試合終了を告げるブザーが鳴り、氷上に青色のグローブとスティックが舞う。優勝をかけて挑んだ明大との一騎打ち。「ずっと首位を保ってきて舞台を整えてきたんですけど、結局最後の最後で負けてしまった」(DFハリデー慈英副将、スポ4=埼玉栄)。王者・…

 試合終了を告げるブザーが鳴り、氷上に青色のグローブとスティックが舞う。優勝をかけて挑んだ明大との一騎打ち。「ずっと首位を保ってきて舞台を整えてきたんですけど、結局最後の最後で負けてしまった」(DFハリデー慈英副将、スポ4=埼玉栄)。王者・明大の連覇を阻止することはかなわず、もう手の届くところまで来ていた6年ぶりの優勝杯は早大の手をするりと抜けていった。「勝負の時の運がこちらに味方してくれなかった」(FW矢島雄吾副将、スポ4=北海道・駒大苫小牧)とアンラッキーなシーンも多く、リーグ最終節は1-7と大差での敗戦となった。

 前節の中大戦とは比べ物にならない素晴らしい立ち上がりを見せ、鋭いシュートで序盤から相手ゴールを脅かす。しかし、7分17秒、PK(※2)時に明大のシュートがネットに突き刺さると、そこから暗雲が立ち込める。明大の鮮やかな攻めで次々に得点を奪われ、開始から13分でスコアは既に0-3。ここで流れを変えるために早大はゴーリーをGK谷口嘉鷹(社3=東京・早実)からGK村上隼斗(スポ1=北海道・駒大苫小牧)に変更。村上は公式戦の出場が少ない中での出場であったが、今後の成長を予感させる堂々とした守りを見せ、バックアップキーパーとしての役目を十分に果たした。しかし、さらに点を奪われ「1ピリで勝負がついてしまった」(内藤正樹監督(平3二文卒=北海道・釧路湖陵)と、0-4と大きなビハインドを背負い第1ピリオド(P)を終えた。


この日唯一の得点を挙げた青木は、ベスト6に選出された

 何としてでも1点が欲しい早大であったが、明大のGK香田凌辰(2年)の好守に全くゴールをこじ開けることができない。すると、明大の正確なロングパスに翻弄(ほんろう)され、手痛い追加点を献上。39分01秒にやっと、ここまで得点を量産してきた第2セットのFW澤出仁(スポ2=北海道・武修館)、FW杉本華唯(スポ1=北海道・駒大苫小牧)の奮闘で、ゴール前でチャンスを生み出す。ラストはFW青木孝史郎(スポ3=埼玉栄)が押し込み、反撃に出る。だが、スコアは1-6。第1Pの4失点が早大に重くのしかかる。逆転の可能性が低くなった第3P。それでも全員が最後まで足を動かし、果敢にゴールを狙い続けた。「ワセダのホッケーはできたと思います。その点では悔いはないです」(FW鈴木ロイ主将、教4=北海道・苫小牧東)。点差はついてしまったが、充実した試合内容でリーグ最終節を終えた。


強力なリーダーシップでチームの快進撃を引っぱった主将・鈴木

 あと一歩優勝には届かなかったが、5年ぶりのリーグ2位と近年では最高位の成績で秋を締めくくった早大。春の関東大学選手権は例年通りの4位、早慶戦では42大会ぶりの歴史的敗北を喫した今年のチーム。決して下馬評の高くない中で幕を開けた秋のリーグ戦、久々に優勝争いに絡み、全日本選手権出場の切符を手にしたことは大きな財産といえるだろう。2位という結果について「誇らしい結果だと思っている」と矢島は試合後に爽やかに語った。また、「スピーディーでアグレッシブなワセダのホッケーが本当に形になってきた」(鈴木)と、リーグ戦で得た収穫は計り知れない。今までは歯が立たなかった上位3校の明大、中大、東洋大のいずれにも勝ち越し、勢力図に変化をもたらした今大会。1か月後に控えた全日本学生氷上競技選手権(インカレ)にも胸を張って挑めるに違いない。北海道・苫小牧の地で行われる集大成のインカレでは5年ぶりの頂点に登りつめ、最後はエンジのグローブが宙を舞うことを期待したい。


