代表チームを率いる横井人輝監督(東海大)は「佐々木の投球に尽きる」とプロ野球界から注目を浴びる日本のエースを称えたが、同時に「こういうことができるヤツがいるから勝てる。大したものだ」と褒めたのが捕手を務めた森川大樹(法政大)の打撃だった。■…

代表チームを率いる横井人輝監督(東海大)は「佐々木の投球に尽きる」とプロ野球界から注目を浴びる日本のエースを称えたが、同時に「こういうことができるヤツがいるから勝てる。大したものだ」と褒めたのが捕手を務めた森川大樹(法政大)の打撃だった。

■ファウルで粘って逆転打放った法大・森川大樹、横井監督「こういうヤツがいるから勝てる」

 12日に新潟で開幕した日米大学野球選手権。侍ジャパン大学代表は、先発を務めた佐々木千隼(桜美林大)が先制を許しながらも、7回を投げて12奪三振1失点という快投を披露し、米国代表チームに2-1で逆転勝利した。

 代表チームを率いる横井人輝監督(東海大)は「佐々木の投球に尽きる」とプロ野球界から注目を浴びる日本のエースを称えたが、同時に「こういうことができるヤツがいるから勝てる。大したものだ」と褒めたのが捕手を務めた森川大樹(法政大)の打撃だった。

 1点ビハインドの5回裏。米国代表チームの先発ホウクが投げる時速150キロ近い動く球に手こずらされた日本代表は、ここまで相手の失策で1度出塁しただけで無安打に抑え込まれていた。

 だが、1死から吉川尚輝(中京学院大)の三塁内野安打をきっかけに流れが変わった。6番北村拓己(亜細亜大)が遊撃内野安打で続くと、京田陽太(日本大)は死球で出塁。1死満塁という願ってもない逆転のチャンスに打席に向かったのが、この日先発マスクをかぶった森川だった。

■一、二塁間を破る技あり適時打「“指示”だったんで、死にものぐるいで頑張りました」

 ここで「1点が欲しかった」という横井監督から飛んだ指示は「(ボールが)どこへ来ても一、二塁間を狙え」。打席に立った森川は「満塁で回ってきてゲッツー(併殺)が一番ダメだと思っていた。(ホウクの)動くボールでは外野フライはちょっと厳しい」とファウルで粘った8球目、スライダーに逆らわずにバットを合わせ、一、二塁間を破る逆転ヒットをライト前に運んだ。マウンド上で奮闘する佐々木を、自らのバットで援護射撃した。

 試合後、この場面について質問された森川は「監督から一、二塁間の指示はありましたし、千隼(佐々木)が頑張っていたので、なんとか打って逆転したいと思いました」と、はみ出るような笑顔を浮かべた。

 横井監督は辛口ジョークもはさみながら「指示して、そうできるもんではない。向こう(一、二塁間)を狙いながら、ファウルにしながら、打てるボールを呼び込んだ。あんまりバッティングの技術はないんですけど(笑)、ファウルにする技術は抜群。一、二塁間に打てるボールを投げさせた彼の執念。素晴らしい」と絶賛。「いや、“指示”だったんで、死にものぐるいで頑張りました(笑)」と応酬する森川に、横井監督が「そんな怖いか、オレ?」と聞き返し、会見場が爆笑につつまれる場面もあった。

■マスクをかぶっても「低めを意識」した好リードで支える

 捕手としても、12奪三振をマークした佐々木を上手にリードした。力みが抜けきらなかった序盤2回に1失点した佐々木に、終始「低めを意識しよう」と声掛けを実施。「ちょっとフォークが落ちきらなくて打たれてしまったので、代わりに低めに来ていたシンカーを上手く使いながら、徐々に調子がよくなってきたところで、またフォークを使い始めてゴロを打たせることができた」と機転を利かせて快投劇を支えた。

 米国代表チームの打撃を一番間近で見て感じたからこそ得たものもある。「アメリカの打者は代打でも初球からバントしてきたり、エンドランも仕掛けてくる」という予想外の一面を感じ、「ベルト付近の中途半端な(高さの)球は持っていかれてしまう。勝負にならない」と想像通りの一面も実感する中で、勝算は強気の投球で低めの制球にあると見た。

「しっかりはっきり自分の指示だったり、投手に意識を持たせないと」。残り4戦で何度マスクをかぶるか分からないが、この日の収穫は今後続くであろう長い野球人生の糧になることは間違いない。