渦中の日本代表アタッカーがポルトガル屈指の名門ポルトとのアウェー戦に臨んだ。連日、ポルティモネンセに所属する中島翔哉の移籍の可能性が国内外で盛んに報じられている。新天地は、イングランドのウルバーハンプトン・ワンダラーズが最有力のようだ…

 渦中の日本代表アタッカーがポルトガル屈指の名門ポルトとのアウェー戦に臨んだ。連日、ポルティモネンセに所属する中島翔哉の移籍の可能性が国内外で盛んに報じられている。新天地は、イングランドのウルバーハンプトン・ワンダラーズが最有力のようだ。



強豪ポルトとの試合でアシストを記録した中島翔哉

 ウルブスが戦うプレミアリーグは現在、世界随一のリーグと言える。ポルトガルのプリメイラリーガは全体のレベルでは大きく劣るが、この欧州最西端の国にはビッグ3と呼ばれるクラブがある。ベンフィカ、スポルティング、そしてポルトだ。3強は国内では図抜けた存在で、ベンフィカとポルトは2度の欧州制覇を誇る大陸の名門である。

 今季はセルジオ・コンセイソン監督の率いるポルトが首位を走っており、チャンピオンズリーグのグループステージでは首位通過を決めている。そんな強敵の本拠地での試合は、プレミアリーグというハイレベルな舞台に挑むかもしれない中島の今後を占ううえでも興味深い。

 雨のエスタディオ・ド・ドラガオンに両チームの選手が入場する。アウェーチームの最後尾は背番号10の中島だ。

 キックオフから試合の主導権を握ったのは、やはりポルトだった。ポルトガル代表MFダニーロ・ペレイラが中盤でボールを捌き、ヤシン・ブラヒミやオリベル・トーレスらが軽快に仕掛け、コンビネーションを駆使してポルティモネンセ陣内に攻め入る。

 ところが、流れに反して先制したのはアウェーチームだった。古巣のポルトに凱旋したジャクソン・マルティネスからのパスを受けた中島が左サイドからクロスを入れると、長身右ウイングバックのビトール・トルメナが頭でゴールを陥れた。さらにその7分後には、中島が相手のパスミスを拾って、ドリブルを仕掛けるも、ボックス内で転んでチャンスには結びつかなかった。

 すると直後にブラヒミが、前方からの跳ね返りをダイレクトでとらえて強烈なミドルを決めたように見えたが、オフサイドの判定でノーゴール。スタジアムにはホームサポーターの大きな口笛とブーイングが鳴り響き、創立125周年を迎えた強豪がさらに攻め立てる。そして23分、アレックス・テレスのCKにムサ・マレガがヘッドで巧みに合わせてポルトが同点に追いついた。

 中島はその後も、快速左ウイングバックのウィルソン・マナファにスペースを作ったり、スルーパスに抜け出してボックスへ侵入したり、大きなサイドチェンジを無理な体勢で完璧にトラップしたり、マルティネスに高精度のクロスを送ったりと、随所に光るプレーを見せた。

それに対してポルトは、ハーフタイムに熱血のセルジオ・コンセイソン監督がチームに喝を入れたのか、後半、見違えるような攻勢をかけ始める。57分にチキーニョ・ソアレスが押し込んで逆転すると、その2分後には中島が中盤でドリブルを止められ、そこからポルトは怒涛のカウンターを発動。ダニーロが持ち上がり、4対2の状況となって最後は左のブラヒミがネットを揺らした。65分にはマレガが駄目押しの4点目を奪っているが、試合の趨勢を決定づけたという意味では、3失点目につながる中島のミスは痛かった。

 本人もその点は理解しているようで、試合後のミックスゾーンでは「1-2のままでいけば(ポルティモネンセ勝利の)チャンスはありましたけど、(自分が)ドリブルを取られて、そこからすごくいい攻撃でゴールを決められた。反省したいです」と振り返っている。

 9分の先制点のアシストについては、「ポルトのCBふたりは強いけど、人数も足りていなかったし、フリーの選手がいたので、いい形でシュートになるようなパスを意識しました。瞬間の判断で、自然に」と話した。そして気になる移籍報道に関する質問には、次のように答えている。

「次に行くチームでもサッカーを楽しんで、より成長したいです。家族、チーム、代理人とも話しますけど、最後に決めるのは自分自身。(冬の移籍も視野に?)ウィンドウが開けば、誰もが考えることかな、と思います。でもまずはサッカーを楽しむのが大事です」

 もしかしたら、彼の心はすでに決まっているのかもしれない。純粋なサッカー少年が高いレベルを求めて、世界一のリーグを目指す。シンプルだ。

 ただし中島がこの1年半でポルトガルに大きな足跡を刻んだのも間違いない。1年目の昨季は10得点12アシスト。今季はここまで5得点5アシストで、9月の最優秀選手にも輝いている。だからこそ、さらなる高みへの道が拓けたのだ。

 取材を終えた後、スタジアムの外に出ると雨は止んでいた。そこからほど近い地下鉄の駅に向かう途中、ポルトのシャツを着た若者たちに、「ナカジーマ!」と声をかけられた。日本代表の10番は、ポルトガル北部の名門クラブのファンにもまちがいなく認められている。