早大はリーグ戦を2位で終えた。鈴木ロイ主将(左)とハリデー慈英副将

(記事 小林理沙子、写真 糸賀日向子、細井万里男)






※( )内はシュート数

結果
早大ピリオド明大
0(14)1st4(12)
1(9)2st2(8)
0(12)3st1(7)
1(35)7(27)
得点経過
チーム時間ゴールアシスト1アシスト2PK/PP
明大07:1721府中93池田22徳田PK
明大11:1010高橋72宮田91佐久間
明大13:0413松本19牛来
明大18:1710高橋13松本8相馬
明大28:0311所8相馬
明大39:0193池田21府中PP
早大39:518青木19杉本31大崎PK
明大55:4793池田21府中
※PKはキルプレー、PPはパワープレー、PSはペナルティショットを指す
 なお、PK/PPの表記は早大にとってPKに当たるかPPに当たるかを表記するものとする
早大メンバー
セットFWFWFWDFDF
21矢島17高橋16鈴木33坂本25篠田
19杉本8青木1澤出29ハリデー18羽場
12飛田9生江14小澤田31大崎13吉野
4チェース 11加賀美24河田27前田10住友
GK34谷口 B-GK39村上

コメント

内藤正樹監督(平3二文卒=北海道・釧路湖陵)※囲み取材より抜粋

――リーグ戦の最後で勝ちきれませんでしたが、この試合をどう振り返りますか

きょうの試合に関しては不運な部分もあったし、1ピリで勝負がついてしまったかな。2ピリ以降ほぼイーブンにできたので、1ピリでアンラッキーが続いて向こうの気持ちを乗せてしまったね。そこが厳しいところかなと思います。ホッケー自体は悪くなかったね。この間の試合よりは良かった。運動量も戻ってきてるし。やっぱり優勝経験なしで最終日に一騎打ちになるというのは、慣れてない部分があるのかもしれないですね。

――いい形はありましたが、シュートが入りきりませんでしたね

明大の運動量も以前の試合より上がってきているというのは感じましたね。しっかり一対一を崩さないで、守りもサボっていなかったですね。たまにサボってくれるんだけれどね。あとは、長いパスにきょうは対応しきれなかったのかな。最初の反則も長いパスから起こって、嫌な感じがしましたね。ディフェンスの裏を取りにきた動きに、早く気がつくことができなかったのが、大きかったかなと思います。

――早い段階でゴールキーパーの交代がありましたが、明大の流れを断ち切ろうという意図でしょうか

ちょっとこの二試合で、横から(シュートが)入っているのでね。前のいい位置から打たれて入るのは仕方ないと思うんですけど、横から決められると相手を乗せる原因にもなりますからね。どうしてもベンチもがっくり来るところもあるので、ゴールキーパーはちょっとかわいそうだったかなと思うところもあるけれどね。

――代わった村上選手の動きが良かったですね

よく頑張ってましたね。ノーマークみたいなシュートも、2、3本止めていましたし。それはきょうの大きな収穫かなと思います。インカレでもこういうことは起こりうるので、バックアップキーパーとしては良くやったと思います。

――優勝は逃しましたが、近年では最高の2位という結果となりました。どういった収穫があったでしょうか

いい点を言えば、今日は負けてしまいましたが、明治さんにも3回中2回勝てていますし。この間6-2で勝って、きょうは1-7だったので、やっぱり明大は強いなという感じですけれども。大きな収穫ですね。あとは、今までどうしても勝てていなかった、中央さんにも6年振りくらいで勝っているので。これで勝てないチームがないということは大きな自信になりましたね。今まで勝っていないと引いてしまうところがあったんだけれども、これでどこと当たっても普通の気持ちでできるのではないでしょうか。

