いやはや、バドミントンが熱い。 12月1日に終了した全日本総合選手権は、当日券が売り切れる盛況ぶり。NHKは男女単複、混合複と、すべての決勝を中継する熱の入りようで、見るスポーツとしてある程度定着したようだ。現在、女子ダブルス世界ラン…

 いやはや、バドミントンが熱い。

 12月1日に終了した全日本総合選手権は、当日券が売り切れる盛況ぶり。NHKは男女単複、混合複と、すべての決勝を中継する熱の入りようで、見るスポーツとしてある程度定着したようだ。



現在、女子ダブルス世界ランク1位の福島由紀(写真左)、廣田彩花のフクヒロペア

 各民放のスポーツニュースも連日かなりの時間を割き、取材陣もプレスルームが満席になるほど詰めかけ……これが30年前なら、日本最高峰の大会でも、取材陣はわれわれ専門誌と通信社くらい。結果といえば、一般紙の片隅に決勝のスコアが素っ気なく載る程度だった。

 競技のメジャー化は日本バドミントン界の悲願。なにをもってメジャーというかは意見の分かれるところだが、こと注目度に関しては、かつての比じゃないと言っていい。

 それもこれも近年、日本のバドミントンが強いからだ。2016年、リオ五輪でのタカマツこと高橋礼華/松友美佐紀ペアの金メダル獲得に続き、17年は世界選手権で女子シングルスの奥原希望が優勝、女子ダブルスの福島由紀/廣田彩花(フクヒロ)が準優勝。

 そして今年の世界選手権では、男子シングルスの桃田賢斗、女子ダブルスの永原和可那/松本麻佑(ナガマツ)が優勝、おまけに、女子団体のユーバー杯も優勝と、毎年世界一に輝いている。世界ランキング(WR)を見ると、男子シングルス1位の桃田、女子ダブルス1位のフクヒロを筆頭に、各種目とも日本勢がトップ10にぞろぞろいるのだ。

 ことに女子ダブルスなどはフクヒロ、タカマツ、ナガマツが3位までを独占し、10位までに5ペアがランクインする隆盛ぶり。いまや日本は、バドミントン王国といってもいいのである。

 そして今週末からは、国内の男女トップ10チームによる団体戦、S/Jリーグが開幕する。1979年、男女各5チームで創設された日本リーグは、その後、6チーム、8チームと規模が拡大し、2016年には「BADMINTONの競技発展を担うべく、前身の日本リーグの意思を受け継ぎ新たな価値創出を目指し、競技力向上と普及に努めていく」ことを理念に、S/Jリーグという名称に衣替えした。S/Jとは「スマッシュ」「スピード」「シャトル」のS、バドミントンのスピード感を表す「/(スラッシュ)」とJAPANの「J」を組み合わせたものだ。

 そしてこのS/Jリーグ、今季から大きな変革がある。まず従来は、8チームの総当たりで優勝を争っていたが、今季から参加チームが男女とも+2の10(男女とも、下部リーグにあたる日本リーグで昨年の上位2チームが自動昇格)。それを昨年の成績をもとに、5チームずつS、Jの2ブロックに分け、各ブロック上位2チームのトップ4が順位決定戦で優勝を争う(2019年2月16、17日)方式に変わったのだ。また今回から、日本代表のオフィシャルスポンサーであるJTBが冠スポンサーとなっている。

 近年のリーグでは、海外トーナメントの日程との兼ね合いで、トップ選手のリーグ出場が難しいケースもあった。

 たとえば昨年なら、奥原の故郷・長野県大町市で、所属する日本ユニシスの試合が組まれていたが、過密日程に故障も重なり、奥原は会場に姿を見せていない。凱旋をお目当てにしていたファンにとってはがっかりだろう。かといって過密日程で無理をすると、選手にもかなりの負担を強いることになる。そもそも「競技力向上」を目指す試合なのに、もしトップ選手にアクシデントがあったら、目も当てられない。

