8日の広島戦(甲子園)で阪神の藤浪晋太郎投手が161球を投げたことが、賛否両論を呼んでいる。■3回までに5失点も8回まで続投、「藤浪は真摯に受け止めないといけない」 8日の広島戦(甲子園)で阪神の藤浪晋太郎投手が161球を投げたことが、賛否…

8日の広島戦(甲子園)で阪神の藤浪晋太郎投手が161球を投げたことが、賛否両論を呼んでいる。

■3回までに5失点も8回まで続投、「藤浪は真摯に受け止めないといけない」

 8日の広島戦(甲子園)で阪神の藤浪晋太郎投手が161球を投げたことが、賛否両論を呼んでいる。近年のプロ野球では滅多に見ることのない球数。藤浪が3回までに5失点を喫しながら、金本知憲監督が“懲罰”的な意味も込めて8回まで続投させたこともあり、批判的な声も少なくない。その采配は、厳しすぎるものだったのか。

 ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーした野口寿浩氏は「元凶となったのは藤浪」と厳しく言い切った上で、「藤浪が真摯に受け止めて、反省しなきゃいけない部分だと思います」と指摘。プロ4年目で苦しむ右腕に「ここで1回つまずいておいて、5年後くらいに『あの時の経験が生きてるな』となればいい」と期待を寄せた。

 藤浪は8日の広島戦で、初回先頭の田中に対して8球粘られた末に四球で歩かせると、1死二、三塁となってからルナにも四球を与えて満塁のピンチ。松山は空振り三振に仕留めたものの、鈴木にレフトへのタイムリーを浴びた。江越の失策も絡んで2失点。さらに、重盗で3点目を失った。野口氏は「金本監督も言っていたように、立ち上がりは最悪だった」と指摘する。

「野手もいくつかエラーしたけど、イニングの先頭のフォアボールというのはピッチャーのエラーみたいなものですから、ミスがミスを呼んでいるという感じでしたよね。ヨーイドンで、粘られたとはいえ、いきなりフォアボールを出してしまうと、自分のリズムもつかめない、チームのリズムもつかめない。それを金本監督が怒っている」

 2回は田中にソロホームランを被弾。さらに、3回は先頭・丸のニゴロを大和がファンブルし、三盗を許した後に松山の犠飛で5点目を失うなど負の連鎖は止まらず、球数もかさんでいった。

■「守っていた野手は金本監督と同じことを考えていたのではないか」

「藤浪には可哀想な部分もありました。田中のソロホームラン以外は全てミスが絡んでいたので。5失点目も大和のエラーから始まって、三盗された。三盗というのは、ピッチャーと二遊間のエラーみたいなものですからね。可哀想といえば可哀想でしたけど、でも、その元凶となったのは初回のフォアボールです。あの時に守っていた野手はどう思っていたかと考えると、特にベテラン選手などは金本監督と同じことを考えていたんじゃないかと僕は思います。

 打たれたならまだしょうがない。勝負の中で打たれたのなら仕方ないですけど『フォアボールとはどういうことだ』と。守ってる野手もそう思っていたはずです。そうやって考えると、金本監督に批判的な人もいますけど、“ごもっとも”(な采配)だったのではないかなと。それで球数をたくさん放らせたというは、また別問題です。それとこれとをくっつけてしまうから、金本監督を批判する声が出てくるわけで。元凶は何なんだと考えると、(藤浪の)つまらないミスだと。そういうことでしょう」

 野口氏は藤浪に同情しつつも、厳しい見方を示した。そう考えるのは、金本監督が藤浪に期待していることを感じるからだという。

「もちろん、球数は多かったですよね。でも、球数を多くしてるのは、藤浪自身でした。金本監督が言うように、藤浪は出来ないピッチャーではありません。出来るピッチャーだからこそ、もどかしいんだと思います。金本監督がどうということではなくて、藤浪が真摯に受け止めて、反省しなきゃいけない部分だと思います。そういう原因を作ったのは藤浪本人ですから」

 これが、藤浪の“覚醒”に向けて1つのきっかけになることはあるのか。野口氏は「これでピリッとしてくれればいいですね。ピッチングのメカニズムなどは本人とピッチングコーチしか分からない部分ではありますけど、それがずれていたら、いくら球数を投げていても同じ。何がどう悪いのかというのをちゃんと原因究明して、突き詰めて直していかないと」と指摘する。

 藤浪は9日に出場選手登録を抹消された。前半戦は登板機会がないための措置だが、オールスターに選出されているだけに、後半戦で結果を残すためには“突貫工事”が必要になるという。

■カギを握るオールスタブレーク、4年連続2桁へ「十分に取り返せる可能性はある」

「オールスターに出なければミニキャンプでも張ることが出来ます。抹消されて(再登録まで)10日間あるので、走り込みとフォームの微調整をできますけど、藤浪はその真ん中でオールスター出場のために抜けないといけない。なので、映像を見るなりして、早めに原因究明を進めていかないといけません。去年は『キャッチャーの奥まで投げていくイメージ』でいいボールが来ていましたが、今年は違うらしい。実際に話を聞いたら、今年はそういうボールではないと、阪神のキャッチャー陣が言っていました。そこをもう1度思い出して、どうすればいいのか(考えなければいけない)。必ず原因があるはずですから」

 ただ、この10日間でしっかり修正できれば、高卒4年連続2桁勝利も不可能ではないと、野口氏は見ている。そして、この苦しみこそが、藤浪をさらに大きく成長させることになると期待する。

「逆に言えば、4年目でつまずいておくのは、彼にとっていいのではないかと思います。(プロ生活の)先は長い。あと1、2年しかできない選手じゃないですから。ここで1回つまずいておいて、5年後くらいに『あの時の経験が生きているな』というふうになればいいですよね。いい試練が訪れたのではないかなと。今までが順調すぎたので。

 このオールスターブレークで修正が効くかどうかで、今年も10勝できるかが決まる。彼自身は(抹消された)9日からオールスタブレークに入った。普段のオールスターブレークとは違う“鍛錬のオールスターブレーク”に入ったわけです。そこをどう捉えて、どう噛み砕いて、どう実行してくか。それができれば、まだ試合数も半分近く残っているので、十分に取り返せる可能性はある。(2桁まで)あと6勝ならいけます。チームとしても、そうなってくれないと上にいけないですから」

 大きな話題を呼んだ161球が、どのような意味を持つのか。ここから先の藤浪に大きな注目が集まる。