今週末に行なわれる第3週で慶大は法大と対戦することとなる。昨年は春秋ともに勝ち点4だった慶大だが、唯一勝ち点を落としたのが春秋ともに法大戦だった。奇しくも昨季と同じ第3週、2カード目で対戦する法大戦の展望を3つの視点から見ていきたい。1.昨…

今週末に行なわれる第3週で慶大は法大と対戦することとなる。昨年は春秋ともに勝ち点4だった慶大だが、唯一勝ち点を落としたのが春秋ともに法大戦だった。奇しくも昨季と同じ第3週、2カード目で対戦する法大戦の展望を3つの視点から見ていきたい。

1.昨年の慶法戦振り返り


昨年の法大戦は投手陣が崩れた

春秋ともに引き分けがあり計7試合を行ったこのカード。慶大投手陣が計41失点と試合を作れなかったことが敗因と言えるだろう。特に先発が5回まで持ったのはわずか2試合。その2試合も6回まで投げきれず、試合を作れなかったということが厳しい試合展開に繋がってしまった。東大戦で先発した髙橋亮吾(総3・慶應湘南藤沢)、津留﨑大成(商3・慶應)の2人も昨季は打ち込まれ、今季初登板・初先発も予想される関根智輝(環2・城東)も春は2度KOされている。佐藤宏樹(環2・大館鳳鳴)についても3度の中継ぎ登板があるが、いい印象はないだろう。

今季は投手陣が守っていくスタイルなだけに、しっかり試合を作らなければ、昨年同様に苦戦することになるだろう。

試合先発投手先発の結果試合結果
春1回戦関根―2回4失点△5―5
春2回戦髙橋佑―5回1失点●4―5
春3回戦関根●2回3失点●4―8
秋1回戦髙橋亮●3回2/3 3失点●0―8
秋2回戦津留﨑―5回2/3 2失点△3―3
秋3回戦石井―4回1/3 3失点○9―5
秋4回戦津留﨑―3回2/3 3失点●6―7

打線を見てみると、郡司裕也(環3・仙台育英)が28打数8安打で打率.286、柳町達(商3・慶應)が25打数6安打で打率.240とまずまず。しかし郡司は2本塁打を放つなど長打率は.607、柳町は出塁率.355とそれぞれ役割は果たしている。東大戦では大爆発とまではならなかった2人だが、法大戦では期待したい。なお、昨年の法大戦7試合だけで岩見雅紀(H30総卒・現東北楽天)は5本塁打を荒稼ぎ。その内4本がサブマリン長谷川裕也(H30経卒・現JR東日本東北)だったことは非常に興味深いデータだ。

選手打率出塁率長打率
郡司.286.310.607
柳町.240.355.360

2.今季の両チーム振り返り

慶大は東大戦を通じてわずか1失点と完璧に赤門打線を封じ込めた。第1戦先発の髙橋亮が8回を被安打1の無失点に抑えれば、第2戦は先発の津留﨑が粘って7回1失点。中継ぎ陣は3イニングと少ないが、ここまで被安打0に抑えている。2試合を通じて許した長打は三塁打1本、与四球も3つに抑えれば奪三振は27と結果は文句なし。この好調を法大戦にもつなげてほしい。

一方の法大投手陣。立大戦3試合で大崩れこそなかったものの、得点した直後など、なんとか粘りたい場面で踏ん張れないケースが目立った。また、立大の三井健右(コミ2・大阪桐蔭)に2試合連発を食らうなど、手痛い一打を何度も浴びてしまった。長打は一本で試合を変える力を持つだけに、法大としては気を付けたいだろう。一方で、与四死球は3と抑えられている点が大崩れしない要因と考えられる。

先発に関して見ると、3試合中2試合で先発が5回持たず降板となっている。やはりエース菅野秀哉(キャ4・小高工)の復調が待たれるところだ。しかし、中継ぎについては9回2/3で2失点と安定。石川達也(キャ2・横浜)や朝山広憲(法3・作新学院)、三浦銀二(キャ1・福岡大大濠)の3人が登板したが、未登板の森田駿哉(営4・富山商)が控えていることも忘れてはならない。