――全日本選手権では、アジアリーグのチームと戦うことになりますね

折角実業団のチームと試合ができるので、学生の意地を見せたいなと思いますね。たぶん日本製紙クレインズかな。ちょっと驚かせたいなと思っています。

――準備としては、今までのように陸トレや基本の徹底になるのでしょうか

そうですね。それしかないですね。今日もちょっと雑なところがあったので、その辺の精度を高めないと実業団にはとても通用しないですね。体も強いし。うちはそれしかやっていないですし、やるだけでここまで来れたという自身もありますので、またパス、レシーブを大事にして、パックを一生懸命守って、数多くシュートを打ってゴール前に詰める、という誰でもできるホッケーを誰よりもちょっとずつ上手にやりたいと思います。

――インカレでの最初の照準は再び明大との対戦となる、準々決勝だと思います。次は勝てますか

勝ちます。勝たなければいけないと思っています。彼らも相当悔しがってはいるので、たぶん気持ちを込めて準々決勝を迎えられるのではないかと思います。そのためにも1、2回戦を勝って、いい流れをつかみたいと思います。負けっぱなしは嫌なんでね。最後にタイトルを取りたいと思います。

――立ち上がりがすごいエネルギッシュで素晴らしかったですが、やはりあそこで点が欲しかったですね

点数欲しかったですね。折角いいシュートを打って流れがこちらに向いたんだけれども、長い一本のパスで反則を取られちゃうこともあって、あの辺から嫌だなという感じはありましたね。大量失点にも繋がってしまいました。明大はパスもレシーブも上手なので、長いパス一本で(流れを)変えることができますね。それをきょう思い切り見せつけられたということでしょうか

――きょうは過去二戦とは違うなという感じはありましたか

そうですね。明大の運動量は多かったですね。守りもきっちりバックチェックしましてですね。うちはなかなか効果のあるシュートを打てなかったということでしょう。うちのシュートを打つタイミングも遅かったですし、明大の戻りもしっかりしていて、それが重なって効果的なシュートを打てなかったということでしょうか。

――前の試合とこの試合は精神的なものがあったんでしょうか

緊張するなというのは無理なんですけれども、緊張できるのも優勝争いをしているからなんだと話はしたんですが、やり慣れていないことはしょうがないですね。ただ、これで経験できたので次は普通にできるんじゃないかと思います。おんなじ悔しい思いはしたくないだろうと思うので、やってくれるでしょう。まあ、順番があります。一気にかけ登れれば一番いいんでしょうけど、まずは一回悔しい思いして、優勝争いをできるチームにまずはなったというところでやめておきなさいと、ホッケーの神様が言っているんでしょう。それを突破するのは自分たちの実力しかないので、今度は神様がまったを掛けているところをこじ開けていくしかないですね。

――初めて優勝争いを経験して、追われる立場になったこの経験を、どう生かして欲しいですか

同じ状況はもう何度もありますので。準々決勝、準決勝、決勝と行けばこの経験が生きてくると思います。生かさないといけないですね。早稲田大学なので、そこそこ考える力はあるので。折角いい頭があるんだから、そこを考えて欲しいと思います。

FW鈴木ロイ主将(教4=北海道・苫小牧東)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

早稲田のホッケーはできたと思います。その点では悔いはないです。

――失点後についてはいかがでしたか

アンラッキーな部分はあったので気にしないようにという声かけはしてました。

――足は最後まで動いていましたが

本当にそうだと思います、本当に最後のフィニッシュの所までが行けませんでした。

――試合後はどのような話をしましたか

まずはこの準優勝という結果を誇って僕たちだけで達成したものでもないのでしっかりスタッフ陣とか父兄、OBの人に感謝を込めて大きな声で最後スリーチェスターやろうという話はしました。

――今リーグの収穫と課題を教えてください

収穫という点で言ったら早大のホッケーが形になってきたというか、スピーディーでアグレッシブというホッケーが本当に形になってきたというのが一番の収穫です。反省点はPPの精度とか・・・ちょっと思いつかないので、これからミーティングとか重ねて修正して、本当に良い点の方が多かった、収穫の方が多かった大会だと思います。

