鎌田大地インタビュー(後編)前編を読む>> 今夏、ドイツ1部のフランクフルトからベルギー1部のシント・トロイデンに加入すると、リーグ出場13試合で10ゴールと得点を量産しているMF鎌田大地(22)。同じくシント・トロイデンでプレーするM…
鎌田大地インタビュー(後編)
前編を読む>>
今夏、ドイツ1部のフランクフルトからベルギー1部のシント・トロイデンに加入すると、リーグ出場13試合で10ゴールと得点を量産しているMF鎌田大地(22)。同じくシント・トロイデンでプレーするMF遠藤航(25)とDF冨安健洋(20)の2人は、来年1月に開幕するアジアカップ(UAE、1月5日-21日)の日本代表に選ばれている。
これまで世代別代表にはほとんど縁のなかった鎌田に、日本代表への想いとこれからについて聞いた。
――シント・トロイデン加入後、ゴールを量産し、代表入りを期待する声も高まっています。
カタールW杯での日本代表入りを目指している鎌田大地(シント・トロイデン)
「もちろん、日本代表に選出されたい気持ちはありますが、いまの代表はうまくいっていると思うし、僕がここで点を取っているからといって、何で選ばれないんだとか、そんな気持ちはまったくないです。ウルグアイにも勝ったし、チーム自体に勢いがあって自信も感じるし、みんな僕よりいい選手。ただ、若い選手も多いし、いまのチームのまま2022年カタールW杯を迎えるのではなく、選手それぞれがステップアップして、その競争を勝ち抜いた選手がW杯に行くべきで、そうすることでチームとしても強くなるのかなと思います。4大リーグなどにステップアップすると、チームにはいい選手も多いし、どこかで壁にぶち当たる選手も多いと思います」
――意外と冷静に見ているんですね。代表はどうしても入りたい場所じゃない?
「そんなことないですよ。選ばれれば行きたいし、試合にも出たいです。僕も本当は、昨季フランクフルトに行って、そこで活躍してロシアW杯を狙うことをイメージしていましたから。ただ、それが全然違う方向に行ってしまいました(笑)。4年後のカタールW杯は絶対に出たいですよ。そのときは26歳になって、選手として一番いい時かなと思いますし。その次もまだ30歳だし、できれば2度、W杯に出てみたいと思っています」
――4年後のメンバー入りに向けては「自信あり」と捉えてもいいですか。
「自信というか、願望ですかね。だって4年って、結構長いと思うんですよ。それを思うと、いま調子がよくても4年間ずっと調子のいい人ってどれくらいいるのかなと思ったりします。新しい選手も出てくるでしょうし。いまの選手たちは、たとえば香川真司選手のように、ドルトムントで活躍してマンチェスター・ユナイテッドに移籍したという本当のビッグクラブでやっているわけではないし、そんなに簡単な世界じゃないと思いますから。
そういう意味では、4年後に自分がどんなリーグのどんなチームでスタメンを張っているかってことは大事だと思っています。僕自身がベルギーで点を取っているといっても、もし4大リーグで出場機会を得られずに苦しんでいる選手がいたとして、僕はそこに行けてないわけだから、比べようがないと思うんです。そう考えると、いまの僕なんて土俵にも乗ってないというか……。
昨季フランクフルトで活躍していたら、いまごろ絶対に代表に入っていたと思うし、そこからビッグクラブへのステップアップのチャンスもあったと思います。ただ、それができずに、ここで活躍してやっと4大リーグに戻れるかどうかということです。その点で今季は本当に大事なシーズンですし、危機感を持っています」
――とはいえ、現在代表で活躍中の中島翔哉(ポルティモネンセ)や南野拓実(ザルツブルク)、堂安律(フローニンゲン)らは4大リーグでプレーしていないし、実際にシント・トロイデンからは遠藤、冨安の2人が代表に招集され続けています。
「それは世代交代のタイミングもあることで……。でも、個人的には、昨季フランクフルトであれだけ苦労して、下のリーグで活躍したら代表入りとなると、『だったら下のリーグでやっていればいいじゃん』ってことになってしまうと思うんです。日本代表の将来を考えれば、それではダメだと思うし、ロシアW杯を振り返れば、選ばれた選手は、名前のあるクラブやリーグに所属している人が多かったと思うんです。日本代表がW杯で勝ちたいなら、11人の選手がどこでやっているのかってことも大事じゃないですか。もちろん、いま代表に入っている選手も、これからのステップアップを見据えてやっていると思いますけど。
まあ、いろいろ言ったところで、僕自身がこれまで世代別を含めて代表にほとんど縁がなかったので、イマイチ代表への感覚がわかっていない部分もあるのだと思います。周りからも、『行けば絶対変わるよ』と言われますし、僕もそう思っているところはあります。代表のような場所は何より、経験が大事になってくるでしょうし」
――前回、ポジションの話が少し出ましたが、理想のポジションは中盤の8番だと言ってました。
「一番いいのは、4-3-3の中盤3枚のナンバー8のポジションです。ユベントス時代のポール・ポグバはすごくよかったですし、好きでしたね」
――おそらく4-2-3-1だとトップ下が合うのだと思いますが、トップ下を置かない4-4-2に自分をはめると?