 ただ2ブロック制の採用で、ブロックリーグの試合数は4。トップ4で決勝まで進んだとしても総計6で、海外トーナメントの日程にも配慮しているから、代表選手への負担は多少軽減されるといっていい。

 8日に富山県高岡市で開幕するリーグには、2日間で男女各10チームが勢ぞろいする。10チームの顔ぶれやスケジュールはリーグのウェブサイトを参照してもらうとして、男子のJブロックでは、2日目に日本ユニシス(前年2位)とNTT東日本(同3位)がいきなりの対戦だ。

 ダブルス2、シングルス1で争われる団体戦。NTTには全日本総合で優勝した桃田がシングルスにいて、ユニシスはWR8位の遠藤大由/渡辺勇大、11位の井上拓斗/金子祐樹とダブルスに自信を持つ。ここを制した方が、Jブロックを優位に進みそうだ。

 ただし、12月12日から16日までは、ワールドツアーファイナル2018(中国・広州)が予定されている。BWFワールドツアーの年間ポイント獲得上位者によって争われる年間世界一決定戦で、NTTからは桃田、ユニシスからは遠藤/渡辺が出場。両チームの監督は、コンディションに配慮しながらの選手起用に頭を悩ませるだろう。

 Sブロックは、前年優勝のトナミ運輸と4位の日立情報通信エンジニアリングが軸か。ことにWR3位の園田啓悟/嘉村健士、9位の西本拳太と、単複に強力なエースのいるトナミがここをトップ通過しそう。

 女子のSブロックでは初日に、前年優勝の日本ユニシスと岐阜トリッキーパンダース(トリパン)が対戦する。トリパンは日本リーグからの昇格組だが、現在WR1位のフクヒロが再春館製薬所から移籍。トリパンは翌日も、前年4位のヨネックスとの対戦が組まれており、台風の目になるかもしれない。

 Jブロックは世界チャンピオンのナガマツ、さらにWR6位の米元小春/田中志穂と、強力なダブルス2枚を持つ北都銀行が強く、前年2位から悲願の初優勝へどう船出するか。

 また、フクヒロの抜けた再春館製薬所だが、シングルスにWR2位の山口茜、さらにダブルスにも14位の成長株・志田千陽/松山奈未がおり、12月23日の北都銀行戦が大きな山になりそうだ。

 なんといっても、世界トップクラスの対戦が見られるのがS/Jリーグの魅力だ。たとえばフクヒロとタカマツならばWR1、2位の激突だし、ナガマツとフクヒロなら、世界選手権決勝の再現というよだれの出るような顔合わせになる。今季スタートした卓球のTリーグも世界水準の対戦があるが、昨年のS/Jリーグは最大で5500人、1会場平均で2355人を動員と、集客数ではいまのところ、バドミントンに軍配が上がる。

 ただ、卓球の1マッチの平均所要時間が40分弱なのに対して、バドミントンはとくに女子の場合、1試合1時間超もざらだ。3マッチとなると4時間超えもめずらしくなく、そのあたりは覚悟した方がいいかもしれない。

 また現状では、上位と下位の力の差が顕著で、ブロックリーグでは一方的な展開もありうる。ただそのあたり、有力チームの監督は、「勝負どころの試合ではエースに頼らざるを得ないが、下位との対戦では期待の若手を起用するチャンスになる」と前向きにとらえている。

 前回、試験的に別大会として行なわれたトップ4トーナメントで優勝した、再春館製薬所の山口がこんなふうに話していた。

「バドミントンが、もっとメジャーになればいいと思います。じゃあ、メジャーってなんだろう……と考えたとき、ひとつの答えは、老若男女すべての方に、自分が大好きなバドミントンというスポーツに興味を持ってもらうことじゃないか、と」

 世界ランキング上位者がずらりとそろったリーグ戦。ちなみにワールドツアーファイナルには、女子からもユニシスの奥原とタカマツ、再春館の山口、北都銀行のナガマツらも出場する。つまりテニスでいえば錦織圭、大坂なおみクラスが各チームにいて、それが団体戦を争うという豪華版なのだ。さあ、王国のリーグを見に行きましょう。