2016年のツール・ド・フランスは、サッカー欧州選手権(EURO)フランス大会と9日間も開催期間がかぶった。フツーに開幕しても興味どころをサッカーに持っていかれるので、ツール・ド・フランスはノルマンディー地方にある世界遺産モンサンミッシェル…

2016年のツール・ド・フランスは、サッカー欧州選手権(EURO)フランス大会と9日間も開催期間がかぶった。

フツーに開幕しても興味どころをサッカーに持っていかれるので、ツール・ド・フランスはノルマンディー地方にある世界遺産モンサンミッシェルというとっておきの開幕地を用意した。

■人口7万人の小国アンドラへ

そしてツール・ド・フランス9日目、いよいよEUROは決勝戦を迎えた。そのときツール・ド・フランスはピレネー山中の小国アンドラにいた。

「なんだかもう、大変な騒ぎよ。今日はサッカーでしょ。ウィンブルドンでしょ。そしてツール・ド・フランスよ」

アンドラ市街から北に数km上ったところにあるオルディノという石造りの町並みが美しい村で、ホテルの女将が悲鳴をあげていた。

このホテルは翌日の休息日を合わせて連泊するので、疲れをいやすためにちょっとだけいいところを予約した。美観地区にあるので無線キーを借りて、ボタンを押すと路地の車止めが地面に埋まって中に入れる。かなり落ち着いた感じの建造物だが、部屋の窓を開けたらものすごくうるさい。窓から見下ろせる広場に大型映像があって、EURO決勝のパブリックビューイングをやるということが分かった。
これまでも4年に一度はEURO決勝戦にどこかの町で遭遇した。このEUROはワールドカップよりも現地では盛り上がりを感じる。多分それは歴史的に戦争したり領地を争ったりしてきた隣国と戦うことが、より一層のナショナリズムをかき立てるのだからだと感じる。

■EURO決勝戦を楽しむ

いずれにしても午後9時に「フランス対ポルトガル」がキックオフ。窓の外のパブリックビューイングよりも部屋のテレビが数秒遅れているのが歓声で分かる。これが国際中継の「ディレイ放送」だ。映ってはいけないものがあったらスタジオで画面を変えるための手法だ。

キックオフ直前までツール・ド・フランスの原稿を書いていたボクは、広場に降りていってまずは道の反対側にあるバルでワインとスペイン風のおつまみ「タパス」を手にして観戦。前半でなんとポルトガルのキャプテン、クリスティアーノ・ロナウドが負傷退場して悲鳴が上がる。
その後はフランスの攻勢にみんな盛り上がるが、90分間で両チームとも得点を挙げることなく延長戦へ。土砂降りの雨がたまに広場に降り注ぎ、みんなは軒先に隠れたりバルに入ったりと大急ぎの観戦だ。

ところでボクが現場で率直に感じたのは、もちろん仲間と盛り上がって楽しんでいるのだが、日本の熱狂的な人たちに比べれば試合は絶対に勝たなきゃいけないというふうでもなく、主役は自分たちで楽しめればいいのさというオトナっぽさが感じられること。これはツール・ド・フランスの沿道と同じだ。

もちろんこれがフランス国内でやったら違っていたのかも知れないが、準決勝でもそんな雰囲気はあった。そんなにレースや試合に熱が入ってないのが悠久の歴史がある欧州的なのでは。

カルフールはエキップ・ド・フランス(サッカーのフランス代表)の公式スポンサーなのでツール・ド・フランスの広告キャラバン隊でも決勝に向けて臨戦態勢撮影:山口和幸

カルフールはエキップ・ド・フランス(サッカーのフランス代表)の公式スポンサーなのでツール・ド・フランスの広告キャラバン隊でも決勝に向けて臨戦態勢撮影:山口和幸

無線ボタンで車止めを沈めてクルマを乗り入れることができた撮影:山口和幸

無線ボタンで車止めを沈めてクルマを乗り入れることができた撮影:山口和幸

広場の隣もバルも満員撮影:山口和幸

広場の隣もバルも満員撮影:山口和幸