「そうなると、まさに昨季のフランクフルトがそうだったように、難しくなりますね。もちろん、チームのスタイルにもよりますが、日本代表のようにパスを多用するチームならサイドハーフでもいけると思いますし、2トップでも、前線に張っているわけではなく、自由に動き回れるようなシステムならできると思います。
なぜポジションにこだわるのかといえば、ドイツでは、攻撃は評価されても中盤で使うには『守備ができない』と言われましたし、自分もずっと海外サッカーを見てきて、自分が本当のトップレベルでやるには8番(もしくは10番)が合っていると思うんです。もちろん、同じ8番でも、上位のチームなら攻撃が主で、下位のチームになれば守備を主で求められるので、チームによって役割は変わります。
ただ、最近思っているのは、ゴールが取れていることで、ストライカーとしてのイメージがついてしまうのが怖いってことです。もちろん、動きを見てもらえれば完全なストライカーというわけではなく、下がってボールもよく触っていますし、あくまで自分としては中盤の延長線上という感覚でプレーしているのですが」
――攻撃的な8番のイメージというと、たとえばマンチェスター・シティのダビド・シルバとかですかね。
「シルバもそうだし、ケビン・デブライネ(マンチェスター・シティ)もそうですよね。あと、バルセロナのコウチーニョとか。上を見ればほんとにうまい選手がやっています。もちろん、いきなりそんなチームには絶対行けないことはわかっていますが、ベルギーリーグからもトップクラブへ移籍している選手はいますし、どこまでできるかは、今のチームでどれだけ自分ができるかにかかっていると思います」
――昨季はフランクフルトで、長谷部誠選手と同じチームで過ごせたことも財産になったのではないでしょうか。
「ハセさん(長谷部)と一緒にいられたのは、すごくラッキーでした。彼からサッカーで何かを学ぶというよりも、自分がうまくいっていないなかで、やっぱり日本人が近くにいてくれたことに救われました。ハセさんへのリスペクトの気持ちは持っていますが、僕にとっては長く代表のキャプテンを務めた人格者というイメージではなく、普通に仲のいい”お兄さん選手”みたいな。フランクフルトのチームメートもみんな、ハセさんのことを”パパ”呼んでいますから。本当に怒らず、僕の話をなんでも聞いてくれました(笑)。
――サッカー選手として学んだことはないですか(笑)?
「ハセさんのすごいところは、ドイツという異国の地で、チームや監督から絶対の信頼を置かれていたってことですね。それは本当に驚きましたし、すぐに監督の求めていることを理解し、チームメートに伝えるわけですから。ただ、それは僕にはできないこと。僕ももちろん言葉の勉強はしますけど、いくらしゃべれるようになっても、そんなキャラじゃないですから。僕はあくまで自分のプレーを見せたいというか、ハセさんとは似ても似つかないから、真似なんか到底できないです(笑)」
おとなしそうに見えるが、サッカーについて語り出すと想像以上に饒舌に自身の想いを口にしてくれた鎌田。スポーツ選手特有の”熱さ”は感じられず、淡々とピッチを駆け抜けゴールに向かう姿勢は、代表チームにもすんなり受け入れられそうな気配もする。
急がば回れ。鎌田には2022年カタールW杯へ続く道筋が、ぼんやりとだが見えているのかもしれない。