チャンピオンズリーグ(CL)はグループリーグの第5節を終了し、全8グループ中5グループで上位2位以内が確定。計12チームがベスト16入りを決めた。逆に、最終節を待たずに13チームの脱落が決まった。上位と下位との格差が広がる傾向は年々深…

 チャンピオンズリーグ(CL)はグループリーグの第5節を終了し、全8グループ中5グループで上位2位以内が確定。計12チームがベスト16入りを決めた。逆に、最終節を待たずに13チームの脱落が決まった。上位と下位との格差が広がる傾向は年々深まるばかり。これでは、CLは決勝トーナメントでベスト16以降の戦いを見れば十分という話になりかねない。

 すでにベスト16入りを確定させたのは、アトレティコ・マドリード、バルセロナ、レアル・マドリード(以上スペイン)、ドルトムント、シャルケ、バイエルン(以上ドイツ)、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド(以上イングランド)、ローマ、ユベントス(以上イタリア)、ポルト(ポルトガル)、アヤックス(オランダ)の12チームだ。

 残りの4枠を、トットナム・ホットスパー(イングランド)とインテル(イタリア)=グループB(1枠)、ナポリ(イタリア)、パリ・サンジェルマン(フランス)、リバプール(イングランド)=グループC(2枠)、リヨン(フランス)とシャフタール(ウクライナ)=グループF(1枠)で争う展開だ。



AEKアテネを破り、決勝トーナメント進出を決めたアヤックス

 ベスト16入りを決めた顔ぶれの中で、もっとも新鮮というか、懐かしく映るのはアヤックスだ。その決勝トーナメント進出は2005-06以来、実に13シーズンぶり。オランダ勢としても2006-07のPSV以来、12シーズンぶりとなる。

 アヤックスといえば、過去4回、欧州一に輝いた実績がある古豪だ。なにより世界に向けて誇るべきは、サッカーの従来の価値観を180度変えたとされるトータルフットボールをひっさげて、チャンピオンズカップで3連覇(1970-71、71-72、72-73)を達成したヨハン・クライフの時代になる。

 ただし、1994-95シーズンの優勝、さらには翌シーズンの準優勝も、欧州サッカー史にしっかりと刻印される画期的な出来事だった。大会の名称がCLに変更されてから今シーズンで26シーズン目を迎えるが、インパクトの度合いは、その時のアヤックスが断トツの一番だ。

 知名度の低い選手で固められたチームが、中盤ダイヤモンド型3-4-3を最大の拠りどころに、攻撃的サッカーで快進撃を続ける姿は痛快そのもの。予算規模の小さなクラブがビッグクラブに対して番狂わせを繰り広げるという、いまの欧州サッカーにはまったくない魅力を、当時のアヤックスは存分に振りまいていた。

 今季のアヤックスにそこまでの力があるかといえばノーだが、好チームであることは確かだ。両ウイングを使い、ボールの支配率を高めながらパスで崩すサッカー。見栄えのいい、目に優しいサッカーだ。

 中心は中盤の深い位置から組み立てるフレンキー・デ・ヨング。UEFAネーションズリーグの戦いで評価を上げているオランダ代表の期待の星でもある。身長180cmながら、動きは小柄な選手のようで、けれんみのないシャープなプレーを売りにする。姿勢がスッとしていて視野が広い。

 バルサの4番のポジションあたりが似合いそうな選手で、そのバルサや、現役時代にバルサで4番をつけてプレーしたジョゼップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティが、100億円以上とも言われるビッグマネーで獲得を狙っているという。いまもっとも旬な21歳だ。

 もうひとり、同じく21歳の右ウイング、ダビド・ネレスも特別な選手だ。右サイドでタテに抜いて出るプレーを得意にする右利きの選手は世界的に見ても貴重だが、このブラジル人選手は、そこが天職に見えるような切れ味鋭いドリブルを得意にする。

 右ウイングに右利きのいい選手がいるチームは、左右のバランスがいい。ルイス・フィーゴがいた時代のバルサとレアル・マドリードがその典型で、1994-95のアヤックスにも、フィニディ・ジョージというナイジェリア代表選手の右ウイングがいた。

 ネレスは、そういう意味では右サイドでのプレーを不得手にするブラジル代表の先輩、ネイマールより貴重な存在に見える。

 この他にアヤックスは19歳のマタイス・デ・リフト、21歳のドニー・ファン・デ・ベークら期待の若手を抱えるが、冬の移籍市場でビッグクラブに奪われる可能性もある。全員チームに残れば、最高ベスト4はあるかもしれないが、ひとり欠けるごとに可能性は萎む。

 移籍市場が閉じるのは1月末。アヤックスの今季の可能性は来年の2月にならないと正確には判明しない。とはいえ、直近ではグループ首位通過を懸けて戦う次戦のバイエルン戦に目を凝らしたい。アヤックスの力を占うには申し分のない相手。ちなみに1994-95のアヤックスは、準決勝でバイエルンを通算5-2で撃破。決勝でもその余勢を駆ってミランに勝利し、欧州一に輝いた。

 今季の欧州サッカーは、スーパーチーム不在だ。4連覇を狙うレアル・マドリードは、クリスティアーノ・ロナウドをあっさりユベントスに放出。その結果、成績不振に陥ると監督のフレン・ロペテギを解任と迷走中。バルサもさっぱり強そうに見えない。そのサッカーはずいぶん小粒になってしまった。

 となれば、順番的にはバイエルンになるのだが、国内リーグ戦では出だしで大きく躓き、流れに乗れていない。マンチェスター・シティもCL的なスケールで見ると、まだ何か足りない。昨季準優勝のリバプールと、金満クラブのパリSGは、グループリーグでナポリと三つ巴の接戦を展開中。現時点で、欧州一をイメージさせるサッカーはできていない。

 欧州一を、今季ほど占いにくいシーズンも珍しい。グループリーグは低調な戦いも多かったが、決勝トーナメントでは、各チームの実力差がないだけに逆に面白い展開が予想される。

 そんななかで不気味な存在として映るのが、今季も乱れることなく手堅いサッカーを安定して見せつけているアトレティコだ。接戦に強い。穴がないので大崩れがない。決勝トーナメントの戦いで、もっとも手堅い試合ができそうなチームである。

 ブックメーカー(ウイリアムヒル社)の優勝予想では、マンチェスター・シティ、バルサ、ユーベ、パリSG、バイエルン、レアル・マドリードに次ぐ7番目。倍率的(15倍)にも狙い目のポジションにある。とりわけマンチェスター・シティ、パリSGにとっては、百戦錬磨のアトレティコは厄介なチームに見えるはずだ。

 アトレティコ。選手が冬の移籍市場で引き抜かれなかった場合のアヤックス。さらに言えば、三つ巴のC組を勝ち抜いてきた場合のナポリ。このあたりが16強の中で、面白い存在に映る。

 低調だったグループリーグから実力伯仲のトーナメントへ。これまでは見逃しが許されたが、来年2月からは禁物。本命は、その時のもっとも調子のよいチームになるが、いまは五里霧中だ。皆目見当がつかない。繰り返すが、今季ほど読めないシーズンも珍しい。