いずれにせよ慶大も法大も、先発が試合を作るところから始めたい。


新打線の真価が問われる

破壊力不足とも言われた慶大打線は東大1回戦で15得点し、打の慶應健在をアピールした。主軸を任された嶋田翔(環2・樹徳)が打点5を挙げれば、中村健人(環3・中京大中京)が打率.500をマークするなど、新レギュラー陣が結果を残した。レギュラー陣だけでなく、代打で2点適時打を放った杉本京平(理3・中央中等教育)らレギュラーを狙うメンバー、あわや本塁打という当たりを放った正木智也(政1・慶應)らルーキーもアピールに成功した。打線の雰囲気はいいものの、ミスショットも散見され、相手の13四死球や記録に残らないエラーに助けられた面もある。法大1回戦で先発が予想される菅野は六大学随一の高いレベルの投手。プロも注目する逸材を打ち崩せるか、これからへの試金石となる。

法大打線は、あと一本が出なかったという印象が強い。ただ、紙一重の部分であるだけにいつ乗り越えてもおかしくはない。不動の4番中山翔太(人4・履正社)も一発こそ生まれていないがここまで打率.462と好調。そして、主に下位打線を打った中村浩人(営4・多良木)が打率.556と大当たり。特にこの2人は重点的にマークしておきたい。だが、昨年の慶法戦では向山、中山、川口凌(人4・横浜)や福田光輝(人3・大阪桐蔭)など日替わりヒーローに集中打を浴びるケースが目立っており、冷静な投球が必要になるだろう。

気になるのは盗塁数。昨年は春秋ともに1試合平均で1個を上回ったが、立大戦3試合で盗塁は0。企図数もわずか1度で、藤野隼大(経営3・川越東)に刺されている。東大戦では1試合3盗塁を許した郡司だが、今度こそ機動力を封じれるかも試合を左右するポイントになりそうだ。

3.なぜ法大は優勝できないのか

これまでリーグ歴代2位の優勝回数を誇る法大だが、前回優勝したのは2012年秋で10季も優勝から遠ざかっている。毎年日本代表にも選ばれるような逸材が何人も入学しながら、常勝軍団となれない理由はどこにあるのかをデータから考察する。

法大戦力分析 ※○数字内はリーグ順位、エースは規定到達中の最優秀防御率とした
シーズン勝率失点率エースエース防御率得点率打率
12秋.818 ①2.18 ①三嶋0.89 ①4.36 ②.259 ②
13春.818 ②2.75 ③船本2.18 ⑤6.50 ①.325 ①
13秋.455 ⑤2.77 ④船本1.13 ③3.15 ④.219 ⑤
14春.455 ⑤3.36 ⑤石田2.44 ⑤3.36 ⑤.233 ⑤
14秋.273 ⑤3.36 ④石田4.12 ⑨3.82 ④.219 ④
15春.667 ②4.33 ⑤森田3.60 ⑤4.33 ②.280 ②
15秋.429 ⑤4.21 ⑤熊谷3.63 ⑨4.43 ①.270 ①
16春.500 ③4.36 ④玉熊3.64 ⑦4.79 ②.298 ①
16秋.333 ⑤5.58 ⑤菅野5.68 ⑧3.92 ④.247 ④
17春.600 ③3.33 ②菅野1.39 ①3.83 ④.244 ④
17秋.500 ③4.86 ⑤菅野3.03 ⑥4.07 ⑤.286 ②

その要因は投手力の弱さにある。1試合当たりの失点率はほとんどのシーズンで4位以下となっている。規定投球回に達した投手でみても、たまに上位5傑へ顔を出す程度、最優秀防御率は前回の優勝以来、菅野が昨春に獲得したのみ。現在の3年以下はまだ規定投球回に達したことがなく、これからもウィークポイントになりそうだ。

打線も得点率で見ると、上位に食い込む年と苦しむ年とがほぼ同じくらい。個人で見ると打率10位以内に入る選手を複数排出するものの、チーム全体の打率では得点率とほぼ同じ順位となっている。法大が課題とする全体のチーム力が上がらない限り、打線も伸び悩むということだろう。


ポテンシャルの高いチームだけに隙のない戦いで対抗していきたい

法大は立大戦で勝負どころを捉えきれずに勝利を挙げられない、苦しい戦いを強いられた。発揮できていない底力を目覚めさせないよう、眠れる獅子を寝かせたまま連勝したい。

(記事・尾崎崚登)

対戦成績(第2週終了時点)
 慶大明大法大立大早大東大
慶大 第6週第3週第4週第8週○15-1
○5-0
明大第6週 第7週第5週第3週○○
法大第3週第7週 ●△●第6週第5週
立大第4週第5週○△○ ○○第7週
早大第8週第3週第6週●● 第4週
東大●●●●第5週第7週第4週 
順位表(第2週終了時点)
順位大学勝ち点試合勝率
立大1.000
慶大1.000
明大1.000
法大0.000
早大0.000
東大0.000