてみて、自立というか、ピッチ外における意識も変わった?
三好 そうですね。川崎時代は食事に関して任せきりで、栄養についてそんなに考えることはなくて。でも、今年はひとり暮らしになって、朝は自分で作るようになったし、献立も、量も、自分で考えるようになって楽しいです。今まで身体の変化を気にしていなかったわけじゃないですけど、これまでよりも意識するようになったと思います。
―― 外食する場合は、どんな人たちと?
三好 こっちに知り合いがあまりいないので、選手同士で行くことが多いですね。チャナ(チャナティップ)とか、菅(大輝)とか。上の人たちに誘ってもらうこともあります。とくにトクさん(都倉賢)はけっこう誘ってくれますね。逆に、下を連れて行くことはあまりないですけど(笑)。
―― 先ほど「いいところも、悪いところも出た」と。試合に出続けることで、どんなことを感じました?
三好 難しさを感じた、というのが正直なところです。これだけ試合に出させてもらうと、コンディションの維持も、気持ちの維持も難しかったです。代表の活動も多かったので。川崎のとき、(小林)悠さんや(中村)憲剛さんが常に結果を残していて、すごいなと漠然と思いながら見ていましたけど、自分だって使ってくれればやれるよ、とも思っていて。
でも、今年試合に出させてもらって、結果を出し続けるのは本当にすごいこと。それを何年も続けるなんて、想像がつかないくらいすごいなと、違うチームに来てあらためて感じました。
―― 気持ちの維持が難しいということですけど、チームが負けたり、自身がミスをした時の気持ちの切り替え方も、試行錯誤したのでは?
三好 そこは今年、すごく考えたというか。ずっと点が獲れなくて、そこと向き合わなければならなかったので。それでも使い続けてもらったのはうれしかったけど、悔しさもあり、怖さも感じていました。
―― 怖さというのは?
三好 これだけ使ってもらって結果を出せないと、先がないので。コンディションを維持する難しさもあって、よくないプレーが続いていた時期は悩みましたね。
―― 逆に、どうして終盤に入ってゴールを奪えるようになった?
三好 僕、いつも終盤になると、調子がよくなるんですよ。今年もキャンプでしっかり準備ができて、シーズンの入りも悪くはなかった。でも、連戦が続いてコンディションが落ちてくるにつれて、気持ちも疲れてきて。それで終盤になって、ようやく上がっていく。毎年こんな感じで、それは課題ですね。
―― ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は我慢して使い続けてくれたけど、それこそヨーロッパのクラブだったら、1、2カ月で見切られてしまう可能性もある。
三好 そうですね。それに、「ミシャさんは使ってくれる」と安心していたわけでもないですし。他にいい選手がいれば、代えられるのは当たり前。なので、いつ切られてもおかしくないという怖さは感じていました。ただ、そんなことばかり考えていても……。
―― 考え過ぎず、次、次という感じで?
三好 考えるときは考えるんですけど、その結果、考え過ぎないほうがいいな、という結論にいつも行き着くというか(笑)。調子が悪い要因は何かと考えてみると、いろいろと考え過ぎて選択肢が多くなって迷っていることが多い。もっと感じたままにやればよかった、というシーンがたくさんあって。
―― 本能の赴(おもむ)くままに?
三好 そうですね。ただ、考え過ぎる必要はないという答えも、考えた末に行き着くもの。考えないと、その答えにはたどり着けないので、決して無駄じゃないと思います。
―― では、今シーズンを振り返ってみて、自分にとって大きな意味があったと感じるゲームは?
三好 うーん……鳥栖戦ですかね。点が獲れたっていうのが一番。
―― ようやく。
三好 90分を通していいプレーをした感覚はないんですけど、結果を残せたことで気持ちがすごく楽になりました。どんなにいいプレーをしても、点が獲れなかったら意味ないなって常に思っていたので、もう本当に、点が獲れたということで、今年のターニングポイントだったと思います。
―― 「どんなにいいプレーをしても、点が獲れなかったら意味がない」というほどのゴールへの意欲は昔から? それとも、プロになってから?
三好 プロになってからですね。ユースのころはとくに考えなくても点が獲れていた、というのもありますけど、プロになって前線で起用されたとき、そこでアピールするのが一番だなって。
―― ドリブルもうまいし、パスも出せるから、チャンスメイクへの美学もあるのかなと思っていましたが。
三好 結局、ゴールになりましたね。周りからも得点やアシストについて言われることも多いですし。
―― 話を初ゴールに戻すと、気持ちが楽になったというのは、ジェイ選手への抱きつき方ですごく感じました。
三好 そうですね(笑)。あれは最高にうれしかったですね。
―― ターンもすばらしかったけど、右手で相手をブロックしたのもうまかった。あのゴールをあらためて振り返って、自分のどんなよさが出たと?
三好 どんな状況でも、ターンして前を向けるのは自分の強み。あそこはボールが来る前から、入れてくれれば前を向けると思っていて、来い、来い、と念じていたら、ジェイが出してくれた。あとは自分の得意な左に持っていって、自然にシュートに持ち込みました。
―― 相手は日本代表GKの権田修一選手でした。彼からゴールを奪ったのも自信になったのでは?
三好 ただ、あそこまで近づけば、さすがに俺でも外さないだろうって(笑)。中途半端な位置からシュートを打つより、あそこまでドリブルして打てばいいんだって。
―― 2ゴール目はベガルタ仙台戦で、川崎時代の同期の板倉滉選手からボールを奪って決めました。
三好 あれは、ある程度、狙ってました。おお、ラッキー、という感じで(笑)。
―― 板倉選手はすごく悔しがっていましたね。そして3ゴール目はジュビロ磐田戦で、カットインして左足からミドルシュートを突き刺した。
三好 後半戦に入って、練習であの形のシュートを増やしていたんです。さっき言ったように、近くまで持ち込んで決めれば確実ですけど、あの形でも決めたかった。イメージどおりに決められて、そこもひとつ、ホッとしましたね。
―― 三好選手は左利きで、ドリブルが得意で、フィニッシュもできますけど、たとえば海外の選手で意識して見たり、マネをする、憧れている選手は?
三好 左利きの選手は基本、見ますね。小柄な左利きということで、よくメッシ(バルセロナ)とか言われますけど、メッシはちょっと異次元過ぎて(笑)。だから、よく見るのはダビド・シルバ(マンチェスター・シティ)ですね。シンプルにうまいな、と思います。
―― YouTubeでプレー集を見るんですか? それとも試合映像?
三好 DAZN(ダゾーン)で試合を見ますね。その時間は川崎にいるときよりも増えました。川崎のときも寮で見られましたけど、今はひとり暮らしで、家であまりやることがないので(笑)、自然とDAZNで試合を見る機会が増えました。
(後編に続く)