――全日本選手権への意気込みをお願いします

格上相手ですけど、必ずアジアリーグのチームを倒すという強い気持ちを持ってこれから練習してパワーアップしていきたいと思います。

DFハリデー慈英副将(スポ4=埼玉栄)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

本当にもう完敗というか、明治大学の言葉で「やっぱり明治がナンバーワン」という言葉があるんですけれど、今思い出しても本当に血がにじみ出るほど悔しくて、その言葉通り本当にきょうはやられたなという感じでした。一次リーグ二次リーグずっと首位で保ってきて舞台を整えてきたんですけど、結局最後の最後で負けてしまって、それはやっぱり自分らの弱さが出たなという風に思いました。

――東洋大戦での敗戦に続いて連敗となってしまいました

今まで自分たちのやりたいホッケーがずっとできていたんですけど、その2試合は本当に上手く噛み合いませんでした。相手も、こういうプレーをしてくるからこう対策しようという風に指示もあったと思うので、それに僕らが対応できなかったというか、同じホッケーをずっと貫き通して勝てる相手ではないなと思いました。

――第1ピリオドで連続失点されてしまいましたが、要因は何だったと思いますか

それに関しては本当にアンラッキーな部分もあったので、そこまで気にしていませんでした。最初の3失点くらいまでは次の2ピリ3ピリという風に、まだまだ時間があったのでそこは大丈夫かなというのもあったんですけど、やっぱり試合に飲まれたりだとか、アンラッキーな部分で点が入っちゃったのかなと思います。

――ここ4年間で最も良い2位という結果となりました。それについてどのように感じていますか

そうですね、誇って良いことだと思います。これまでは全日本に出れなかったし、ずっと万年4位という感じだったので。ここまで来れたのは新スタッフだとか、チームメイトはもちろんですけど、保護者の方々、ファンの方々、本当に皆のお陰でここまで来れたのかなという風に思います。

――ハリデー選手はベスト6にも選出されました

優勝に比べたらちっぽけな事というか、そんなに意識することでは無いのかなと思います。今シーズンは結構ゴールとかにも、数字的な部分で結果を残せたのかなというのもあったので、個人的な収穫になったのは良かったなと思います。

――最後に全日本選手権に向けて意気込みをお願いします

学生の代表2チームとして全日本に出場するわけですけど、アジアリーグチームに公式戦で試合ができるというのは数少ないチャンスなので、もちろん勝ちを目指して頑張っていきたいと思います。

FW矢島雄吾(スポ4=北海道・駒大苫小牧)

――惜しくも準優勝となりました。今の率直な気持ちをお聞かせください

僕としては、次のインカレに向けてもう切り替えていこうかなという気持ちで、たしかに点数だけ見ると7-1という結果なんですけど、試合内容自体は悪くなかったと思っているので決める時に決められず、相手がチャンスで決めてきたというだけの試合だったと思います。インカレまであと1か月あるので、しっかり準備してやっていきたいと思います。

――立ち上がりの部分を振り返っていかがですか

最初の5分くらいはすごくこちらのペースでやれていて悪くなかったんですけど、少しアンラッキーだったり、勝負の時の運がこちらに味方してくれなかったかなという感じで、全体的にこちらのペースでやれていたので悪くはなかったと思います。

――試合内容は悪くない中で、勝ちきれませんでした

相手が上手かったかなという印象ですね。

――リーグ準優勝という結果は4年間で最高の成績ですが、どう捉えていますか

それは本当に誇りに思っていて、今まではずっとベスト4だったりという順位で終わっていたので、この2位っていう結果を次のインカレへの糧として、学んだことをしっかり生かして頑張りたいと思います。

――リーグ戦の収穫はありますか

「ワセダのアイスホッケー」を確立できて、自分たちが何をしたらいいかというのがはっきりした大会だったと思っています。これからどんどんそれを強化して弱点を補強していきたいです。

――課題はどこでしょうか

今回の試合もそうなんですけど、取れない時は本当に取れないというか、なかなか流れを変えるようなプレーができていないことはわりとあったので、いざという時の得点力を強化できるかなと思います。

――全日本選手権への意気込みをお願いします

インカレ前に自分たちの実力を試す良い機会だと思うので、それに向けてしっかり準備してやっていきたいと思います。